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シナリオガイド

陰謀を止めろ。あるいは、パートナーと共にパラミタの『声』となるか?
シナリオ名:Moving Target / 担当マスター: 桂木京介

「何の真似だ」
 部屋に入るなり、カーネリアン・パークス(かーねりあん・ぱーくす)が口にした言葉です。
「たとえ学院理事であろうと、生徒にこのようなふるまいをなす権利はないと思うが」
 ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)はすぐには答えず、軽く手を振りました。
 すると、カーネリアンを囲んでいた四人の百合園学院生が、一礼して部屋から出ていきました。
「『生徒』ならね」
 ラズィーヤの口調には、からかうような色彩があります。とらえたばかりの得物で遊ぶ黒猫のような。
 ここは百合園女学院。そこにしつらえられたラズィーヤの私室です。実質的な百合園女学院のトップたる彼女は、しばしばこの部屋で執務をとっているといいます。部屋の中央にはガラスのテーブルとソファ、ラズィーヤらしい色調に満ちた、瀟洒ながら機能的な部屋でした。
「確認させていただきますわね。カーネリアン・パークスさん」
 無言のカーネリアンにかまわず、ラズィーヤは唱うような口調で告げました。資料らしき紙束を持っています。
「昨年度に転入。ポーランド生まれで新興企業経営者のご令嬢、とのことですけれども……」
 ラズィーヤは革張りのソファに腰を下ろしました。カーネリアンにも「どうぞ」と席を示す仕草をして、
「こんな穴だらけの経歴でわたくしが、騙されるとでも思って?」
 ばさりと資料を、ソファの前のテーブルに投げ出したのでした。
 カーネリアンは肯定するでも否定するでもなく、冷めた目でラズィーヤを見ていました。鋭利な刃物のごとき視線です。
「本当の名前を名乗ってくださいな」
 鉄の重みの沈黙というのでしょうか、カーネリアンは唇を閉ざしたままです。
 けれどもラズィーヤはいささかも動じません。笑さえ浮かべて言いました。
「自分から名乗る勇気がないのでしたら、私が代わり言って差し上げましょう……クランジΚ(カッパ)さん
 突然、音もなくカーネリアンはテーブルを飛び越えると、ラズィーヤの胸ぐらをぐいとつかんで持ちあげました。
「生徒を先に帰したのは失敗だったな」
「乱暴ですこと」
「武器がなくても、一秒もあれば貴様の息の根くらい止められる」
 ところが、自分の鼻先数センチにあるカーネリアンの瞳……ルビー色の瞳孔の奥にある猫のような細い虹彩を見つめながら、ラズィーヤはくすくすと笑いだしたのでした。
「あら、可愛い脅迫ですこと。けれど本気が感じられませんわね。だって、人を殺す前にペラペラしゃべる暗殺者なんていませんもの」
 いらだたしげにカーネリアンは、ラズィーヤから手を放しました。
「用件を言え」
 ラズィーヤが自分の正体を知っていて、それでも学院に置いていること……そこからカーネが出した結論でした。
 つまりラズィーヤは、彼女に何かさせようとしているのです。
「理解が早くて大変結構なことですわ。おりこうな娘は好きですわよ」
 もう一度ラズィーヤはカーネリアンに席を勧めましたが、やはり彼女は腰を下ろしませんでした。

