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シナリオガイド

水上の町アイール。レアメタルを取るか、子供たちを守るか、それとも遊ぶか?
シナリオ名:魔術師と子供たち / 担当マスター: 泉 楽

 水上の町アイール
 コントラクターたちの協力によって出来たこの町には、ツギハギ横丁と呼ばれる商店街があります。湖上に作られたそれは、当初整然とした街並みになるはずでしたが、店舗が増え、増築を重ねた結果、住人でさえ地図なしでは歩けない複雑怪奇な商店街と化してしまいました。その地図にすら載っていない店があるというのですから、この横丁の混沌ぶりは推して知るべしです。
 その中でも比較的分かりやすい一角に、食料品店を構えている男がいました。主人の名前はシド。店の名前も、そのまま「シドの店」です。
「はいよ、三日分の食糧と水だ」
 袋に詰めた食料品と引き換えに金を払ったのは、二人の女性でした。
「あんたたちも、ロストテクノロジーとやらが目当てかい?」
「ま、そんなようなもんですね」
 二人の内、主導権を握っているらしい女性――サリーと名乗りました――が笑いながら答えました。彼女と相棒のユーリは、共に鎧を身につけ、剣を帯びています。腕には覚えがあるようですが、
「本当にあるのかねえ。ここいらも人が増えて最近は物騒だ。気を付けるんだぜ」
と、シドは心配してくれました。
 その時、扉が開いて男が入ってきました。薄汚れたローブを身に纏い、伸び切った髪と髭で顔はよく見えません。
「用意してある。裏に回りな」
 シドは顔をしかめながら、顎をしゃくりました。男は懐から金の入った小袋を取り出すと、中身だけカウンターに乗せ、また外へ出て行きます。
「あれは“名無し”って言ってな」
 サリーが男をじっと見つめているのに気付き、シドは言いました。
「本名じゃねえ。だが、誰も名前を知らないし、本人も何も言わねえ。何でも昔の記憶がないらしい。町の外れ、東の方に五人のガキと住んでる。と言っても、自分の子じゃねえ。ガキたちも兄弟じゃねえ。開拓に来たはいいが、親たちはモンスターやイレイザー・スポーンにやられちまった、そのガキたちさ」
 シドは肩を竦めて続けます。
「もちろん、ここにいたんじゃ危険だってんでパラミタに戻そうとしたんだが、親の遺志を継ぐって頑なでな。“名無し”は一月ほど前、ガキどもがどこかで拾ってきたらしい。で、以来、住みついているんだが――なんせ汚いもんでな、あまり店には入ってほしくないのさ」
 どうやらシドが饒舌なのは、“名無し”を追い出したことに対する、言い訳だったようです。
 ユーリはそんな話には興味がなく、袋からリンゴを一つ失敬すると、表へ出て階段に座りました。そこで、三人の男が“名無し”の背後から殴り掛かるのを目撃しました。
 するとその時、突如“名無し”の周囲に光の文字列が現れ、男たちの拳や剣を悉く跳ね返してしまったのです。
「……今の、何?」
 齧ったリンゴをぽろりと落とし、ユーリは両目を瞬かせました。“名無し”は一切のダメージを負うことなく、襲った男たちを振り返りもせず、食料品を抱えて帰っていきます。
「ありゃ、ハーパーんとこの若い衆だ」
 窓からその様子を眺めていたシドが、サリーに教えてくれました。
アダム・ハーパー。この周辺で牧場を始めたんだが、場所を広げようってんで“名無し”たちの土地を狙ってる。他にもあるだろうに、どういうわけだかな。よほど美味い草が生えるのかね。だが、ま、見ての通り、あいつは不思議な力で守られているし、ガキたちは町には来ないからな」
「ありがとうさん」
 サリーはシドに金を渡しました。
「おい、金ならもう貰ったぜ?」
「面白い話を聞かせてくれた礼ですよ」
 サリーが笑顔を見せると、シドも「こりゃどうも」と笑い返しました。


