波羅蜜多実業高等学校

　
　空京を離れ葦原島、山の麓の湖畔に小さな町がありました。
　名は「鈴鳴村」といいます。
　霧に包まれた町は周りを小高い丘に囲まれていることもあり、その存在が知られることはありませんでした。
　しかし今日は町を挙げて年に一度の「始蘇(しそ)祭」の日。
　大層賑わった民はこの日だけは快く旅人を迎えています。

　出店もたくさんあります。
　ガラス細工の店、果物売り、飴屋に竹笛屋。
　酒場では酒盛りが始まり、湖での釣り大会もあるようです。

　
　……と、一見和やかな光景に見えるのですが。


「わたくしをどうしようというのですか」
　じとりとした洞窟の中、十字架に磔にされたエンヘドゥ・ニヌア（えんへどぅ・にぬあ）が白装束の男たちを睨みつけます。
「貴様を磔刑に処すのである」
「なにゆえですの」
「貴様ら穢れ多き契約者どもを浄化するのが、我々耶古(やこ)の者の使命なのだ」
「穢れ多き……？」
「そうだ。己の尊厳を捨て去り甘い利ばかりを求める愚か者のことである」
「そんなことはありません！」
「さて、我々は民らに託宣せねばならぬ。行くぞ」
　エンヘドゥの訴えには気も向けず、男たちは三角の白頭巾を頭からかぶると列を成しエンヘドゥの元を後にしました。
「……どういうことですの？」
　囚われの彼女は、暗闇に取り残されてしまいました。


　＊＊＊＊＊＊


「よう、旅の旦那。よく来なすった」
「オヤジ、この辺りで女を見なかったか？　ピンクの髪したやたら目立つ女なんだが」
「……さあな。それより旦那、酒でも一献」
「悪いな。それどころじゃねぇんだ」
　町人の勧めを断り、王　大鋸（わん・だーじゅ）は酒場を後にしました。
(エンヘドゥを見たって情報はこの町で途切れてやがる。絶対ここにいるはずなんだ)

「耶古様じゃ！　耶古様がお見えあそばれた！」
　ふと大鋸の周囲が騒然となりました。
　人々は道端に平伏します。
「何事だ？」
「耶古の会さ」
　大鋸の脇で襤褸に身を包んだ物乞いが吐き捨てるように言いました。
「耶古の会？」
「ある日突然やってきたやつらさ。腐っていた湖の水を蘇らせたり流行り病を収めたり、『奇跡』ってやつを起こしてあがめられてるんだ。この町の連中はやつらの言いなりさ」
「超能力か？」
「知らん。ただいけすかないのは確かだ」
　すると、道の向こうから、
　――しゃん、しゃん
　と鈴の音が聞こえてきました。
「悪いことは言わない。早くこの場から離れるんだな。やつらに目を付けられると厄介だぞ」
「……すまんな」

　段々と白装束に三角頭巾の集団が近づいてきます。
　彼らに担がれている神輿には少女が乗っていました。
　目は死んだ魚のように虚ろとなっています。
「あの女が耶古か……？」
　大鋸は小路に身を潜めつつこの町でひときわ異質な建物に目を遣りました。
　5階建ての鉄筋コンクリートのビル。
　その屋上には大きな天守。
「きなくせぇな。しかし……」
　大鋸は頭に手をやり考えます。
「ちぃっと一人じゃ面倒だな」

　すなわち、エンヘドゥを救うべくあなたたちが鈴鳴村に呼ばれたのです。

こんにちは、こんばんは。
はじめましての方ははじめまして。
マリツキです。


鈴鳴村

湖畔の町、鈴鳴村には疫病で住民の4割を失うという少々悲しい歴史がありました。
元々漁業で生計を立てていた人々ですが、水源の水が腐り魚も取れず、果ては飲用水にまで影響したと見られています。
しかし、数年前に現れた「耶古の会」の起こした奇跡によって救われたのです。
以来、「耶古の会」に全幅の信頼を置いています。
まずは町で聞き込みをしたいところですが、「耶古の会」に関する情報はなかなか一筋縄ではいかないでしょう。


耶古の会

ところが「耶古の会」にはよくない噂が数々立っています。
契約者差別主義であることは有名ですが、マインドコントロールや政治犯罪を繰り返しているらしいのです。
町民の中にも快く思っていない人はいますが、エンヘドゥ同様洞窟の牢に監禁されてしまうので口を噤んでいます。
今回の拉致は「暗愚な地球人・パラミタ人に制裁を加える」のが目的のようです。
差別主義者であるがゆえに、プレイヤーへの攻撃は躊躇ありません。
ショットガンやマシンガン、果てにロケットランチャーを持ち出してくるでしょう。
発見するやいなや発砲してくるので十分注意してください。
もちろんですが、町民に悪意はありませんので、戦闘が始まったら避難させるのを忘れずに。


始蘇祭

耶古の降臨を祝う祭です。
耶古を見られる唯一の機会なので町全体が活気付いています。
「耶古の会」に発見されるのは好ましくありませんが、せっかくのお祭を楽しむのも醍醐味ですよね。
上記の出店のほか色々なお店があるので祭の雰囲気を味わってください。
「魚釣り大会」に参加する方は、
あいさつ掲示板で出たさいころの目の合計を釣果とします。
数を釣ったもの勝ちなので、参加してみてください。


洞窟

エンヘドゥの捕らえられている場所ですが、位置は特定できていません。
エンヘドゥのほかにも檻に入っている者はいます。
もしかしたらプレイヤーの大切な人も自由を奪われているかもしれません。
洞窟の奥底には地底湖が広がっており外の湖と繋がっているようです。
また、警備している「耶古の会」の者もいます。
鳴子などの原始的な罠が張り巡らされているので、探索には細心の注意を払ってください。

・人命救助

・情報探索

・潜入捜査

・祭だ！

・避難誘導