「ジャネット・ソノダという方をご存じかしら?」
「近年地球で何かと名の挙がる社会学者。年齢は五十代で、家族論や女性論で知られている」
「ええ、よくご存じで」
 ラズィーヤは満足そうにうなずきました。
 ジャネット・ソノダは苗字を『曽野田』とも書きます。しかし彼女自身は日系ではありません。前夫の苗字をそのまま名乗っているそうです。テレビ映えする華やかな容姿ということもあってか、メディアへの露出は多く、著作や社会的な発言も多数で、世間に対する影響力は決して小さくありません。
「そのソノダ女史が、近日中にパラミタを訪問されますの」
 ソノダは『パラミタは女性に対し抑圧的な国家である』と信じており、何度か批判的な声明を出していました。
「『契約者(コントラクター)とパートナー』という形態は一人の男性契約者が複数の女性パートナーを従えるケースが多く、女性パートナーの人権を不当におとしめている」
「言い換えれば、男性契約者による複数女性パートナーへの支配である」
「重婚まで認められている」
 ……といった主旨の発言があるそうです。
「わたくしは、決して女史の批判には賛成できません。といっても彼女のパラミタ訪問は歓迎するつもりです。話し合い、現状を知ってもらうことで彼女の誤解を解くことができると信じていますわ」
 今回の来訪に伴い、空京屈指の高級ホテル『空京ロイヤルホテル』にてパラミタ代表とソノダの会合が持たれることになっています。会合にはラズィーヤの他に、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)金 鋭峰(じん・るいふぉん)の参加も予定されていますが、メインとなるのは、実際に契約者とともにあるパートナーたちの発言となることでしょう。現在、所属を問わず会合に出席する人たちが募集されております。
「ですが……不穏な噂があるのです」
 ラズィーヤは言いました。
 ソノダの暗殺を目論む動きがあるのだと。
「元塵殺寺院ですもの、カーネリアンさんも当然、ブラッディ・ディバインについてはご存じですね? 彼らは壊滅しましたがその残党は生き延び、再興の資金集めと称して裏稼業に手を染めています。裏稼業というのは」
 一拍おいて、ラズィーヤは言ったのでした。
「……たとえば、要人の暗殺とか」
 ブラッディ・ディバイン残党の狙いは、会合を破綻させることにあると思われるとラズィーヤは言います。
「パラミタに関する誤解がとければ何かと困る勢力がいるでしょうからね……そうした一派の依頼で動いているとするなら、彼らはソノダ女史の暗殺に失敗すれば、何が何でも会合を潰そうと総攻撃をかけてくる可能性もありますわ。リュシュトマ少佐と共に会場を護ってくれる人手も必要となりそうですわね」
 御神楽環菜、金鋭鋒といったパラミタ側の重要人物も出席するのです。ゆめ、間違いがあってはならないでしょう。
「この目論みの阻止のため、動いて下さいますわね」
「自分は、貴様らのゲームの駒ではない」
 いてつく真冬の風のようなカーネリアンの口調です。しかれどラズィーヤは春の木漏れ日のように、やわらかな姿勢を崩しませんでした。
「「わかっています。ですからわたくしは『生徒』の一人に『お願い』しているのですよ……。いえ、『生徒』ではなく『これから生徒になるかもしれない方』というべきですかしら?」
 カーネリアンはしばし無言でラズィーヤを睨んでいましたが、やがて口を開きました。
「必要なものがある。ホテルおよび周辺施設のあらゆる場所に立ち入りできる許可だ」
「当日、空京ロイヤルホテルの警備はユージーン・リュシュトマ少佐率いる国軍が担当してくださいますの。彼にお願いしておきましょう」
 立ち上がろうとするカーネリアンに、それと……、とラズィーヤは声をかけました。
「これも未確認情報ですけれど、暗殺者は凄腕のスナイパーだと言うお話ですわよ。女の子でね、『Ι(イオタ)』というコードネームがあるとか」
 このときはじめて、カーネリアンの表情に動揺らしいものが浮かびました。といってもそれはほんの一瞬のことで、現れると同時にその動きは、嘘のように消えてしまったのです。
「それでは期待しておりますわよ。当日までに同行の者を紹介しますわね」
「協力者は不要だ」
「いいえ」
 できの悪い生徒をたしなめるときのように、ラズィーヤ・ヴァイシャリーは優しく言ったのでした。
「あなたが裏切ったとき、背後から撃つための者ですわ」

 *****************

 空京ロイヤルホテルのフロントカウンターに、その人が訪れたのは午後のことです。
「ご予約のイーシャ・ワレノフ様ですね。お待ち申し上げておりました」
 一流ホテルだけに従業員のマナーも最上級です。フロント係の浜皆子(はま・みなこ)はまだ新人ではありましたが、これくらいのことで動じたりはしません。
 けれど、やはり内心は驚いていたりします。
 このお客様がチェロ奏者だとは聞いていました。数日後に行われる演奏会のために空京を訪れていることも。
 それでも、こちらのお客様が、何台ものチェロケースを持参しているとは思ってもみませんでした。チェロは大きな楽器です。なので当然、運搬用のケースも大きい。それがずらずらと付き人の手によって運ばれてくるのです。壮観です。弘法筆を選ばずというのは俗説で、一流の奏者は楽器を選ぶもの。おそらくは演奏時のコンディションに、最も適したものを選ぶつもりなのでしょう。
 それにしても――皆子は思いました。
 この人は、男性なのか女性なのか――と。
 中性的で整った容貌、長いプラチナの髪を背でくくり、縁なしの眼鏡をかけています。ハスキーな声からも性別の区別はつけづらい。
 付き人に運搬を命じると、チェリストは自室へのエレベータに向かいました。
 つい、その背を目で追っていた皆子ですが、
「すいません。窓ガラスの交換はこちらで?」
 と訪れた作業服の男性に注意を奪われ、すぐにイーシャのことを忘れてしまったのでした。
「いいえ? 頼んだ覚えはありませんが……」

