シャンバラ大荒野の都市、キマク。
この街は先日の戦闘でエリュシオン帝国に占領されました。
しかし、パラ実はエリュシオン国立校となったため、
一見これまでとは何も変わらないように見えました。
しかし。
「どけーっ、風紀委員様のお通りだーっ!!」
恐竜に乗った騎士がオアシスの大路を練り歩きます。
キマクはエリュシオンの恐竜騎士団によって統治されているのです。
恐竜騎士団はパラ実校長石原肥満からパラ実風紀委員会の地位を得て、
キマクや荒野の治安維持に乗り出しました。
風紀委員会は生徒会とは指揮系統を別にする組織であり、
倒されない限りその地位は保障されているというものでした。
風紀委員は暴虐の限りを尽くしていました。
『貴様あッ! 高校生の分際でタバコを吸ってたな!』
「テメエも高校生なのに恐竜乗るんじゃねえよっ!」
『ほう? 逆らうのか……』
「や、やめろっ!」
モヒカンはティラノサウウスに咥えられました。
風紀委員は不良行為を行った生徒を次々に連行したのです。
■
キマク北東、極光の谷。
『化石を見つけた奴には食料をやる。
それまでは何も食わずに働け!』
ここでは風紀委員会よって捕まったパラ実生たちが
強制発掘をさせられていました。
「何でこんな事させられるんじゃあっ!」
「発掘された化石を復活させる力が、
風紀委員長の選帝神バージェスにはあるらしいぜ」
「それに奴らオーロラのように輝く“極光の琥珀”を探し……ぐはあっ!」
噂話をしていたリーゼントがトリケラトプスにつき刺されました。
『黙って働くことだな。バージェス様のために!』
苛烈な強制労働の中で、風紀委員会への反乱と極光の琥珀を持って、
一番近いイルミンスール魔法学校へ逃走する計画が立てられ始めていました。
この実態は空京でも報じられ、
パラ実生を助けるために密かにキマク入りする、シャンバラの契約者も現れたのです。
■
キマク、風紀委員会本部。
風紀委員長の選帝神バージェスは部下の報告を受けていました。
「次の“風紀委員昇格試験”はどうなっている?」
「はい。明日には行われます。
しかし、愚かな事……試験に挑んでも……」
キマクの闘技場で行われる試験は、恐竜との一対一の対決です。
勝てば風紀委員の仲間入りが出来ますが、負ければそのまま餌にされるのです。
「恐竜を倒せるぐらいでなければ風紀委員、
いや恐竜騎士団に入れることなど出来んからのう。
それと“極光の琥珀”は見つかったか?」
「……未だに」
「早く見つけろ。
琥珀からヤツを目覚めさせない限り、パラ実の完全支配は難しい。
いいか、くれぐれもパラ実生の実力を侮るな」
「はっ!」
(だが、琥珀を手に入れればパラ実だけではない。
我はパラミタの支配者にすらなれる)
バージェスは野心を秘めた笑みを浮かべたのです。