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【カナン復興】東カナンへ行こう! 3

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シナリオガイド【イコン参加可】

美しい都・アガデをよみがえらせよう! ついでにドジっ子も助けようか!
シナリオ名:【カナン復興】東カナンへ行こう! 3 / 担当マスター: 寺岡 志乃

「おじさま! リヒトおじさま! どちらですか!」
 かつかつとヒールの音を立てミフラグ・クルアーン・ハリルは廊下を突き進んでいました。彼女は数カ月前、アガデが魔族の襲撃を受けた際に戦死したイェサリ・ニハト・ハリルの1人娘です。頭のボンネットから編上げブーツまで黒一色をまとっているのはまだ喪が明けていないからでした。
「一体何事だ? 騒々しい」
 騒ぎを聞きつけて廊下へ出てきたのは、騎士団長補佐のアラム・リヒトでした。
「リヒトおじさま!」
 目当ての人物を捜しあてたことにミフラグの目が輝きます。しかし次の瞬間にはもう、その目は怒りの光を浮かべていました。つかつかと歩み寄り、握り締めていた紙を突き出します。
「おじさま、これはどういうことですか? わたしはハリル家の正統な相続人なんですよ!? なのに相続の一覧に12騎士の騎士役が入っていません! それに付随する俸禄所領も!」
 見て、とばかりに広げられましたが、アラムはそれが何か知っていました。自分も了承のサインを入れたのですから。
「正当な手続きだ。12騎士の騎士役は男子が相続する。数日内にきみの従兄弟のディヤル・イム・ハリルの元へ正式な通知が届く事になっている」
「でも、ならカイン・イズー・サディクは!? 彼女は女性なのに12騎士じゃありませんか!」
「彼女は12騎士だが、サディク一族の総意により特別に認められた者だ。相続権は持っておらず、その騎士役は1代限りのもの。きみはハリル家当主だ。家督存続権が与えられている。きみに男子が誕生すれば、次代の騎士役は再び本家へと返還されるだろう」

「結婚して子を成すことだけがわたしの役割というわけですか!!」

「ミフ! やっと追いついた…! もう、あなた足が速いんだから」
 はぁはぁと息を切らせて現れたのは、ベリーショートの赤い髪と日に焼けた肌が印象的な女性でした。
「リージュ! あなたからもお願いして!」
 親友ハワリージュ・リヒトの姿を見て、それまで怒りに燃えていたミフラグの固い殻が崩れました。声は涙に震えています。
「あなただってリヒト家の長女じゃない。いずれはリヒトおじさまのあとを継いで女主人になるんでしょ?」
「でもわたし、12騎士にこだわってないから。べつに夫になる人がなっても平気よ」
 あっけらかんとした娘の言葉に、アラムはぽんと手を打ちました。
「ああ、そうか。ミフ、おまえディヤルと結婚すれば――」
「いや!! 騎士役はわたしのものなんだってば!!」
 ミフラグはついにキレて、その場で足を踏み鳴らしました。アラムは娘と目を合わせ……申し合わせたようにふーっとため息をつきます。
「……分かった。俺の口添えでもう一度卓議に出してもいい。そのかわり、条件がある」

 アラムの出した条件とは、カインが腰に差している短剣を奪うというものでした。

「カインからあの短剣を奪うなんて無理よ! 彼女があれをどれだけ大切にしているか、知らない人はいないわ!」
 ハワリージュが血相を変えて叫びます。
「俺の推薦が欲しいというのであれば相応の力を示すのが条件だ。全ての騎士の頂点に立つ12騎士を名乗るのであればそれくらいできて当然」
「つまり、あきらめろと言いたいんですね…。
 いいえ! あきらめたりなんかしない!! 絶対この手でカインから剣を奪ってみせます!!
「待って、ミフ! そんなに走ったら転んじゃうわよ!」
 闇雲に走り出したミフラグにハワリージュの制止の手が伸びます。しかしその前に、ミフラグは派手にすっころんでいました。「もう!」と足に絡んだスカートをひっぱたき、あらためてたくし上げると全速で走って行きます。

「まったく……イェサリのやつ、とんだじゃじゃ馬に育てたものだ」
「あら? わたしも結構同じようなこと言われてるわよ? お父さま」
「ああ、頭の痛いことだ。おまえもさっさと婿をとって、落ち着いてくれるとありがたいんだがな」
「またその話?」
 そこへやって来たのがセテカ・タイフォン(せてか・たいふぉん)でした。書類を覗き込みつつ歩いてくるセテカを見てハワリージュの目が輝きます。
「セテカ! まーたお父さまがね、早く結婚しろですってーっ!」
「――は? おまえと? いやだ
「わたしもー」
 あっはっはー。
 すれ違いざまハイタッチして、ハワリージュはミフラグを追って走り出そうとし――あることを思い出して振り返りました。
「あ、そうだ! お父さま、例の話バァルさまにしてくれた?」
「ああ。考えておくそうだ」
「やった! ありがとう!」
 満面の笑顔で礼を言い、ハワリージュは今度こそ走り去って行ったのでした。
「……昔は可憐ではかなげな美少女と評判だったのに…」
 なんであんなになってしまったんだろう。思わず顔を覆ってしまったアラムにセテカが歩み寄ります。

