【黒史病】記憶螺旋の巫女たち リアクション公開中! |
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シナリオ名:【黒史病】記憶螺旋の巫女たち / 担当マスター:
有沢楓花
* ──地球、新百合ヶ丘、百合園女学院。 「今後ともよろしくお願いいたしますわね。それでは、失礼いたしますわ」 校門でにこやかに挨拶をし、アナスタシア・ヤグディン(あなすたしあ・やぐでぃん)は踵を返します。 スーツケースを転がしながら向かう先は、新百合ヶ丘駅です。 パラミタ校の新生徒会長として、アナスタシアは丁度、百合園本校の挨拶兼視察を終えたところでした。 「村上さんは、もともとこちらに通われていたんですのよね? 懐かしいのではなくて?」 アナスタシアは、隣を歩く百合園の生徒達の一人──生徒会会計の村上 琴理(むらかみ・ことり)に問いかけます。 「そうですね。普通の学生だった頃を思い出します」 「ではもっと『普通の学生』らしいイベントが必要ですかしらね。契約者の方たちだって体育祭や文化祭を楽しみたいでしょうし。 そうそう、文化祭……といえば、似ているものですと、過日の万博は大変興味深いものでしたわね。お土産もいただいて……あら?」 「どうかしたんですか?」 「忘れ物をしたみたいですわ。先に駅で待っていて下さる?」 「道分かりますか? 私も一緒に行きましょうか」 琴理は言ってから、尋ねたことを後悔しました。 「貴方の手助けは要りませんわよ。会長たるもの、これくらいできないでどうしますの?」 新百合どころか日本、いや地球を訪れたのも初めての──それも生粋のお嬢様が、道に迷わないわけがないのです。同時に、彼女が強がるのも想定内でした。 「いいですか、ここをまっすぐ行って次の角を右に曲がって、三つ目を左に行って、すぐですから」 「お節介は結構ですわよ。では、駅でお会いしましょう」 颯爽と歩き出すアナスタシアが角を曲がるのを見送って。 琴理は他の生徒に駅まで行くように告げてから、彼女は、こっそりと後を付いていくことにしました。 無事アナスタシアが百合園に入り、校門から出てくるのを見える位置で、電柱に姿を隠します。 「……これじゃ不審者みたい……何で母校でこんな真似を……」 ですが。その日……いくら待てどもアナスタシアは出てきませんでした。駅で待つ生徒に尋ねても、まだ来ていないとのこと。 学校に戻って、校内を迷っていないか聞いてみれば、既に校門を出たとのこと。そう、正門ではなく、裏門を通る姿を見た生徒がいたのです。 途方に暮れそうになる琴理の耳に、その時携帯の着信音が届きました。 * 一方、アナスタシア。 (物事は表面だけで作られていませんわ。裏口を見るのも勉強、ですわよね。それに……壁伝いに行けば迷わないですわ) 彼女は考え事をしながら裏門を出たところで、突如話しかけられました。 「──遂に見つけたわ、ユーフォルビア」 アナスタシアは一度はその声を無視しました。何故なら、自分が呼ばれているとは夢にも思わなかったからです。 けれど彼女は──百合園の制服を着た、髪の長い少女はアナスタシアの前に回り込んで立ちふさがったのです。 「ユーフォルビア、宮廷魔術師の使命を忘れたの? 一緒に復活した魔王と戦いましょう!!」 目が合いました。彼女は、うつろな目をしていました。 「私は歌巫女のヤリスカ。共に蒼角殿で巫女王にお仕えしていたわね」 「……? 私はそんな名前ではありませんわ」 否定するアナスタシアに、ヤリスカと名乗った少女はすいっと近づきます。 「私も最初はそう思ったわ。信じられないのも無理ないわ。 でも今私たち王国の戦乱を駆け抜けた者は確実に共鳴して──『前世の記憶』と力に目覚めているのよ。私はあなたと同じものを感じるの」 「そんなこと私は感じていませんわ」 「このままじゃ危険なの! 王国の戦乱を駆け抜けた者って言ったでしょう。王国側だけじゃない、魔王軍だって、いえ、魔王の目覚め──魔王軍の復活を感じ取ったからこそ、巫女王や騎士、魔術師らが、魔王に封じられていた記憶を何とか目覚めさせつつあるんだわ」 一歩下がるアナスタシア。身の危険を何となく感じましたが、ヤリスカ(仮)がアナスタシアの腕を掴みました。なお、(仮)なのは、彼女がどこからどう見ても日本人だからです。 その時、毅然とした声が割って入りました。 「やめろ」 ほっとしかけるアナスタシアでしたが──制した方。ヤリスカの脇から現れた、こちらもどこからどう見ても日本人のショートカットの少女も、また変なことを口走りました。 「やめろヤリスカ。彼女はまだ、記憶が完全ではないんだ。もしかしたら僕のせいかも……いや、思い出したら僕を恨むだろうな」 「そんなことないわ。あなたは蒼角殿を守るという、ブレイドの使命を果たしただけ。ユーフォルビアだって最期には許してくれたのでしょう? そもそも、彼女が魔族などにたぶらかされて秘宝を持ち出さなければこんなことには……」 アナスタシアは二人が言い合い、腕を掴む力が緩んだところを振り払い、踵を返して逃げ出しました。 「あっ!」「待て!」 (……何が起こっているのか分かりませんけれど、身の危険を感じますわ!) 