パラミタはすっかり春の雰囲気を迎えており、黄金週間も相まって、行楽シーズンにはうってつけの時期となりました。
様々な場所ではこの行楽シーズンに向けてお客さんを募ろうと、必死の営業活動が展開されています。
……しかしそんな中、いくら営業活動を続けようともお客さんに全く見向きされない村がありました。
その村は言うなればまさに“田舎”と言うのにふさわしい場所で、近くにはハイキングにピッタリな大きな野山である“アムギギロソルバッヂャグ山”があります。ちなみにこの山の名前は、村の人から一度も正式名称で呼ばれたことはないとか。ハイキングの名所とも知られ、行楽シーズンには村の宿泊予約が多く入るほどの盛況ぶりを誇っていました。
そんなアムギギロソルバッヂャグ山なのですが、ここ最近では人の背よりも体長の大きい亜人種の魔物……ビッグトロールが集落を作り、完全な根城となってしまっていました。
このままでは野山のハイキングを推奨することもできず、いつ村が襲われるかもわかりません。完全に危険隣りとなってしまったこの村に、客足はぱったりと途絶えてしまっていたのでした。
――しかし、村長は考えます。村の現状をこのままにしておいていいのかと。この村は滅ぶほかないのだろうかと。その答えは……否、の一言。
何とか以前の村の風光明媚な景色を取り戻すべく、村長はアムギギロソルバッヂャグ山に巣食うビッグトロールをどうにかしようと対策を打ち立てます。
……とはいえ、一般人が立ち向かおうものならあっという間にビッグトロールの餌になってしまうでしょう。なにより、村の人たちはビッグトロールが襲ってくるのではないかという恐怖に駆られ、戦う意欲を無くしてしまってもいます。
もはや頼りになるのは契約者たちを有する、各学園の有志たちのみ……。村長は急ぎ各学園へ、“ビッグトロールたちの討伐”“および、ビッグトロールの集落の壊滅”“アモギロスソルバッチャン山の手入れ”などの緊急要請を打診しました。
全ては村を救うため……そして、かつての村の姿を取り戻すため。村長はただただ、その願いが成就することを祈るばかりでした……。