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みんなで楽しく?果実狩り! 2023

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シナリオガイド

秋の味覚を、みんなで堪能しよう! ……この果実はなんですか!?
シナリオ名:みんなで楽しく?果実狩り! 2023 / 担当マスター: 菊池五郎

「すぅ……すぅ……」
「はーなーしーてー! ぬーぐーのっ! ぬーぐーのー!!」
「……ぅ……ぐすっ…………ぐすっ……」
 良く熟れたピンク色の果物が生る木々の木漏れ日の下、地獄の様相を見せる周りを見渡して、アレクサンダル四世・ミロシェヴィッチ(あれくさんだるちぇとゔるてぃ・みろしぇゔぃっち)は呟きました。
「どうしてこうなった……」

* * *

 休日。秋色に色づいた山道を、一台の車が登っていきます。
「ええっとねえ、タルトは外せないよね。それからシャーベットとかも絶対おいしい!」
「皆で作るならジュースやジャムもいいですよねー」
 車の後部座席、飛鳥 豊美(あすかの・とよみ)ジゼル・パルテノペー(じぜる・ぱるてのぺー)はレシピブックを捲って楽しそうに言葉を交わします。
 助手席に座る破名・クロフォードの運営する孤児院の子供達に秋の果物で作ったお菓子を振る舞うため、一行は果実狩りにやってきていました。イルミンスールの生徒が地域ボランティア活動の一環で手伝っているその巨大農園では、今が時期である梨や葡萄、イチジク、早いもので林檎といった果実が実っているそうなのです。
「焼き菓子系全般ならどれでも喜ぶだろうな。
 滅多に食べられないケーキだったら、発狂しかねない」
「ふふ、私もケーキは大好きですー。
 アレクさんは? どんなお菓子がお好きですか? あ、でも……甘いのは苦手なんでしたっけ」
「お砂糖でもパンなら食べられるよね。ブドウと一緒に、お兄ちゃんの好きなくるみも入れて焼いたらどうかしら?」
 ジゼルの提案に適当な相槌をうちつつ車の扉を閉めたアレクがこちらへ来るのを待って、彼女たちは農園へと足を踏み入れるのでした――。



「こんにちは、豊美さん」
「ミリアさん、こんにちはですー。あっ、この前よりまた大きくなりましたねー」
 新たな命に膨らんだお腹を大事そうに抱えながら出迎えてくれたイルミンスールのカフェテリア『宿り樹に果実』の看板娘、ミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)に挨拶をして、豊美ちゃんは背後の面々を彼女に紹介します。
「初めまして、ミリア・フォレストです。今日は楽しんでいってくださいね」
 その笑顔の挨拶にジゼルもまた笑顔で応え、アレクは「Hi」と一言で済ませ、破名はここから見える部分だけでも立派な農園にどこか期待を寄せた表情で頭を軽く下げます。
「はじめまして。今日は世話になる。本当なら子供達も連れて来たかったのだが何分人数が多くて――」
 そんな風に一通り挨拶が済んだ所で、農園の管理者であるジーベル夫妻がやって来ました。
「――そうそう、豊美さんはイルミンスールにもよく顔を出しているのでしたね。だったらあの子の事をご存知かしら?」
「そうですけど、誰でしょう?」
「ちょっと可愛い感じの男の子で、名前は……ごめんなさい、忘れてしまったのだけれど、とってもよく働いてくれる子なの。
 でもね、あの子が育てたブドウの樹がちょっと、不思議なのよね。ちゃんと果実は実るし、味は悪くないんだけど……」
 『とあるイルミンスールの男子生徒』の話。それを耳にして、豊美ちゃんとアレクはちら、と目を合わせます。
(...I have a bad feeling about this.(厭な予感がする)
(……ま、まだそうと決まったわけじゃありませんし)
 テレパシーの如く脳内の独り言で意思疎通を交わす二人を、後ろからクロフォードとジゼルがハテナと小首を傾げて見つめます。
「豊美さん、良かったら様子を見て、力になれそうなら手伝ってあげてください」
 場所はここから真っ直ぐ歩いて行った先です」
「分かりましたー」
 ジーベル夫妻とミリアに見送られ、一行は該当する場所へと向かいます。秋色に紅葉した木々を抜けた先、広がっていたのは咲き誇る毒々しい花々、そしてその下に熟れる見た事も無いピンク色の……ブドウというには語弊のある果実達でした。
「うわー……ちょ、ちょっと不思議、じゃ済まないと思うんですけどー……」
 流石に困った笑顔を浮かべる豊美ちゃん、目を真ん丸にして仕切りにしぱたかせているクロフォード、自分より知識の多い人間に助けを求めるべくアレクを見上げるジゼルの前に、とある少年が駆け寄ってきました。

