波羅蜜多実業高等学校

　空京の一角に、その瀟洒な洋館はありました。
　表札の文字は「綾小路想子」。

　いま錆ついた門を開けて、貴族めいた者達が館の中へと入って行きます。
　彼等は謎の富豪、想子の友人で空大に所属するサークル「恋愛研究会」の主要メンバー。
　
　応接室に通されるや、御簾の向こうから涼やかな婦人の声が流れてきます。
「わらわは退屈じゃ。
　なんぞ面白い余興でもないのかえ」
「それならば、想子様」
　会長の黒城涼華が上申します。
　執事然とした彼女は、「未来の空大教授」の誉れ高き心理学の天才。
「我が研究の成果を生かせば、想子様の『退屈の虫』を払うことなど容易いこと」
　そうして想子に危険な計画を持ちかけたのでした。

　孤島に、シャンバラの学生達を招待しましょう！
　名目は「無人島で恋人と過ごす、冬のバカンス」。

　浜辺で夕日を見たり。
　草原で雪と戯れたり。
　氷の張った池でスケートに親しんで頂きます。

　しかし島は、実は「悪魔の島」。
　治癒不可能な「伝染病」の温床なのです。
　彼等は島の入ったが最後、目が見えなくなるか、耳が聞こえなくなるか、口がきけなくなるか、のいずれかの症状が起きたのち、大量の血を吐いて死に至ります。

　彼らに残された時間は「１日」。
　しかも「唯一特効薬のあると思しき廃病院」に行くと、そこにはナラカの巨大ウジ虫達が侵入者を屠らんと待ち構えています……。

「……『最期の１日』に、真実の恋が試されるのです。
　無邪気に戯れて、互いに死を待つのもよいでしょう。
　特効薬を求めて『廃病院』に入り、恋人を守って死に至るのもよいでしょう」
「なるほど！　それは妙案じゃ」
　想子はパチンッと扇子を閉じます。
「して、首尾は？」
「すでに幾名かの学生達にメールを打ち、打診が取れております」
「うむ。島は、我が綾小路家所有の『無人島』を使うが良い。
　空京に近い上に、鳥一匹近づかぬ絶海の孤島。
　うってつけであろう」
　ハッと涼華は一礼して下がります。
　
　かくして、危険な「冬のバカンス」は開始されたのでありました。

「参加者全員が伝染病で死ぬ事」と「特効薬がない事」は確定です。
　ただし上記はあくまでもＰＬ情報であり、ＰＣ達は知りません。
（とはいえ、最後には「生き返る」ため、ご安心を）
　
　最期の日に、巨大ウジ虫と戦い恋人を守って死ぬか？
　無邪気に遊んで、らぶらぶな死を迎えるか？
　
　選択は２つに１つとなります。
　
　参加者は「恋人」以外の関係でも全然ＯＫ！
　ただし「目」「耳」「口」のいずれかが使えなくなるため、告白される場合はスキル等の助けが必要となります。
　使えなくなる体の部位は上記より１つお選びください。（表記なしはマスターの裁量となります）
　
　当日の天候は晴れ。
　孤島へは綾小路家所有の「大型飛空艇」に乗って到着します。その後飛空艇はすぐに島を発ち、戻ってきません。
「伝染病」については、宿泊先のホテルに残された従業員の手記から知ることとなります。
　なお脱出は島全体に張り巡らされた「特殊な結界」のために、いかなる方法を用いようとも不可能です。
　
　それでは、「最後の恋」をお楽しみくださいませ。

・　らぶらぶな死をむかえる

・　特効薬を探す！