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【カナン再生記】すべてが砂に埋もれぬうちに

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【カナン再生記】すべてが砂に埋もれぬうちに

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シナリオガイド

降り積もる砂は絶望の粒。すべてが埋め尽くされる前にユトの町を助けて下さい……。
シナリオ名:【カナン再生記】すべてが砂に埋もれぬうちに / 担当マスター: 桜月うさぎ



※お願い※
 出来ましたら、このシナリオの予約枠はこれまでカナン再生記のマスターシナリオ(グランドシナリオは除きます)に参加出来ていない方にお譲り下さいませ。
 より多くの方にカナン再生記に関わっていただきたいので、これまで参加出来ている方は、抽選、あるいは追加募集でお入り下さるよう、協力いただけたら嬉しいです。 

 
 
 
 
 
 南カナン、ユトの町。
 
 グリゼルは畑にかけてあった布を振りました。
 さらさらと砂の粒がこぼれます。その分の砂を防ぐのには役だっているはずなのですが、細かな砂は布の隙間からこぼれ、畑の作物に降りかかっていました。
 それをグリゼルは皺深い手に持った刷毛でそっと払っていきます。通常の畑仕事に加え、砂払いをしなければ光が十分に当たらなくなって作物は育ちません。
 砂が降っている間はもちろん、やんだ後も砂は風に乗り、どこにでも入り込んでくるのです。そして放置しておけば、水気を含んだ砂は重くのしかかり、作物を押しつぶしてしまいます。
「おばあちゃん、どう?」
 畑にやってきたエルシャがグリゼルの隣にしゃがみこみ、手元をのぞき込みました。
「多少の効果はあるようだが、はかばかしくないね。もっと砂を通さず、光を通してくれる布があれば良いんだが」
 けれど、今の町では布は貴重品です。布が、というより、生活に必要なものすべてが不足していて、何をするにもままなりません。来月隣村に嫁ぐ予定のエルシャにも、晴れ着1枚用意できないのです。
「でも、少しでも効果があったなら良かったね」
 がりがりの身体を粗末な服に包んだエルシャは、グリゼルを手伝って作物の周囲の砂を取り除き始めました。
 広い畑に人影はグリゼルとエルシャのものしかありません。
 多くの住人は幾度作物を植えても砂に埋められ、実りを迎えることのない畑を諦めて家にこもり、動けば空腹が増すとただひたすらじっと、死ぬまでの時間を待ち続けているばかり。
 食べるものも満足になく、生きるための希望もなく。ただただ、うつろに目を見開いて息をするだけの毎日。
「……おばあちゃんが、歌を歌ってみんなをはげましてって言ったから歌ってみたんだけど……誰も聞いてくれないの。そんな心の余裕も……誰にも残ってなかったの」
「町一番の歌声と言われたおまえの歌でもダメだったのかい。ほんとにもう、若い連中は仕方が無いねぇ」
 やれやれ、とグリゼルは腰を伸ばすとエルシャに笑いかけました。
「でもあたしはエルシャの歌が大好きだし、聞くと元気が出てくるよ。さ、おまえが嫁に行っちまう前にたくさん聞かせておくれ」
「うん」
 エルシャは細く綺麗な歌声で、町に伝わるイナンナを讃える歌を口ずさむのでした。
 
 
 カナンの地の為、領主たちは日々戦い続けています。
 ここ南カナンでも、若き領主シャムスがネルガルに反旗を翻し、各地で神官軍と戦っています。ユトの町の男たちもまた、シャムスと共に戦っています。
 以前はシャムスと一緒にこの町まで視察に来ていた妹エンヘドゥの姿が見えないことが気にかかりますが、もうすぐ事態は好転するはず。そう信じながらも日々の生活の苦しさは、町の人々の心から希望の灯りを消し去ってしまうのです。
 農作物は砂に埋もれ、井戸の中に砂が堆積していくのを見つめ。狩りに出ても獲れるのは人と同じくやせ衰えた動物のみ。
 延々と砂を払い続けても生きてゆくことさえ困難で、飢えは心まで荒ませます。
 栄養のある食べ物も薬も無い為に、身体の弱った者から順に住人が死んでゆきます。明日はもしかしたら自分の番なのかも知れません。
 そんな日々を送るうち、人々は笑うことを忘れ、楽しむことを忘れ、土地が砂に埋もれるより先に絶望の砂に埋もれて行こうとしているのでした。
 
 
 そんなある日。
 いつものように、畑に出る前にグリゼルが広場にあるイナンナの女神像に祈りを捧げているところに、エルシャが隣村からこんな噂を聞いてきました。
 カナンを助けてくれるシャンバラの人々が造った道がもうすぐ近くまで来ているらしい、と。
 喜び勇んで帰ってきたエルシャは町の皆に伝えましたけれど、信じてくれたのはおばあちゃんのグリゼルだけでした。
 エルシャからの話を聞くと、グリゼルは早速家に戻り、丈夫な杖を持ってきました。
「あたしがその人たちを町に呼んでくる。そうすりゃ、町の連中だって信じるだろうよ」
「無理だよおばあちゃん……」
「このままじゃ、カナンが助かる前にこの町の連中が朽ちて死んじまう。何でもいいんだ。ひとかけらの希望さえありゃ、うちの村の連中はまだ頑張れるはずだ。エルシャ、その道が造られているって場所を教えておくれ」
「ダメ」
 エルシャは言い張って、グリゼルの杖を取り上げました。
「それなら私が行ってくる。この町は毎日叱ってくれるおばあちゃんがいなくなったら、本当にみんな死んでしまうもの」
「おまえの身に何かあったらどうするんだい。エルシャは幸せな花嫁になって嫁ぐんだ」
「おばあちゃんがいなくなって、町がダメになったら、私は幸せなお嫁さんになんてなれない! 私の方がおばあちゃんより丈夫だから、きっとたどり着けるわ」
 グリゼルは言葉を尽くして説得しましたが、エルシャは聞き入れません。そしてまた、成功する確率もグリゼルよりはエルシャの方がずっと高いのも確かです。
 最後にグリゼルは折れ、エルシャに町の位置と現在の様子を書いた手紙を持たせ、送り出したのでした。
 
