波羅蜜多実業高等学校

　――シャンバラ教導団兵器施設。

　辺り一帯に爆音が轟くと同時に、大地を揺るがす激震が走りました。
　施設の一部から烈火の如く火の手が上がり、黒煙がもうもうと立ち込めます。

「火の手の回りが早すぎる！　この熱で機晶石が連鎖爆発しているのかも知れません！　消火班、直ちに消火に当たってください！」
「待って！　なななセンサーにビビッと来たよ！　この爆発を引き起こした敵がこっちにいるよ！！」
（「なんて便利なアホ毛なんだ！　これが宇宙意思なのか！？」）

　当直の小暮　秀幸（こぐれ・ひでゆき）がいち早く異変に気付くと、その場に駆け付けた教導団員に的確に指示を出し、延焼を食い止めようとします。
　その傍らでは、同じく当直だった金元　ななな（かねもと・ななな）が何かに気付いたようで、頻りにアホ毛を四方八方に向けています。すると、アホ毛が一定の方向を指すようになりました。
　なななのアホ毛は、彼女の故郷であるＭ７６星雲からの通信を受け取るアンテナになっており、常に宇宙意思を受け取っているとなななは公言しています。そのアホ毛がこの騒ぎの犯人を突き止めたことに小暮は内心舌を巻きました。

　真偽はともかく、なななの誘導の元、火の手をかいくぐって向かった先には、真新しい鋼竜と焔虎が数機ずつ置かれていました。
　しかし、無人であるはずのそれには火が入り、今にも動き出そうとしていたのです！

「こんな旧式しか残っていないとは……次世代機を期待していましたが、ここは外れでしたね。まぁ、戦力として無いよりはマシですから頂いていきましょうか」
「させないよ！」

　なななは鋼竜の１機に乗り込もうとする黒い影目掛けてサイコキネシスを使用し、コインを指弾のように撃ち込みます。
　その影は振り返ると、コインを片手であっさりと受け止めました。

「漆黒のパワードスーツ！？」
「なかなか手荒な真似をするお嬢さんだ。その思い切りは嫌いではありませんけどね」
「金元少尉！！」

　その影は、漆黒に彩られたパワードスーツを纏った優男でした。嫌な予感を覚えた小暮は、咄嗟にリベットガンを抜いてパワードスーツの優男に撃っていました。彼は何かをしようとしていたらしく、パワードスーツの優男はリベットをパワードスーツの腕で弾きながらほくそ笑むとそのまま鋼竜に乗り込みました。
　同時に他の鋼竜と焔虎も動き出し、施設の壁を破って黒煙の中に消えていきました。



　――シャンバラ教導団校長室。

　シャンバラ国軍総司令の金　鋭峰（じん・るいふぉん）と、ニルヴァーナ探索隊の隊長ヘクトルは、小暮となななからの被害報告書を見ていました。

「敵の狙いは国軍のイコンとパワードスーツのようだな」
「今まで狙われている施設から見て、そう捉えて間違いないです。また敵の活動は、ニルヴァーナ探索隊が結成された前後から活発化しています。長曽禰少佐や聆珈大尉の定期連絡でも、ブライドオブシリーズの探索を邪魔する敵の存在が確認されています。敵の目的は……」
「月だな。イコンやパワードスーツは月面での活動用に数を揃えている、といったところだろう。今までの遣り口から見ても、それなりの組織のようだ」
「地球系の鏖殺寺院、ですか。教導団の施設を襲撃できる力を持つのは、鏖殺寺院の残党と考えるべきでしょう」
「私もその可能性が高いと考えている。十人評議会は解散し、その下部組織も大半は壊滅したが、まだ生き残りが活動しており、かつての鏖殺寺院のメンバーをスカウトしている、という情報もある」
「鏖殺寺院の残党であるなら尚の事、素性や出方を調べる必要がありますね。リスクはありますが、プラヴァーを囮として使用したいと考えています」
「許可する。プラヴァーは私の方で手配しよう。必ず守りきり、敵の素性を掴むのだ！」

　斯くして、ニルヴァーナ探索隊の隊長ヘクトルが自ら指揮を執り、ヒラニプラからシャンバラ大荒野を経てツァンダまでプラヴァー数機が輸送されることになりました。
　シャンバラ大荒野を通るため、途中、蛮族の襲撃が予想されます。
　そのため、シャンバラ教導団の団員だけではなく、各校にも護衛の依頼が通達されました。



「僕を誘き寄せる罠、ですか。良いでしょう、敢えてその罠に嵌ってあげますよ。ただ、虎穴に入らずんば虎子を得ず、という諺の通り、その罠を内側から打ち破りそちらの思惑を粉砕してあげましょう。コントラクターの中からスカウトする良い機会でもありますしね」

　プラヴァー輸送の情報は、パワードスーツの優男も察知していました。
　彼は罠と知りつつプラヴァーを強奪する気満々でいました。

　ゲームマスターの野田内　廻です。
　今回もよろしくお願いいたします。

　このシナリオは、輸送されるプラヴァーを守りつつ、シャンバラ教導団の施設を襲撃している謎の敵の素性を暴くのが目的です。
　全学校に依頼を出していますので、どの学校の生徒も参加できます。

　プラヴァーは３～４機が輸送トレーラー（機銃付き）に乗せられて、ヒラニプラを立ち、シャンバラ大荒野を通過して、ツァンダへと運ばれます。
　プラヴァーの数は参加人数によって変動します。MCが30名以下であれば３機、それ以上であれば４機になります。

　輸送トレーラーの運転手は教導団員とロイヤルガードが就くことができます。あいさつ掲示板かアクション相談掲示板で宣言されると良いでしょう。
　また、輸送トレーラーの荷台に乗れるのも教導団員とロイヤルガードのみとなります。
　それ以外の学校の生徒は、小型飛空艇や空飛ぶ箒、軍用バイクなどの乗り物で、輸送トレーラーの周りを護衛する形になります。乗り物を所有していない場合、教導団より軍用バイクが貸し出されます。

　ポイントはシャンバラ大荒野です。
　ここはパラ実生を名乗る蛮族がおり、世紀末ファッションで血煙爪やボウガンを片手に、スパイクバイクで輸送トレーラーを襲撃してくる可能性があります。
　また、ここ最近シャンバラ教導団の施設を襲撃してイコンやパワードスーツを強奪している、地球系鏖殺寺院の一派と思われる、パワードスーツの優男の襲撃も予想されます。
　パワードスーツの優男は、元鏖殺寺院のメンバーをスカウトしているらしいので、鏖殺寺院側に付きたい場合、売り込むチャンスかも知れません。

　ＮＰＣはヘクトル（龍騎士）と小暮秀幸（アーティフィサー）、金元ななな（サイオニック）が同行する予定です。

　なお、プラヴァーが強奪された場合、【ニルヴァーナへの道】のシナリオに影響しますので、ご注意下さい。

※輸送トレーラーとプラヴァーについて
　プラヴァーは輸送トレーラー１台につき１機ずつ運搬されます。
　プラヴァーが４機の場合、輸送トレーラーも４台になります。
　また、輸送しているプラヴァーを起動させることはできますが、基本的に乗れるのは教導団員になります。


■2011年11月24日：追記
「※輸送トレーラーとプラヴァーについて」の説明を追記しました。

・輸送トレーラーを守る！

・輸送トレーラーの運転手を務める

・プラヴァーを奪取する！