波羅蜜多実業高等学校

　
『お困りですね。
　あなたの願いを叶えたいと思いませんか？』

　こんな売り文句を聞いたことはある？
　真っ黒いツバ広帽子を被った黒いコートの男が現れたら要注意。
　甘い言葉を言われても、決して頷いてはいけないよ。
　彼らは願いを叶えてくれる。
　……“代償”と引き換えにね。


　■■■

「ああ……私は絶対に頷いてはいけなかったのだ」

　村長は頭を抱えて嘆きました。

「お父さん……。
　お姉ちゃんが居なくなった理由を知っているの？」

　村長の娘であるウイユに問われ、村長はゆっくりと顔を上げました。

「黒い男が現れ……私に――
　『枯れかけたこの土地を救いたいと思いませんか？　どんなことをしてでも』と問うたのだ。
　お前も知っての通り、山から流れる川が止まり、この辺りは土地が枯れ始めている……。
　このままでは村は無くなってしまう。
　だから、私は『救えるものなら救いたいに決まっている。どんなことをしてでも』と答えた」

「……それで？」

「男は『分かりました。あなたの願いを叶えましょう』と言って、姿を消した。
　お前の姉、アンリと共にだ。
　私はすぐに気付いたよ……。
　あの男……あの黒い男は、黒の商人だったのだと」

　村長の言葉に、ウイユは息を飲みました。
　彼女も、黒の商人の噂は聞いたことがありました。
　黒の商人は、一人だとも数十人からなる集団だとも言われており、
　どんな時でも必ず黒いツバ広帽子を被り、黒のコートに身を包んでいると言います。

　彼（彼ら）は困っている人のところへ突然現れ、
　『その願いを叶えてやろうか』と問いかけ、その問いに頷いた者の願いを様々な方法を用いて叶えるのです。
　何か大きな代償と引き換えに。

「……黒の商人。
　本当に居ただなんて……」

　ウイユは考えました。

「川の水が止まったのは、
　山の水源にヒュドラが棲みついて、水の流れを塞いでしまったからよね？
　ヒュドラが暴れれば水源の洞窟が破壊されて、あふれた水が土石流となって村を襲うかもしれないから、
　退治の依頼を出すことも出来なかった……。
　――黒の商人はお姉ちゃんをヒュドラに捧げるつもりなんだわ」

「まさか、アンリを生贄に使うというのか！！」

「ヒュドラを眠らせる薬を持たせたお姉ちゃんを食べさせれば、ヒュドラは深い眠りにつく……。
　そうすれば、ヒュドラを暴れさせずに倒すことが出来る」

「その方法は初めから分かっていたんだ！
　だが、そんな事をするわけにはいかないから困っていたというのに！！」

「……お姉ちゃんを助けなきゃ」

「ヒュドラが居る水源はモンスターの蔓延る洞窟の奥にあるんだぞ……？」

「私、村の近くに契約者の人たちが訓練に来ているのを見たの。
　もしかしたら、誰か助けてくれる人がいるかもしれない……！」

　そして、さらわれた娘アンリの妹ウイユは、
　契約者たちが訓練を行なっているキャンプへと急いだのでした。

こんにちは、常葉です。
村近くの訓練キャンプに現れたウイユという少女は、
契約者たちに、どうか姉を助けて欲しい、と懇願しました。

黒の商人に連れ去られた少女アンリ。
このままでは、彼女は、洞窟の奥の水源を塞ぐヒュドラの生贄にされてしまいます。


■水源までの道のり
川の流れる巨大洞窟を行くことになります。
植物系のモンスターや水棲系のモンスターが多く潜んでいます。

・植物系モンスター
　長い蔦で絡め取ろうとしてくるものや花粉毒を放ったりするものが居ます。
　
・水棲系モンスター
　巨大蛙や巨大ワニなどがおり、水の中では肉食魚や巨大水棲蛇が襲ってきます。

■水源のヒュドラ
三つ頭のヒュドラで、現在は水源に棲みついて水の流れを妨害しています。
下手に戦闘になって暴れられると周囲が破壊され、土石流が村を襲ってしまう可能性があります。

若い娘を好んで食べたがります。

■黒の商人
黒いツバ広帽子を被り、黒いコートを着た男です。
銃やブレードを持った顔の無い機晶姫を何体か従えており、本人もそれなりに戦えます。

黒の商人は、村長の娘でウイユの姉であるアンリを誘拐し、水源のある洞窟の奥へと向かっています。
ヒュドラを眠らせる薬を持たせたアンリをヒュドラに食べさせるつもりなのです。

なお今回は、ＭＣとＬＣの別行動は出来ません。基本的には、水源までの道のりを切り開く、ヒュドラと戦う、黒の商人と戦う、三つの場面のいずれかを選んでアクションを掛けてください。

・水源に向かう！

・アンリを取り戻す！

・洞窟探索をサポート！