 *****************

 あなたはパラミタを代表して、パートナーと共にソノダ女史との会合へ臨みますか?
 あるいは、会合を成功させるため会場を護りますか?
 姿を見せぬ暗殺者と戦いますか?
 それとも……?
 いずれにせよ、ひとつ、言えることは、あなたの行動が、パラミタのこれからを大きな影響を与えることもありえるということです。

担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 マスターの桂木京介です。よろしくお願いします。

【シナリオ概要】
 要人暗殺の阻止、および社会的影響の大きい会合の成功を目指すシナリオです。

●会合に出席することを選ぶなら……
 一組ずつ交替で、多数の出席者が集まる中スピーチを行うことになりそうです。
 心を動かすような説得の言葉を考えてみて下さい。
 必ずしも『男性が契約者。パートナーが女性』という組み合わせで出席する必要はありません。むしろ、ソノダが想定しているであろうものとは異なるパターンを示すのも効果的かもしれません。

●カーネリアン・パークスと行動する場合
 カーネリアンは元々、塵殺寺院の開発した『クランジ』と呼ばれる機晶姫の一体で暗殺の任務を請け負っていました。
 往時は『クランジΚ(カッパ)』というコードネームで、他人の姿に変身できる能力があったのですが、現在その能力は失われています。
 改心して味方になったと思われていますが、決して油断できない存在なので、彼女が裏切り行為に及ばないか監視して下さい。場合によっては破壊も許可されています。
 今回、ラズィーヤの命を受けて彼女と行動できるのは百合園女学院の所属キャラクターに限られます

●空京ロイヤルホテルについて
 空京、いや、パラミタ屈指の巨大高級ホテルです。
 そのため常に多数の客が往来しており、毎日のように何らかのイベントが行われています。VIPの来客も少なくなく、今回、演奏会のためにチェリストも訪れているようです。
 周辺にある建物も高層ビルディングばかりのようです。

 複数の行動をまたぐとダブルアクションになってしまう可能性が高いのでお気をつけ下さい。
 たとえばMCと一人のLCが会合に出席し、残るLCが会場警護をする……といった行動はかなりの確率でダブルアクションとして判定されることでしょう。


【NPCについて】
 公式NPCはラズィーヤ・ヴァイシャリー、金鋭鋒、御神楽環菜が登場します。環菜とラズィーヤはベストな二人かと思われますが、鋭鋒はちょっと居心地が悪そうです。
 桂木担当NPCは、シナリオガイドにも描かれているカーネリアン・パークスの他、登録NPCではありませんがリュシュトマ少佐という初老の精悍な軍人が登場し会場警備にあたります。また、会場警備の任務を帯びてユマ・ユウヅキも参加します。
 『イオタ』と呼ばれる暗殺者は、おそらくクランジΙ(イオタ)のことと思われます。詳しいことを過去シナリオ等で調べる必要はありません。スナイパーの少女だという程度だけ知っておけば十分です。
 クランジΠ(パイ)ことパティ、Ρ(ロー)ことローラ、小山内南とカエルのカースケは今回お休みです。

 ※NPCとアクションを絡めたい場合、どのNPCと接触を持つか、そして、該当NPCとのこれまでの関係(初対面なのか友人同士なのか等)を書いておいてくださると大変助かります。

 以上、皆様のご参加を楽しみにお待ち申し上げております。

 それでは、次はリアクションでお目にかかりましょう。
 桂木京介でした。

▼サンプルアクション

・ソノダ女史との会合に出席する。

・空京ホテルの警備を行う。

・カーネリアン・パークスと行動を共にする。(百合園女学院所属キャラクター限定)

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2013年06月22日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年06月23日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年06月27日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年07月16日


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