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ご落胤騒動

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そして物語はお家騒動へ
シナリオ名:ご落胤騒動 / 担当マスター: 泉 楽

「戻るのか」
 甲斐主膳(かい・しゅぜん)は、目の前の娘に優しく声をかけました。
「はい」
 娘は小さいけれど丈夫そうな体と、健康そうな真っ赤なほっぺを持っていました。初めて娘が奉公に上がった時から、とても眩しい思いで見ていたことを主膳は思い出しました。
「二親を失くしたのであろう。戻ることはない。このまま当家に奉公していて構わぬぞ。時が来れば、然るべきところに――」
 嫁に出してやろう、と主膳は言いかけやめました。叶うならば、このままずっと手元に置いておきたいと彼は思っていました。
 娘はかぶりを振りました。
「ご恩は決して忘れません。けれどわたくしは、この家のことは全て忘れたく存じます」
「そうか――」
 主膳は懐から美しい刺繍の刀袋を取り出しました。中に入っているのは短刀です。
「もし――もし万一だ。そちに子が出来た時は、それを持って訪ねて参るがよい。いかようにでも取り計らおう」
 娘は主の顔を見つめました。
「男であれば、隼人の弟として育てよう。隼人はわしに似て体が弱い。支えとなってくれよう」
「女であれば?」
「女であれば、良縁を見つけ、嫁がせよう。どちらにせよ、悪いようにはせぬ。もし何もなければ――売ってもよい。その短刀ならば、それなりに高く売れよう。役に立つはずだ」
 はいと返事をしたものの、娘はたとえ身篭っていたとしても、決してこの家を訪ねまいと決意していました。
「さらばだ――」
 それは十一年前の出来事。
 そして――。


 あの守り刀を何としても取り返さなければならない、と朱鷺 ヒナタ(とき・ひなた)は思いました。我が子・当麻と父親とを結ぶ、たった一つの品です。
 甲斐家にいた一年ほどの間に、お家のためと称して子供たちが道具にされる例を何度か目にしました。特に諏訪 帯刀(すわ・たてわき)の娘が三十も年上の男の下へ嫁いだことは、忘れられません。
 主膳はそういう人物ではないと思っていましたが、そうと言い切れないのが武士の世界です。
 だから、子がいることさえ、知らせるつもりはありませんでした。
 それでも、もし当麻が望むなら――或いは自分の身に何かあったらと思うと、守り刀を手放すことは出来ませんでした。
 そして今、その守り刀は九十九 雷火(つくも・らいか)によって奪われてしまいました。おそらく、主膳の正妻・那美江(なみえ)の命令でしょう。九十九家は那美江の実家・諏訪家に代々仕え、特に雷火は少年時代から那美江のために働いてきたことを、ヒナタは知っていました。
 那美江は主膳を深く愛していました。その分、非常に嫉妬深く、決して側室の存在を許しませんでした。故に、ヒナタは甲斐家を出たのです。我が子を守るために。
 その那美江が、守り刀を奪ったぐらいで納得するとは思えませんでした。
「どうした?」
 諏訪家の侍に襲われたヒナタを、勤め先の一膳飯屋から救ってくれた人物は、丹羽 匡壱(にわ・きょういち)と合流しました。匡壱らは葦原明倫館に保護されている当麻の元へ向かうところです。
「いいえ、何でも……」
 ヒナタはかぶりを振りながら考えました。
 このまま、この人たちの世話になっていていいのか。何もかも任せていいのか。これは自分と、殿様と、奥方様の問題ではないのか。我が子を守るのは、母たる自分の役目ではないのか――。
「申し訳ありません。厠へ行きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「我慢できないか? この辺は店もないし、もうすぐ明倫館に着く」
「その――我慢できないのです。外で構いませんから」
 匡壱は戸惑いました。男なら立ちションですみますが、女はそうはいきません。それでも行きたいなら、相当切羽詰っているはずです。
「分かった。誰も来ないよう見張ってるから、早くしてくれ」
「ありがとうございます」
 ヒナタは頭を下げました。心の中で「申し訳ありません」と付け加え、匡壱の傍を離れました。そして、彼女は姿を消しました。


