波羅蜜多実業高等学校

「ん〜これも違うですぅ〜」

　エリザベート・ワルプルギス（えりざべーと・わるぷるぎす）はそう言って手に持った本を無造作に放り投げます。


　ここはイルミンスール魔法学校、大図書館。
　エリザベートはアーデルハイト・ワルプルギス（あーでるはいと・わるぷるぎす）、ミーミル・ワルプルギス（みーみる・わるぷるぎす）と共に魔術の研究に使う資料を探していました。

　しかしお目当てのものは中々見つからず、徐々にイライラを募らせるエリザベート。


「ん〜？」

　
　エリザベートは一際目立つ色彩の本を見つけ、手に取ります。
　派手な色をした表紙には『魔王と異世界の勇者達』というタイトルが。
　
「何で魔法薬の棚にこんなものがあるですぅ？」
「お母さん、何か見つかったんですか？」

　近くの棚を調べていたミーミルがエリザベートの持つ本を覗き込みます。
　エリザベートが表紙を開くと、最初のページにはこのような文章が書かれていました。



　　世界は魔に支配されていた。

　　世界中に蔓延る魔物達。そしてそれらを統べる魔王。

　　人々は魔物に怯える日々を送っていた。

　　ある日、人々に希望をもたらす者が現れる。

　　異世界から来たというその少年は、人々を襲う魔物を次々と打ち倒していき、彼の活躍は絶望の淵にあった人間達を奮い立たせる。

　　そして人々の期待を背負った少年は魔の島にて、死闘の末、ついに魔王を封印したのだった。



　　魔王を封印した少年は、その後すぐに姿を消した。

　　突然現れ、そして魔王を倒し行方を眩ました少年を、人々は勇者と讃え後世に語り継いでいった。




　　それから丁度100年が経った。

　　魔王の封印は時間と共に弱まり、共に封印されていた四天王達は既に封印を破り、現世へと姿を現していた。

　　そして今、残る魔王の封印も既に限界を迎えていたのだった……。



「……何ですぅ？　この幼稚な本は」
「そうですか？　私はおもしろいと思うけどな〜♪」

　苦笑いを浮かべるエリザベートに対し、ミーミルはすごく楽しそう。どうやらこの本が気に入った様子です。

「気に入ったんなら読めばいいですぅ。どうせあなたじゃ資料探しは手伝えないですしぃ」
　
　そう言って本をミーミルに渡し、エリザベートは資料探しを再開します。

　ミーミルは喜んで本を受け取ると、椅子に座って読み始めました。
　彼女がニコニコしながら表紙を開いたときです。


「……え？　きゃあああっ！！」


　悲鳴に驚いたエリザベートが振り向くと、そこには本に吸い込まれるミーミルの姿が。
　ミーミルを吸い込んだ本は地面に落ち、慌てて駆け寄ったエリザベートがそれを拾い上げます。

「一体何事じゃ？！」

　悲鳴を聞いたアーデルハイトも駆けつけます。

「ミーミルが本に吸い込まれたですぅ！」

　急いで本を調べだすエリザベート。
　その本の中身は、殆どが白紙のままでした。先程エリザベート達が読んだページから暫く白紙を挟んで、このような文章が書かれています。



　　　＜地の四天王：ガイア・セルペンテ＞

　　地を司るガイアは、人間の女性の姿をしていた。
　　ただし、その下半身は巨大な蛇。ラミアと呼ばれる種族である、
　　彼女は近場の村や町を襲い人間を連れ去ると、宝石の眠る鉱山で休み無く働かせていた。
　　「さあ、私のために宝石を集めてくるのです」


　　　　　〜暫く白紙〜


　　　＜風の四天王：リトルシルフ＞

　　風を司るリトルシルフは、小さな少年の姿をしていた。
　　その背中には薄い四枚の羽が。彼は魔王の眠る『魔の島』の周囲に竜巻を発生させ、人間達が立ち入れないようにしていた。
　　「退屈だなぁ……。鬼ごっことかかくれんぼやりたいや。誰か遊びに来てくれないかな」
　　シルフのいる遺跡の内部は迷路のようになっており、かくれんぼ等しようものなら普通の人間ではまず間違いなく迷うだろう。