「何やってやがんだ、てめえら!!」
 アダム・ハーパーは花瓶を掴むと、床に叩きつけました。
「相手はガキが五人と、何もしねえ男が一人だろう!?」
「しかし、あいつ、不思議な魔法を使うようで……」
「だったら、こっちも魔法使いを雇えよ!!」
「それは賛成ですね」
 不意の声に、ハーパーはぎょっとしてその主を探しました。若い衆の襟首を掴んで引き摺ってくるユーリと、サリーが部屋の入り口に立っていました。
「こんな弱い連中じゃ、あの男には勝てないでしょう」
「……姉さん方がやるってのかい?」
「まさか。あたしらも魔法は使えませんしね。契約者――コントラクターを雇いましょう。大義名分はあります。その家の地下に、ニルヴァーナ文明のロストテクノロジーが眠っている――そうでしょう?」
 ハーパーたちは息を飲みました。
「安心なさいな。あたしたちはあの“名無し”の力に興味があるんです。あんた方はロストテクノロジーを、あたしたちはあの不思議な男の力を。コントラクターには、手間賃として金を払う必要はあるし、全てを自由にするのは難しいでしょうが、それでも膨大な利権を握れるはずですよ」
 ハーパーは逡巡し、そうだと答えました。
「あそこの地下には、超上質の機晶石やレアメタルの鉱脈があるらしい。わしはどうしても手に入れたい。牧場なんざやるより、よっぽど儲かるからな」
「商談成立ですね」
 サリーは、シドに見せたのとは全く違う笑顔を浮かべ、ハーパーの手を握りました。


 その日の午後、アイールの町にはハーパーの出した依頼の噂が駆け巡り、それを聞きつけた者たちが続々と集まってきたのでした。

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

ちょっとお久しぶりです。泉 楽です。
今回のシナリオは、ニルヴァーナのアイールの話です。といっても、主な舞台は町の外れの一軒家と牧場になります。NPCが町に来ることもありますから、皆さんのアクション次第ではアイールの施設も登場するかと思います。

話を簡単にまとめますと、“名無し”という男と五人の子供たちが住む家の地下に、超上質の機晶石やレアメタルの鉱脈があるらしく、アダム・ハーパーという男が牧童や若い衆を使ってその土地を手に入れようとしているのです。
“名無し”には物理攻撃が効かないため、ハーパーたちは苦労しているようです。そこで、コントラクターを雇うことになりました。
PCの皆さんは、1.「何らかの手段(あくどい方法でも結構です)で子供たちと“名無し”から土地を譲り受ける」か、2.「彼らを守る」かを選んで下さい。
1.の場合、利権はハーパーが握るものの、アイールの町にも金が入り、開拓も一歩進みます。
2.の場合、機晶石もレアメタルも掘り出されず、現状のままということになります。

この件には関わらず、アイールの町を楽しみたいというアクションも行えます。

新しい土地の物語です。皆さまのご参加をお待ちしています。


NPC情報

○“名無し”たちの家
▼名無し
四十前後の白髪混じりの男。髪と髭で顔は分かりません。物理攻撃は一切効きませんが、それ以外の魔法が使えるかは不明。本人は記憶喪失ということで、過去についての情報が全くありません。やや無口ですが、質問をすれば返事もしてくれ、会話も出来ます。立場としては、子供たちの意思を尊重しています。

▼ジョーイ
十四歳。子供たちの最年長。“名無し”が来るまでは、彼が子供たちの面倒を見ていました。少し銃が使えますが、自分の身を守るのが精一杯です。“名無し”に限らず、大人全般を信じていません。両親の遺志を継いで、畑と牧場を作ることが目標。

▼ステラ
十三歳。子供たちの母親役。争い事は好まず、“名無し”のことも、信頼している様子です。エディの姉です。

▼エディ
十歳。ステラの弟。腕白で、いつも木の棒を剣の代わりに持ち歩いています。ステラとエディの両親は冒険家だったため、エディもしょっちゅう町の外へ出かけようとしています。“名無し”を見つけたのもエディで、“名無し”の親分の気持ちでいます。

▼キーチ&ミホ
五歳。双子ではありませんが、年が同じでいつも一緒に行動しています。おっとりした男の子がキーチ。ややお転婆なのがミホです。二人ともエディを「隊長」と呼び、子分役を楽しんでいます。

○ハーパー一家
▼アダム・ハーパー
アイールの周辺で牧場を経営しています。“名無し”たちの家の地下に機晶石やレアメタルの鉱脈が眠っている情報を手に入れたらしく、何とか手に入れようとしているようですが……。

▼サリー&ユーリ
二十歳前後の女性二人組です。ロストテクノロジーを探しに来たようですが、“名無し”の力に興味を覚え、ハーパーに力を貸すことに。戦闘の場合、基本、ユーリのみが参加します。

○その他
▼シド
食料品と雑貨を売る店を経営している男性です。一先ずは信用できるでしょうが、“名無し”の汚さには閉口しているようです。

▼サンプルアクション

・ハーパーの味方をして、子供たちを土地から引き離す

・子供たちに味方する

・アイールの町で遊ぶ

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2012年12月13日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年12月14日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年12月18日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年01月10日


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