走って逃げ出したアナスタシアでしたが、正門の方に行こうとして、再び少年に立ちふさがられました。 しかも今度は見るからに怪しげな、木の杖──100円くらいで買える工作用の木材──を振りかざし、ローブ──ぺらぺらの布を適当に縫い合わせた何か──を着ています。 「見付けたぞ夜の魔術師ユーフォルビア。そなたは巫女王には渡さぬ。そなたの抱える魔術ごと、再び魔王様の、我らが軍門に下って貰おう!」 「な、なんですのあの方たちは……!」 アナスタシアは方向を急転換し、見知らぬ路地へと入っていきました。 待ってユーフォルビア、魔術師を逃がすな、そんな声を背後に鬼ごっこを続け……。 「は、はぁ。こ、ここなら安全ですわ……」 そこは人気のない裏路地でした。彼女は雑居ビルに飛び込んで扉を閉め、鍵をかけました。 「こうなっては仕方ありませんわ。む、村上さんに……」 携帯電話を取り出して、震える指でボタンを押します。 「──もしもし、村上さん? 私ですわ。あの、今突然変な名前で、ユーフォルビアとか呼ばれて……あの、変な人たちに追われて、隠れてますの」 『今どこにいるんですか?』 「分かりませんわ。だってとにかく逃げたかったですし……そもそも初めて来たのに、分かると思いまして?」 「何で偉そうなんですか。いいですか、外に出て建物や、番地の表示を見てください。今から迎えに……」 「──あっ」 『どうしたんですか!?』 「足音が外でしますわ。それにバッテリーが切れそうですわ。後はメールしますわね」 バタバタという足音と、聞き覚えのある声が薄い扉ごしにします。 アナスタシアは携帯を切ると薄暗い中光が漏れないように抱え込むと、息をひそめて暗闇へじりじりと移動しました。 そして──鈍い感触。 「あっ」 アナスタシアの脚は誰かにぶつかりました。 年の頃なら十歳くらいでしょうか。それは長い黒髪の、黒ずくめの少女です。 (……地球ではない、パラミタの住人みたいですけど……どこかで見たかしら……? もしかしたらこの方も被害者なのではないかしら?) 彼女は暗がりで一人うずくまって、細い光を頼りに、一冊の分厚い本をもくもくと読んでいました。 「あの……」 アナスタシアは勇気を出して彼女に話しかけました。 * 結局その日の夕方になるまで、アナスタシアの姿は見当たりませんでした。 「……そうか、それは困った、ね」 宿泊していたホテルのロビーで、生徒と共に琴理の報告を受けた桜井静香(さくらい・しずか)は、フェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)の顔を見上げました。 「僕も探しに行きたいけど、みんなを置いていくわけには……」 百合園を訪れた生徒は他にもいました。校長としては全員の安全を確保する必要があります。 「校長はここでお待ちください」 「うん、ごめんね。……契約者だったら、バッテリーが切れても、パートナーと通話できるんだけどね……。 そうだ、そういえば以前似たような事件があったよね」 「黒史病ですね」 「あの時の原因の女の子……なんだけど。昨日出発前、司書さんから、『今朝からいなくなってる』って報告を受けてたんだ」 「確か、最近は図書室で本を読むか眠るかで、大人しかった……と彼女から聞いています。……この前様子を見に行った時も、いわゆるライトノベルを読んでいたと」 まさか。 今度はフェルナンは、琴理と顔を見合わせました。 「──荷物に紛れて着いてきたり、とか」 静香は頷きました。 「可能性があるよね。僕はここでアナスタシアさんを待ってみて、連絡役をするよ。百合園本校にもこまめに、彼女のことを確認してみる。 村上さんは、協力してくれる生徒と一緒に、アナスタシアさんと黒歴史小説さんを探して。 フェルナンさんは──ごめんね。ヴェネツィアに建築、見に行く予定だったんだよね」 「気になさらないでください。私も被害が広がらないようにお手伝いします。 以前の事件以来、黒歴史、というものに詳しくなったのですが──おそらくですが、作品の登場人物になりきって、無関係な人物を仲間だと想定するタイプの妄想だと思われます」 「となると、『ユーフォルビア』という名前が手がかりになるかもしれませんね。私も会長から連絡があり次第、皆さんにご報告します」 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
こんにちは、お久しぶりです、有沢です。 ▼サンプルアクション ・巫女王をお守りする ・俺は魔王だったかもしれない ・アナスタシアを助ける ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2012年01月02日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2012年01月03日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2012年01月07日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2012年01月23日 |
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