ツァンダ東部の森には魔女が住んでいます。
彼女の名前はルーノ。子供のような容姿と発言が目立つ女の子です。
ルーノには親友が一人いました。クウという名の機晶姫です。
二人は一時期仲違いをしていたのですが、今では寝食を共にするほどの仲良しです。
そんな彼女たちの元に一人の男性が訪ねてきました。
彼の名前は久瀬 稲荷(くぜ いなり)。蒼空学園分校に勤めている教員です。
久瀬はルーノたちと縁が深く、今回のように訪ねてくることがしばしばありました。
しかし今日はいつもと少し様子が違っていました。
「出る……らしいのです」
そう告げる久瀬の青ざめた顔を見つめながらルーノが訊ねます。
「ナニがでるんだ?」
「幽霊です」
「それはおもしろそうだな!」
ルーノは好奇心が刺激されたのか嬉しそうに目を輝かせています。
久瀬はおもしろくありませんよ、と抗議しますがルーノの耳には入っていないようです。
「それでお願いがあるのです。幽霊の正体を突き止めてもらえませんか? 私はちょっと……」
久瀬は言いよどみました。
ですが意を決したように続けます。
「今度、宿直当番なので出来ればその日に合わせて調査してもらいたいのです」
ルーノが小悪魔的な笑みを浮かべました。
「いなりは怖いんだな!」
「こ、怖いわけではありませんよ!? 幽霊なんて存在するはずがありませんからね」
「無理すんな」
「してませんよ。それで引き受けてくれますか?」
「任せろ! くーちゃんも手伝うよな?」
「ルーが手伝うならトウゼン」
「……助かります」
かくしてルーノとクウの二人は久瀬のお願いを聞くことにしました。
「私たちだけで行くのもつまらないよな」
「ルーの言うことも一理ある。ダレか呼ぶ?」
「そうしよう! せっかくだから皆で楽しもう」
「久瀬も仲間ハズレにしてはダメ」
「おー!」
ルーノがやる気になっている隣でクウは考えました。
(久瀬にはお世話になってるし、いつものお礼にユウレイに慣れてもらってニガテを克服させてあげよう)
こうして二人は夜の青空学園分校に出向くことになりました。
果たして、久瀬は平穏無事に宿直を終えることができるのでしょうか。