「いらっしゃーい! ブドウ狩りにきたのかい? 一日500――」
「これの何処がブドウだ」

 麦わら帽子につなぎ姿で満面の笑顔を浮かべるアッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)の尻を、アレクが蹴り上げました。



 ――同窓生と同じく、収穫後ザンスカールの施設へ配る果実の世話をするボランティア活動をしていたアッシュ。しかしどういう訳か彼が世話をしたブドウの樹は全て、謎の果実を実らせてしまったのです。
 本人に悪気は無くても事件が起こし、周囲を巻き込んでしまう。『灰を撒く者』の異名は、ここでも遺憾なく発揮されているようでした。
「『イルミンスールの子』、という時点で嫌な予感はしていたが……」
 憂鬱な吐息を混じらせるアレクの声に、アッシュは口を開きます。
「何でこうなっちゃったのか俺様も判ら無いけど――、折角作ったものを無駄にしたくないんだよ。それに夫人には世話になったしミリアんの所にも美味い果実を届けたいんだ。
 頼む! 収穫を手伝ってくれないか。見た目はアレだけど……、味は保証するぜ!」
 サムズアップを片手で包んで下に下げると、アレクは無表情のまま応えます。
「Es tut mir Leid.Ich kann nicht.(ご免無理)」
 懇願するアッシュにアレクは付き合いきれないと背を向けますが、困惑して固まるクロフォードの隣で、豊美ちゃんとジゼルは足を止めたまま、「帰っちゃうの?」と言いたげな眼差しを送ってくるのです。
「アレクさん、私たちで収穫を手伝ってあげませんか?」
「……気持ちは分かるよ豊美ちゃん、だがこんな毒々しい果物……それこそどんな毒があるか――」
「Bitte Aleck.Er ist ein armer Mensch!
(お願いアレク、彼が可哀想!)
 Mach dir keine Sorgen Ash! Ich hole Hilfe!
(心配しないでアッシュ! 私が手伝ってあげる!)」
「Oh...Danke Giselle!(ああ……、有り難うジゼル!)」
 先回りをしてアッシュへ約束を取り付けてしまうジゼルに続いて、豊美ちゃんが煌めく瞳でアレクを見上げます。
「アレクさん、おねがいします!」
 言葉を詰まらせたアレクの目に最後に飛び込んだのは、お菓子を作るという子供達との約束を反故にしてしまうのではと狼狽するクロフォードの捨てられた子犬のような視線でした。
「…………分かった、俺の負けだ」
 ついにアレクが白旗を振ったのを見て、豊美ちゃんとジゼルがいぇい、とハイファイブで喜び合い、クロフォードは息を吐き出します。こうして、アッシュの作った謎の果実狩りをする事になった豊美ちゃんたちでしたが――。