「アラムさん、よろしいでしょうか?」
「なんだ? 坊主」
「都の復興状況なんですが――」
 セテカは数十枚の束をめくりめくり説明を始めました。それを聞くにつれ、アラムの眉はひそめられていきます。
「家屋の再建がほとんど進んでいないということか」
「最優先はクリフォトの根の撤去でしたから。伐採されて力をほとんど失ったとはいえ、穢された地面は女神様の結界を弱める元です。魔族やモンスターの襲撃を避けるためもあって、こちらと壁の建造にまず兵を投入しました」
 壁にもクリフォトの枝が大量に食い込んでいましたから、それを残らず撤去するためには壁の建替えは仕方のないことでした。

「また、修復の間、民の大半はほかの村や町に疎開していますが、あてのない者も多数残っています。そういう者たちは火災を逃れた北西付近を中心に仮設テントで暮らしているわけですが、それもそろそろ限界ではないかと」
「だが水路の工事や井戸の再発掘も進んでいないのだろう? そんな状態で各地区へ戻すわけにはいかない」
「火災は都の4分の3に及んでいましたからね。瓦礫や廃材の撤去だけでも相当な量です。また、再建を急ぐにしても肝心の資材が届かず、備品から不足しています」
「手配は?」
「しています。ですが大量発注すぎて卸元でも数が不足していて、届かないんです」
 その筆頭がランプと燃料油でした。夜を徹して工事しようにも、ランプをつける油からして満足にない状態です。ロウソクのあかりではとても水路や井戸掘りなどできるはずもありません。
「城にある機晶石を一時的に投入することも考えたのですが、保管していた塔が破壊されて、こちらも大多数が使用不可になっています」
「――どうしようもないな」

「そこで提案なのですが、シャンバラに救援を求めてはいかがでしょうか。彼らの能力や先進的な技術を用いれば、なんとかなるかもしれません。
 それと……ザナドゥの魔神 ロノウェ(まじん・ろのうぇ)殿にもお知恵とお力を借りられないか、問い合わせてみてはどうかと」
 その言葉にアラムはますます渋面になります。
 それも仕方のないことでしょう。アガデの都を破壊し、虐殺の限りを尽くしたのはロノウェの配下の魔族でした。いかに戦いが終結し『リュシファル宣言』が採択されたとはいえ、都の人々の記憶には今もあの惨劇の夜が刻まれているのは間違いないでしょう。そんな場所へ魔族を招いたりすれば、民にどんな衝撃を与えることになるか……。
 民がアレルギーのように過剰反応し、騒動となるのは目に見えていました。
 しかしうまくすれば民の中に根付く前にしこりを解き、魔族との仲をとりもつことができるかもしれない。ほとんど賭けのようなものだが――アラムの厳しい表情に、その意を読み取ってセテカもうなずきます。
「この際見栄をはってもいられない、か」
「ただ、現在ほとんどの魔族は都内部へは入れません。女神様の結界がありますから。ロノウェ殿とその副官ヨミ殿のみの来訪なら、まだ伏せようもあります。もちろん、女神様に事情をご説明して結界を一時的に緩めていただくという方法もありますが」
「それについては向こうの出方を見て考えよう」
「はい」

 アラムはセテカの差し出した書類に了承のサインを入れました。そしてその要員募集の書状はすみやかにロンウェルとシャンバラ全校へ送られたのでした。



 一方、奥宮にある領主の居室では、東カナン領主バァル・ハダド(ばぁる・はだど)が報告を受けていました。
「では姫は今、リドの町にはいないというわけだな?」
「はい。アナトさまは1週間前後見人のナハル・ハダドさまのお屋敷を退去され、弟君のおられるテセランへ居を移されたということです」
「そうか」
 先日ロンウェルの地で起きたバァル暗殺未遂事件。それにより12騎士のエシム・アーンセトは犯人として捕えられ、処罰されました。
 バァルはエシムが敵に操られて自分を撃ったのだと知っていました。しかし証拠はありません。あるのは撃ったのは彼だという事実です。そして領主殺害未遂犯となった彼に12騎士が下した処分は、騎士役の剥奪と俸禄所領の没収、直轄地であるテセランにある屋敷での無期限軟禁というものでした。
 12騎士という身分にありながら敵との交戦中自国領主を銃撃して瀕死状態にしたことを考慮すれば、これは特に重い処分ともいえません。むしろ彼の未熟さを考慮した上でのかなり軽い処罰ではないかとバァルは判断し、了承しました。
 そしてこの数カ月、姉のアナト=ユテ・アーンセトが弟の処分に恩赦を求めて動いていたのはバァルも知っていました。ですが、領主殺害未遂犯という重犯罪人の彼のために動く貴族はついに現れませんでした。アーンセト家は12騎士とはいえ、その勢力は最下位です。前当主は病気がちであったため、友人も少なく――だからこそナハルに利用されたわけですが――到底12騎士の議決を覆すほどの力を集めることはできなかったのです。
 そんな彼女への処分は、領主との結婚契約の破棄、後見人ナハルによる身柄預かりとアガデからの無期限追放――。
「…………」
 バァルは長い間、口元に手をあてて黙考していました。その足元では報告を終えた騎士がバァルからの指示を待っています。
「馬車の用意を。テセランへ行き、エシム・アーンセトと会うことにする」
「――承りました」