 
 隣村までは行ったことがありますが、そこから先はエルシャにとって未知の場所です。
 近くまで来ている、とはいえエルシャの足では簡単に到達できる距離でもありません。砂に目はかすみ、まともに食べていない身体はふらふらです。
 砂に埋められて地形もよく見分けられず、エルシャはしきりに目をこすりました。
 どちらに歩けばいいのか、途方に暮れかけた時。
 10歳ほどの褐色の肌をした女の子がエルシャの前に現れ、すっと前方を指さしました。
「こっち……なの?」
 尋ねるうちにも女の子の姿は消えてしまいましたけれど、エルシャはこれもイナンナ様のお導きに違いないと、迷わずそちらに向かいました。
 ほとんど休みも取らず街道を目指し、夕焼けに周囲の景色が赤く染まる頃。エルシャはやっとあともう少し……という所まで到達しました。
 その時です。
 エルシャの目の前の砂がざっと盛り上がった……と思いきや、それは砂鰐の上あごでした。
 驚いて転んだのが幸いし、エルシャは砂鰐にかみ砕かれずにすみましたが、それももう時間の問題でしょう。
(私がこのまま飲まれたら、手紙ごと失われてしまう……)
 エルシャは素早く手紙の隠し場所を考えました。
 穴を掘って隠す? ううん、そんなことをしたら見つけてもらえなくなってしまう。
(どうしたらいい……?)
 次の瞬間、エルシャは自分の着ていた服をすっぽりと脱ぎました。
 恥ずかしいとかそんな気持ちを感じている余裕はありません。脱いだ服に手紙をくるみこんで後ろに放ると、エルシャは服の固まりと砂鰐との間に立ちました。
(どうか……砂鰐が服に気づきませんように。そしてどうか……誰か通りかかる人がこの服に気づいてくれますように)
 お願い……とエルシャは、杖を砂鰐の方へと構えつつも、迫り来る砂鰐を見ずに済むようにとかたく目を閉じるのでした。
 
 
 その頃。
 カナンの地で復興作業にあたっていたコントラクターたちの前に、10歳ほどの褐色の肌をした女の子が駆けてきました。
「女の子が砂鰐に襲われそうになってて大変なの! 誰か助けに行ってあげて!」
「イ……イナンナ?」
 彼女の顔を知るコントラクターたちが驚くのも構わず、イナンナは背後を指さします。
「砂鰐の動きに誘発されて、サンドワームたちも動き始めてるわ。お願い、早く!」
 イナンナの必死な声に、コントラクターたちはそちらの方向へと駆け出すのでした。
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

桜月うさぎ

▼マスターコメント

 
 カナン再生記のサイドストーリーとなります。
 エルシャの救出、住人の激励、というシナリオですので、カナンに関わってみたいけれど難しそうだから……と思っていた方も、ぜひどうぞ。
 けれど……心の再生は物の再生よりも困難なもの。町の人の心をより一層傷つける可能性、あるいは町に向かった皆様の方が傷つけられる可能性もあります。
 食べ物を得ることさえ難しい状況に置かれ、明日は飢えて死ぬかも知れない。空腹で頭も心も働かない。努力しても事態が好転するとも思えない。もし皆様がそんな絶望の中に置かれたら、欲しい物は何で、どうすれば未来を信じられるようになるのか……を考えてみて下さいね。
 
 
 すぐ動けば、エルシャがワニに食べられる直前にその間に割り込むことが出来ます。
 その後もサンドワームが数体こちらに向かっていますので、エルシャを守る為には、速やかに倒すかあるいはエルシャを危険な場所から遠ざけて下さいませ。
 エルシャが食べられてしまった場合も、服の中に手紙がくるみこまれているので、それを見ればユトの町の位置とだいたいの事情は分かります。
 日が暮れかけているので、すぐに出発すると夜通し歩いて夜明け前にユトの町に到着、翌朝発てば午後に到着、です。
 
 このシナリオの間に、ユトの町には、1人がそれぞれ背負えるくらいの範囲の物品を持ち込むことが出来ます(戻って仕入れをしている日数は取れないので、たまたま持っていた……ということになります。多少の不自然は気にしない方向で〜。でもあんまり無茶はやめましょう〜)。
 1人分じゃ足りない〜という方は、掲示板で誰か代わりに荷物を持ってくれる方を探してみる等、工夫してみて下さいね〜。
 
 
 ではでは。皆様のご参加、お待ちしております。
 
 

▼サンプルアクション

・エルシャを助ける

・砂鰐(あるいはサンドワーム)を倒す。

・契約者として町へ

・町の復興・支援

・心の復興・支援

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2011年02月08日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年02月09日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年02月13日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年03月13日


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