「一緒に、グロッグ司祭の秘密を暴いてください!」
数日前、グランツ教と空京警察に追われていたマリア・ラヴェルはついに決意し、助けてくれた契約者達にそう頼んだのでした。
そして、数日たった今、マリアは協力を頼んだ契約者達と共に訳あってこの町、サパンド町に来ていました。
それは、ヒラニプラ地方に存在する、人口6000人あまりが所狭しと暮らしている至って普通の町です。
「居ましたわよ、マリア」
「……グロッグ司祭」
そんなサパンド町の入り口で、マリアのパートナー(地球人)のローズフランは指して言います。
実はつい最近、マリア達は「まだ人狼伝説の指輪は存在し、司祭は次にそれを狙っている」という情報を得ていました。
そのために様子をうかがっていたのですが、どうやら見事にアーベント・グロッグ司祭は姿を現したのでした。
「……嫌な予感がしますわ」
不穏な空気を感じ取ったのか、違和感を感じたのか、ローズフランは眉をひそめます。
「どうしたの?」
マリアが聞くと、ローズフランは再び指を指します。
そこには見たことのある人達が居ました。以前、グリーンパークで戦った男達です。
「あの人達また……グロッグ司祭の護衛……?」
「失礼ですが、あなたの頭はわたがしですの?」
ローズフランはため息をつきました。
よく見ればその男達以外にも、町中至る所に住民では無いあきらかに武装をした人達がまばらに立っているようです。
「おそらくこれは罠ですわ。あのバカ司祭、うまいこと指輪とあなたを同時に得るつもりですわ!」
「仕方ないです……行きましょうローズ!」
銃を構えて走り出そうとするマリアの裾をローズフランは思いっきり引っ張りました。
マリアは前のめりになってこけそうになりましたが、どうにか体制を整えて頬を膨らませてローズフランを睨み付けました。
「むっ、なんで止めるんですか!」
ローズフランはそんなマリアに小さくため息をつきました。
「前より積極的なのはいいのですけれど。根本的にあなたの頭は座礁してるようですわね……このまま行っても捕まるだけですわ……」
そう言いながら、ローズフランは何か作戦を立てようと町の奧を見据えるのでした。