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、または初めまして、寺岡 志乃といいます。
 こちらは「【カナン復興】東カナンへ行こう! 3」となりまして、時間軸的にはザナドゥでの戦いが終わって数カ月後となります。よろしくお願いいたします。

 今回メイン舞台となりますのは東カナンの首都・アガデの都です。こちらで復興のお手伝いをしていただきたいと思います。
 現在アガデの都はクリフォトの根を撤去し、壁の建替えがほぼ済んだところです。街は火災でほとんど消失してしまったため、主な作業としては瓦礫の撤去、水路・井戸の回復工事、街路の修復、家屋の建設といった諸々のことになるのですが、そのうち3分の1〜3分の2程度しか進んでいません。
 都の一角に避難している民たちは仮設テントによる生活で疲労がかなりピークにきていまして、こちらのケアもかなり重要です。

 その一方で、ハリル家では騎士役相続問題が起きており、こちらも見ようによってはかなり深刻です。数日以内にカイン・イズー・サディクが所持している短剣を奪わないと、ミフラグは騎士役を従兄弟に奪われてしまいます。
 カインのクラスはニンジャです。暗器の使い手で体のいたるところに投げナイフ等武器を仕込んでいます。動きも素早く身軽で、一撃必殺で相手を倒します。戦闘センスがよく、大抵の武器は並以上に使いこなします。
 また、彼女には3人の騎士(ニンジャ)が影のように付き従っています。カインのためならためらわず命を捨てる覚悟の者たちなので、要注意です。
 反対にミフラグ・クルアーン・ハリルは天然ドジっ子です。走れば何もない所で転ぶわ、歩けば壁にぶつかるわ、バケツは蹴倒すわ……さらにその自覚がない困った子です。転べば「この靴が悪いのよ、靴が! えいえいっ!」とかやっちゃう子です。そんなドジっ子ですから、剣の腕前も推して知るべし。騎士としての訓練などほとんど受けていません。このままではカインの相手どころかそばに近寄ろうとするだけで見つかってしまうでしょう。力になってあげてください。

 ●NPCの立ち位置について
  バァル・ハダド……馬車でテセランへ向かいます。
  セテカ・タイフォン……総監督をしています。いろいろな工事現場に顔を出して報告を受けたり観察したりします。
  オズトゥルク・イスキア……街路で土方やってます。水路用の穴掘りとか、力仕事が主です。
  ネイト・タイフォン……女神イナンナの大聖堂再建の監督をしています。
  ハワリージュ・リヒト……都に残った人々のケアをしています。何かほしいものがあったら用立ててくれます。
  カイン・イズー・サディク……12騎士は全員作業に駆り出されているため、その身軽さから高い場所での作業を手伝います。
  ミフラグ・クルアーン・ハリル……カインをつけ狙っています。
 ※ただし彼らにかかわるアクションがなかった場合、彼らは登場しない可能性があります。
 ※彼らのパーソナルデータは後日マスターページに掲載します。
 ※ザナドゥNPCのロノウェ、ヨミを呼ぶことも可能ですが、イナンナの結界により彼ら以外の魔族は都の中へ入ることはできません。
  クリフォトの護符はクリフォトの力が衰えているため効力がなくなっています。魔族兵にしてもらいたいことがある場合、外部でのアクションを
  考えてください。
  内部で彼らにしてもらいたいことがある場合、内容いかんでセテカたちがイナンナに便宜を図ってくれます。ただし、危険と判断した場合は
  断られる可能性もあります。


 気をつけていただきたいのは、今回は修復の手伝いであって都の近代化ではありません。赤屋根、白壁、曲線を描いた街路、各所に設置された小門といった、中世を思わせる東カナンの様式に沿った修復をしてください。その上での工夫はどんどん採用させていただきますが、「ビルを建てる」とか「自動ドアをつける」「こっそり隠れ家を作る」といった、東カナンの伝統的外観にそぐわないもの、修復に関係のないものは建築プランを出した段階で却下されますのでご注意を。
 また、都の復興作業に限りイコンの使用を許可します。カインとの戦闘やバァルの随伴でイコンは使用できませんのでご了承ください。


 それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・復興の手伝いをする

・人々のケアをする

・ミフラグの補助をする

・バァルと話す

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2012年01月21日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年01月22日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年01月26日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年02月13日


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