――イコプラ。それはイコンを模したプラモデルであり、操ることで実戦さながらの戦いも行える玩具です。パラミタ直下、海京にある模型店『静岡模型』……通称『シズモ』はイコプラのメッカと呼ばれ、イコプラバトルが盛んに行われています。
ちなみに“なぜ海京なのに静岡なんだ”かというと、イコンの装甲に使われている特殊強化プラスチックの生産プラントが静岡にあり、そこを拠点としている『シズモ』が海京まで支店を出しているからです。
さて、そんな『シズモ』ではイコプラ工場からの直接取引をしているため安くイコプラを買うことができます。その工場は海京方面にあり、イコプラ製造の最大手として有名な工場です。
が……今、この工場で事件が起きてしまったのでした。
『――こちら、イコプラ製造工場・海京工場では現在、何者かの手によって操られているイコプラたちによって工場全区域が占拠されてしまっております! イコプラを操り、工場を占拠した犯人も工場内にいるものと思われますが、その姿は見受けられません! ……あ、突入した制圧部隊がイコプラたちによって攻撃を受けています! 一体一体がかなり改造されているのか、その速度は尋常ではありません! 制圧部隊の攻撃も全く当たらず、工場から追い出されてしまった模様です! さらにイコプラたちは工場を戦火から守るためのシェルターを起動させました! これでは部隊による再突入もできそうにありま――』
……生報道されているテレビを消すと、『シズモ』の店長はお店に来ていた契約者たちへ頭を下げました。
「あの工場は『シズモ』と直接契約を結んでる大事な取引先なんだ。あの工場が占拠されたままだと、イコプラの評判が落ちる上に、その影響でイコプラが市場に流れなくなってしまうし、何より『シズモ』でイコプラが販売できなくなる! 子供たちの、そしてイコプラを愛する者たちのためにもあの工場を取り戻してくれないか!」
懇願する『シズモ』店長。契約者たちはその願いを快諾すると、すぐに工場へ向かおうとします。しかし、店長はそれを止めました。
「待ってくれ、さっき報道でも言っていたが工場は今、シェルターに覆われていてこのままだと侵入もできないはずだ。だが、イコプラを使えばシェルターを解除してイコプラ軍団とも戦えるかもしれない。目には目を、イコプラにはイコプラを、だ!」
グッと熱弁する店長でしたが、イコプラを持っていない契約者はどうすればいいのか? と問われてしまいました。
「なに、その点に関しては問題ないさ。『シズモ』にはまだイコプラがたくさんあるからそれを買って改造してから挑むのもいいし、なんなら“プラヴァー”のイコプラを貸し出すよ。ただ、貸し出し品のは改造できない。機体能力はデフォルトのままだから気を付けてほしい。それでも、次世代機としての力はきちんと持ち合わせてるぞ!」
なるべくなら買ってほしいけどな! と『シズモ』の売り上げもちゃっかり気にする店長。これを機に、新規客を引き込もうと商魂たくましくしているようです。
――ともあれ、イコプラを使った工場奪還作戦が今始まろうとしていたのでした……。