波羅蜜多実業高等学校

　――蒼空学園の廊下。
　校長室へ向かっていたルミーナ・レバレッジ（るみーな・ればれっじ）は、角で呆然と佇む女子生徒を見付けました。

「こんなところでボーっと立っていると、誰かとぶつかって危ないですよ？」
「ルミーナさん……うっ……ううっ」

　ルミーナが声を掛けると、振り向いた女子生徒は途端に堰が切れたかのように泣き出しました。

「ど、どうしたのですか！？」
「私の、私のファーストキスが奪われちゃった〜！！」
「ファーストキス！？」

　自分のふくよかな胸の中で泣きじゃくる女子生徒を、ルミーナは優しく抱きしめました。



　――蒼空学園の校長室。

「ファーストキス泥棒、ねぇ」

　ルミーナから報告を受けた御神楽　環菜（みかぐら・かんな）は、興味なさそうに携帯電話を弄っています。

「はい。聞くところによると、彼女を含めて今月に入ってからもう５人目だそうです」
「くだらない……キスなんて挨拶代わりだし、ファーストキスなんて、今騒いでいる女子生徒達も大抵は小さい頃にやってるじゃない」
「キスなんて、じゃありません！　環菜さん、分かっていません！！」
「ル、ルミーナ！？」

　環菜の言葉にルミーナは感情的に声を上げます。
　いつもと違う雰囲気に、流石の環菜も驚いて携帯電話から顔を上げました。

「ファーストキスは女の子にとって、一生に一度の大切な大切な思い出なのです！　それを挨拶と一緒にしないで下さい！！　分かりました。今回の件は私が仕切ります。よろしいですね！？」
「え、ええ……あなたがそこまで言うのなら、任せるわ」

　ルミーナの気迫に圧される形で、環菜は頷いていました。

「ルミーナって、女の子女の子したイベントを大切にするタイプだったのね……」

　パートナーが出ていった扉を見つめながら、環菜はルミーナの新たな一面を知ったのでした。



「女の子のファーストキスを奪うなんて許せない！　マナミンも協力するわ！！」

　ルミーナは小谷　愛美（こたに・まなみ）達生徒に一人一人声を掛け、ファーストキス泥棒を捕まえることにしました。

　蒼空学園に現れたファーストキス泥棒を捕まえるのが目的です。
　被害が少ないので公にはされていませんが、ルミーナや愛美から話を聞いて参加することが出来ます。
　また、噂も立ち始めているので、他校の生徒も参加出来ます。

　今月に入ってから被害者は５人ですので、一日一人は被害に遭っている計算になります。
　また、犯人はどういう訳かファーストキスがまだの少女を知っていて狙っているようです。

　犯行は極めて簡単で、放課後、人気のない曲がり角など死角が多そうなところで、不意打ちでキスをするそうです。

　なお、被害者の目撃情報では、犯人は蒼空学園の女子の制服を着た小柄な少女とのことです。
　キスをされたショックの方が強く、顔までは覚えていないため、今のところ犯人は特定できていません。
　犯人は女の子ですので、ノーカウントといえばノーカウントですが……そう割り切れないのは複雑な乙女心かも知れません。

・ファーストキス泥棒をおびき寄せる

・ファーストキス泥棒を捕まえる

・ファーストキス泥棒になる