薔薇の学舎

　空京のとある美術館に、たくさんの人が集まっていました。
　ここでは、地球の名画を一堂に会した展覧会が開かれていたのです。
　ゴシック芸術、ルネサンス芸術、印象主義、象徴主義、シュルレアリスム……。日本の浮世絵までありました。

「う〜ん。凄いような気はするけど、なにが凄いのかよくわかんないなぁ」
　教導団から派遣されてきた金元ななな（かねもと・ななな）が、飾ってある絵を見ながらつぶやきます。
　あいにく、なななに芸術は理解できないようです。
　そんな彼女がここにいるわけは、この展覧会に、贋作が混ざっていると聞きつけたからでした。


「……この絵。なにか変」
　客としてやってきたアゾート・ワルプルギス（あぞーと・わるぷるぎす）が、ある絵の前で立ち止まります。
　それは、以下の四点でした。

　ボッティチェリ作『ヴィーナスの誕生』→ヴィーナスがすごい厚着
　ゴッホ作『ひまわり』→枯れている
　ムンクの『叫び』→男が手をメガホンのようにして叫んでいる
　ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』→そもそもモナ・リザがいない

　アゾートは、美術館の館長を呼ぶと、四枚の絵を取り外してもらいました。詳しく調べるつもりなのです。
――しかし。
「わっ」
　アゾートの身体は、みるみるうちに『モナ・リザ』の絵の中に閉じ込められていきます。
　そしてついには、彼女自身がモナ・リザになってしまいました。


「これはヤバいことになったよ！」
　慌てたなななが、あちこちへ連絡しました。
「アゾートちゃんが、偽物の絵に閉じ込められちゃった。助けだすには、絵の中に入って、本物を再現しなくちゃいけないみたい！」
　教導団のデータを見ながら、彼女は説明します。

　どうやら、アゾートを閉じ込めたのは、名画をコピーする女王器の仕業のようです。
　その女王器がコピーした絵には、魔力が宿り、観るものを取り込んでしまう――。
「危険だから封印されていたのに……。　封印を解いたのは、いったい誰？」
　なななは、美術館のなかをぐるりと見回しました。


　金の額縁に囲まれて。アゾートは無愛想な表情を浮かべています。
　彼女は無事、もとの世界に戻れるのでしょうか。
　そして、女王器の封印を解いたという犯人は、果たして誰なのでしょう――。

　水琴桜花です。
　新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします！

　さて。今回の舞台は、名画のなかの世界です。なななから連絡を受けた皆さんの力で、閉じ込められたアゾートを救い出してください。
　そのためには、四枚の贋作をすべて、本物のとおりに再現する必要があります。


■贋作の世界について

　絵の中からは、外部との連絡ができません。また、それぞれの絵画世界は独立しています。
　基本的に、ＭＣさんとＬＣさんは同じ絵でアクションをかけてください。
　もちろん同じ絵のなかであれば、グループアクションをかけることは可能です。


■それぞれの絵について

・『ヴィーナスの誕生』
　ヴィーナスは極度の恥ずかしがり屋です。うまく説得して服を脱がせてください。むりやり脱がすこともできますが、その場合は激しく抵抗します。

・『ひまわり』
　花畑からひまわりを摘んでください。ただし畑には、猛毒をもったハチ、幻覚性の鱗粉をふりまくチョウ、刺されると死ぬほど痒くなるアブ、といった虫たちが飛んでいます。
　また、ひまわりに紛れて凶悪な食人花もひそんでいます。

・『叫び』
　男が大声で叫んできます。なんとか相手に近づき、思わず耳を塞ぎたくなる言葉をかけたり、恐ろしい話をしてください。
　とはいえ、『叫び男』のメンタルはもろいです。あまり酷いことをいうと発狂するため、やりすぎは禁物です。

・『モナ・リザ』
　ご存知のとおり、アゾートはほとんど笑いません。それでも、なにかしら笑いのツボがあるはずです。いろんなバリエーションで責めるとよいでしょう。
　また、愛想笑い、作り笑いは無効。くすぐるなどの物理的な笑わせ方もNGです。

※ちなみにゴッホには、『四輪の枯れたひまわり』という作品がありますが、今回登場するのは花瓶に活けられたやつの方です。


■金元ななな、犯人について

　なななは、絵に関心がないため閉じ込められずに済みました。そんな彼女のもとには、教導団から女王器についての新しいデータが届いています。
　なななに協力して、犯人を捕まえることができれば、今回のミッションはオールクリアとなります。
　犯人の手がかりは今のところありませんが、案外近くにいるかもしれません。

・※ヴィーナスの服を脱がす

・※ひまわりを探す

・※『叫び男』の耳を塞ぐ

・※モナ・リザ（アゾート）を笑わせる

・※なななと一緒に、犯人を探す