さあ、今年も修学旅行の時期になりました。
2019年修学旅行の行き先は、京都・奈良です。
皆さんの目の前には、聖徳太子ゆかりの寺、法隆寺がそびえ立っています。
天に手を伸ばすように立つ五重塔、寺宝を一堂に集めた大宝蔵院・百済観音堂など、世界遺産第一号に相応しい建物がずらりと並んでいます。
「もう! また掃除をサボって逃げ出したのね!」
響いてきた声に皆さんが振り向けば、外見は10代前半と思しき、何やらとっても華やかな衣装に身を包んだ少女が、五重塔の前でぷんぷんと腹を立てていました。
何事かと声をかけた皆さんへ、少女が話しかけます。少女は何と、ここ法隆寺の建立に関わったとされる『推古天皇』なのだそうです。
「一応、豊美(トヨミ)って名前があるんですけど、皆さん私のことを推子(スイコ)と呼ぶので、慣れてしまいました」
あはは、と苦笑するトヨミに、服のことを尋ねてみると。
「これですか? えっとですね、私、理由あって魔法少女をやっているんです」
そう言って、トヨミがくるりと回ってポーズを決めます。ふわりと舞うひらひらのスカートからぱんつが覗きそうになりましたが、外見はともかく彼女は既に千四百歳超え、もはや魔法少女という歳では――。
「魔法少女は、いくつになっても魔法少女なんです!」
トヨミの訴えに、今度は皆さんが苦笑の番でした。
「あっ、そうです。皆さん、ウマヤドを探してくれませんか? あの子にここの掃除を頼んだのに、逃げられてしまったんです。……もう! 後でお仕置きなんだから!」
トヨミが言うには、ウマヤド――やはりここ法隆寺の建立に関わった『聖徳太子』のことです――と呼ばれる彼は、法隆寺の掃除をサボって抜け出し、法隆寺の他の建物、それと薬師寺、唐招提寺、法起寺のどこかに隠れているだろうとのことでした。
それは偶然にも、これから計画されていた観光コースと同じだったのです。
「そうなんですか? じゃあ、私と一緒に行きましょう♪ ふふっ、まるでガイドさんの気分です♪」
こうして、突然の出会いから始まった、何やら不思議な寺院観光が幕を開けるのでした――。