　　　　　〜暫く白紙〜


　　　＜火の四天王：イグニス・ラガルティッハ＞

　　火を司るイグニスは、大きなトカゲのような姿をしていた。
　　２ｍを超える巨体に体中に生えている赤い鱗。その姿から、人々からは『炎竜』と呼ばれ恐れられていた。
　　彼は配下の竜を従え、人間の集落を次々と武力で制圧していた。逆らう者は皆殺しである。
　　彼の支配下にある村では、中央広場にて、今まさに処刑が行われようとしていた。


　　　　　〜暫く白紙〜


　　　＜水の四天王：ヴァセ＞

　　水を司るヴァセは、小さな老婆の姿をしていた。
　　ヴァセは『魔の島』にて、魔王の復活を早めるべく奔走していた。
　　勇者により魔王の肉体は破壊され、魔王の魂だけが、今ヴァセの目の前に祀られている紫色の宝玉の中に封印されている。
　　「ヒッヒッヒ。魔王様、既に依り代の準備は整っておりますぞ。さあ、早く封印を破り現世へと君臨なさいませっ！！」


　　　　　〜暫く白紙〜



　そしてエリザベートは、この空白だらけの本の最後のページに、後書きを見つけました。


　　　この本を気に入ってくれた誰か、どうかこの物語を完成させてくれ。

　　　　　　　わしはもう長くない。この本に、『気に入ってくれた者を取り込む魔法』をかけておく。

　　　　　　　物語が完成すれば、君達は外に出られる。その時、そこには読む人全てを楽しませるような、素晴らしい作品が誕生しているだろう。


「勝手なこと書きやがって何なんですぅ？！　この作者は！」
「どうやら、その本を書いてる途中に亡くなったようじゃのう。こっちの本には余命後数ヶ月と書いておるわ」

　ふと、本のページの一部が淡く光り輝いていることに気付いたエリザベートは、そのページを開きます。
　先程まで白紙だったそこには、次のような文章が書かれていました。


　　異世界の姫、ミーミル・ワルプルギスは、肉体を失った魔王の依り代として、水の四天王ヴァセに捕らわれていた。
　　「うぅぅ……お母さん……」


「これは……まずい事になっとるのう……」
　
　アーデルハイトの呟きに、エリザベートは一つ大きな溜息をつくと、勢いよく立ち上がります。

「お、おい、どこにいくんじゃ？」
「人手を集めてくるに決まってるですぅ！！　まったく、ミーミルが帰ったらあんな本薪と一緒に暖炉にくべてやるですぅ〜！　あとミーミルは姫じゃないですぅ！」

　足音荒く図書館を出て行こうとするエリザベートに、アーデルハイトが胸を張って宣言します。

「こんな事もあろうかと、密かに色んな学校の生徒の連絡先を調べておいたのじゃ！！」

「……相変わらず超ババ様は準備が良いですねぇ」

「誰が超ババ様じゃ！！　まあよい。とにかく人を集めるぞ」



　こうしてアーデルハイトにより、学校を問わず沢山の生徒が集められることになりました。

こんにちは、ＲＥＤです。

今回シナリオガイドがかなり長くなってしまいましたが、
要約すると『四天王と魔王を倒して、ミーミル姫（？）を助け出せ！』ということになります。

プレイヤーの皆さんは四天王を倒したり、ミーミルを助けに向かったり、お好きな行動を取ってください！


●ガイドの通りこのシナリオは『厨二要素』を含んでおります。
　アクションにて、ＰＣに言わせたい呪文、詠唱、決め台詞等ありましたら書いて頂ければと思います。
　
　その際、このシナリオに限り『スキル名を変更する』ことを可能とします。効果は変わらず元のスキルのままとなります。
　フォーマット：使用するスキル名→変更後の必殺技名
　（例）百獣拳→爆裂飛散拳
　（効果は百獣拳のまま）

　但し、『他のアニメ、ゲームのセリフをそのまま持ってくる』のはご遠慮ください。
　そのまま持ってきた技名の場合、必殺技自体を不採用とさせて頂きますのでご注意ください。


●エリザベートとアーデルハイトは本の中には行きません。図書館に残って、無関係な者が本に触れないよう見張っています。

・四天王（火）を倒す

・魔王を倒す