 暫くして、様子を見守っていたアレクは農園で収穫を楽しんでいる人々の頬が仄かな桃色に染まっている事に気付きました。
(Something’s funny...(妙だな……)
 動き出そうとしたアレクの膝に、ぱたりと暖かい何かが落ちてきます。隣で大人しく林檎の皮むきをしていたクロフォードが果汁でも零したのだろうか、そう思ってクロフォードを見たアレクは息を呑みます。
「っ!?」
 クロフォードが、泣いています。声も上げずに下を向いたまま唯々ぱたぱたと涙を零す彼の様子にアレクはクロフォードの手から果物ナイフをひったくるように取り上げると、何かを言いかけました。
 するとその時――、
「あれくさーん」
 とろん、と瞼を落としている豊美ちゃんがこちらへ近付いてきます。
「こんなところまでついてきてくれて、あれくさんはやさしいですねー」
 唐突な、何時も以上に妙にストレートな物言いに、アレクは首を傾げます。
「えへへ、なんだか……ねむくなってきちゃいました」
「うん? じゃあ寝る?」
 冗談めかしてポンポンと叩いた膝に、豊美ちゃんは「はいー」と頷いて頭を預けてしまいました。突然の役得にアレクが感嘆の声を上げていると、ふとその顔に影が掛かります。
 そこには不機嫌に頬を膨らませたジゼルが立っていました。
「おにいちゃん! またくろふぉーどにイジワルしたんでしょ!?
 もうっ、くろふぉーどはじぜるのオトモダチなのに! もっとくろふぉーどにヤサシくしてあげないとダメって、じぜるおもいます!」
「否これは――」
「とよみちゃんにばっかりやさしくして、そおいぅのはヒイキってゆーんだよ。とよみちゃんはやさしいし、かわいいけど……じぜるじゃダメダメでいいとこないかもしんないけど……」
「お前何の話ししてん――」
「あ! でもじぜるのほうがホメテもらえるところイッコだけみつけた! えっとねえー」
 困惑するアレクの反応を全く聞かずに、ジゼルはニコニコ笑いながら前のボタンを幾つか寛げモゾモゾと動き出しました。
「とよみちゃんよりむねがおおき――」
「ッ!!」
 危機一髪。カジュアルなフード付きワンピースが足下に落ちる直前、抱きつくようにホールドして抑えましたが、信じられない事をしでかしたジゼルはアレクの腕の中で既に露になっている素肌の面積を更に広げるかの様に暴れながら、それでいて顔はさめざめとした表情で抗議します。
「なんでぬいじゃだめなの!? おにいちゃんはじぜるのカラダきらいになっちゃったの!? いつもはえっ――」
「Ash Glock!!」
 棘のある音に呼びつけられてやってきたアッシュは、睨み上げてくるアレクから目を反らし、頭を掻きながら微妙な表情で言いました。
「あー、この果実さ、収穫して数時間はヘンな効果があるみたいで、匂いを嗅いだり食べると酔っぱらったみたいになっちゃうんだよね。
 時間が経てば元に戻るし、後にも残らないってんで、案外好評なんだぜ」
「そういう事は――ッ!!」
 声を荒げたくとも、アレクの隣には泣いているクロフォードが、膝には豊美ちゃん、腕の中にジゼルが居るのです。何の抵抗も出来ないアレクを、アッシュはムフフと笑って見下ろします。
「んじゃ、楽しんでってくれーい」
 意味深な台詞を吐いて立ち去ったアッシュの背中へマグナム弾をぶち込む勢いで睨みつけ、今更どうにもならない事に諦めの深い溜息を吐くと、アレクは最早長閑とは言えなくなった農園の風景を見て呟きました。
「どうしてこうなった……」

 楽しい筈の休日、果実狩りを一変させ得るアッシュブドウの存在。
 これから彼等は一体、どうなってしまうのでしょうか――。

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

 果物が美味しい季節がやって来ましたね。

 というわけで今回豊美ちゃんとアレクの一行は、豊美ちゃんの誘いで沢山の種類の果実が実る農園へ果実狩りに来ました。
 しかしそこに現れたのは、一行にとって何かと縁深い『灰を撒く者』アッシュ・グロック。彼の育てた果実【アッシュブドウ】は豊美ちゃんやジゼル、クロフォードを酔いに似た状態にしてしまいました。
 それぞれ泣きたがり、甘えたがり、脱ぎたがりに変貌してしまった三人、一人難を逃れたアレクはどうなってしまうのでしょう。

※本シナリオは、『みんなで楽しく? 果実狩り!』及び『再び、みんなで楽しく? 果実狩り!』に登場したジーベル夫妻の管理する農園内の一日を描くものです。
 その日、PCの皆さんはこの農園に遊びにやってきていました。果物狩りをしたり、紅葉を見ながらピクニックをしたり……。
 アッシュぶどうの一角ではおかしな事が起こっていますが、それはそれ。
 どうぞ皆さん、秋の果物農園で楽しい休日をお過ごし下さい。


*ご注意*
 シナリオ内の酩酊描写は、アルコールの効果によって引き起こされた物では有りません。
(出身国で成人済みのキャラクターを含む)20歳未満のキャラクターは飲酒描写が出来ませんので、予めご了承下さい。
 また、外見年齢が幼く実年齢が20歳を超えるキャラクターが飲酒した場合、リアクションに20歳を超えていると実年齢についての言及が入ってしまいます。

* * * * *

【アッシュブドウ】
 見た目は毒々しいショッキングピンク色のブドウ。香りはラフランスで、味はいちごという謎すぎる果実です。更に木にはミニサイズのラフレシアに似た花が咲いています。
 アルコールでは無いのに収穫して数時間は原因不明の酩酊効果があり、その後は見た目がちょっと変だけど食べてみると美味しい普通の(?)果物で、持ち帰って食べさせる分には安心。しかし収穫したその場ではあら不思議、みんな酔いどれさんのような状態になってしまいます。