 その頃当麻は、明倫館の生徒やその仲間と共にいました。一度は母を捜しに出たのですが、甲斐家の雇った浪人や忍者に襲われ、やむなく学校へ戻ることになったのです。
 自分が甲斐家の隠し子であること、本来の嫡子がない今、自分だけが当主の血を引くこと、そのために狙われていること。
 そんな話を聞かされても、当麻は釈然としませんでした。父親は、当麻が生まれてすぐ死んだと聞かされてきました。引越しが多く、物心がついてからも四度、今の長屋には半年前に越してきました。一度は別の土地へ行こうかと話したこともありますが、やっぱりここがいいと、葦原島から離れられないでいます。
 それらのことも、上記の話と合わせれば納得がいきます。それでも当麻は、どうしても母に確かめたいと思いました。
 だから当麻はこっそり、みんながこれからの予定を話し合っているときにその場を離れました。


 九十九 雷火は甲斐家の忍者と、金で雇った者たちを再び集め、今度こそ当麻を連れてくるよう命じました。
 那美江は当麻を殺すよう命じましたが、屋敷の外では目立ちすぎると雷火は考えていました。根回しをしてあるのである程度は目付も目を瞑ってくれますが、これ以上騒ぎが大きくなれば那美江の甥で十四になる帯刀の末子・諏訪 小七郎(すわ・こしちろう)の養子話どころか、甲斐家もろとも諏訪家も断絶となりかねません。
「那美江様はそこまで考えていらっしゃらないからな……」
 雷火は眉間に皺を寄せ、呟き、さてどうしたものか、と考え込みました。


 当麻は、ヒナタはどこへ行ったのでしょう?
 雷火は、どういう動きに出るのでしょう?
 そして、どうすれば最も良い結末を迎えられるのか――或いは、誰かが犠牲にならねばならぬのか――。
 答えは、あなたのアクション次第です。

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

というわけで、「狙われた少年」の続き「ご落胤騒動」です。
時間軸としては、シナリオガイドの時点で「狙われた少年」の直後になります。大体、夕方から夜ですね。
前回参加された方はもちろん、今回からという方でも大歓迎です。ただ、前回「狙われた少年」に目を通してからご参加頂くといいと思います。
以下、注意点です。

・今回から参加の方は、どうしてこの事件に関わることになったか、適当で構いませんので理由を書いておいてください。
例:一膳飯屋の騒ぎに巻き込まれた。葦原明倫館にいる友人に協力を頼まれた。等々
・前回参加された方は、その続きでも、全く違うアクションでも構いません。
・九十九 雷火(つくも・らいか)は諏訪家の侍ですが、那美江(なみえ)の命令で甲斐家の忍者と動いています。諏訪家の侍と動くこともあり、連絡係も兼ねています。どこにでも現れる可能性がありますが、同時刻に違う場所にいることはありません。
・当麻やヒナタを探す場合は、具体的にどこへ行くのか、書いて下さい。漠然と探しても、見つかるかどうか分かりません。具体的という点では、説得や解決策でも同様です。
・シナリオガイドに登場していない真田 佐保やゲイル・フォードに関わったアクションもかけられますが、NPCに頼ったアクションはなるべく避けてください。
・甲斐家がメインのシナリオです。他シナリオで得た称号が、アクションで必ずしも採用されたり、有利になるとは限りません。
・ちなみに悪役歓迎(笑) といっても、悪者ばかりでももちろん話が成り立ちませんので、正義の味方も大歓迎。


2011年4月25日:修正
マスターコメントの一部を修正しました。

▼サンプルアクション

・当麻を探す

・ヒナタを探す

・解決策を○○に提案する

・九十九 雷火の配下に入る

・とにかくチャンバラをしたいので、○○に戦いを挑む!

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2011年04月23日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年04月24日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年04月28日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年05月19日


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