【NPC】
『アッシュ』
 このシリーズではお馴染みになってしまった、イルミンスール魔法学校生徒。
 『灰を撒く者』の彼はトラブルの種をあらゆる所で芽吹かせ、一部の契約者に強烈なトラウマを植え付け、ヘイトを向けられ、他大多数からは「またアッシュか」と呆れの視線を投げかけられ、ある意味最大の被害者でもある筈なのに、当の本人はよく分かっていないのでした。
 それどころか「最っ近さー、注目を浴びてる気がすんだよな? いやぁ、俺様の内に秘めた魅力に皆、気付いちゃった? 気づいちゃった?」などと調子ぶっこいているようです。

『アレク』
 シスコン軍人お兄ちゃん。
 運転手件荷物運びという限りなく面倒な雑用でも妹に請われればホイホイついていく、その結果が、ジゼルは脱ぐわ、豊美ちゃんは寝るわ、クロフォードは泣くわ。
 しかし闘争というトリガーを引かなければ彼もただの大人しい青年(?)。受難を甘んじて受け、遣り過ごそうと『賢者の領域』に入っています。
 だからってジゼルが脱いで普通でいられる訳が無い。理性と欲望の狭間に揺れる19歳は己の煩悩に打ち勝てるのか!? こう、ご期待!

『ジゼル』
 セイレーンという名の人魚の様な兵器のようなアレクの妹のようなパートナー。
 お兄ちゃんの友人の豊美ちゃん、以前から仲の良かったクロフォードと一緒に今日は果物狩りにやってきました。しかし酒の香りですら酔ってしまう彼女がアッシュブドウの周りに居て無事な筈もなく……。
「まず、ふくをぬぎます」
 真顔でとんでもない事を言い出した彼女が最後まで服を着たままでいられるのか。男性諸君、こうご期待!

『豊美ちゃん』
 永遠の魔法少女。
 果実狩りの話でジゼルと盛り上がり、「良い所を知ってるんですー」とジーベル夫妻の農園に誘ったら銀髪の彼が居ました。
 天皇だった頃はどうだったのかは明かしていませんが、今の豊美ちゃんはアッシュの果実にすっかり影響を受けてしまい、元々素直で純真な(騙されやすいとも言う)性格がさらに強まったようです。
 果たして、豊美ちゃんは悪巧みを企む者にいいようにされてしまったりするのか? それともその真っ直ぐな言葉で悪巧みを企む者すら浄化してしまうのか? こうご期待!

『クロフォード』
 孤児院の保護者。
 子供達に美味しいものをと豊美ちゃんとジゼルに誘われ二つ返事で参加してみれば、いつかどこかで見た銀髪の少年が居る。アッシュブドウの怪しさには警戒していたものの、口にしなかったらいいかと安易に考えた……結果匂いにやられたクチです。
 何か悩みがあるのか、それともこの状況を嘆いているのか、正座したまま無音で泣き続けています。
 体と頭が酩酊状態でうまく動けないものの、意識は明瞭。泣きながら兎に角成分が抜け切れと願っているようです。
 なお、筆談は可能。ただへろへろの字が読めるかどうかは不明です。
 そんな感じで何も出来ないので期待に添えらそうにない……かもしれない?


『ミリア』
 『宿り樹に果実』の素敵なお姉さん。ジーベル夫妻とはカフェテリアの野菜や果物を提供してもらい、代わりに収穫を手伝ったりする関係です。
 共に支え合う夫との愛の結晶を身に宿しており、「来年からは子供と収穫を楽しめるねぇ」とジーベル夫妻と話しています。

『魔穂香&六兵衛』
 やさぐれ魔法少女から見事、ネトゲ中毒魔法少女へレベルアップ? とそのパートナー。ここ最近あまりに魔穂香が篭りっぱなしなので、六兵衛が「行くっすよ魔穂香さん!」と半ば強引に連れ出したようです。
 豊美ちゃんと讃良ちゃんの「皆さん楽しい(です)よー」という評価はある意味その通りだなと感心している様子です。
 六兵衛はアッシュぶどうに対する耐性がありませんが、魔穂香は何故かすごい耐性があります。

▼サンプルアクション

・パートナーや友人と、果実狩りを楽しむ

・寝床をつくろう

・ひたすら食べる。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2013年09月23日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年09月24日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年09月28日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年10月11日


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