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イルミンスールの希望――明日に羽ばたく者達――

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シナリオガイド【イコン参加可】

舞台を無限に広げて、彼らの物語は続いていく。
シナリオ名:イルミンスールの希望――明日に羽ばたく者達―― / 担当マスター: 猫宮烈



●イルミンスール魔法学校

「リンネ、ここに居たんだな」
 イルミンスール魔法学校、その校門とでも呼ぶべき場所に立ち、目下に広がる景色を眺めていたリンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)が、背後から声をかけてきたモップス・ベアー(もっぷす・べあー)に振り返りました。

「うん。……色々、あったよね」
 その、あまりにも簡略化された言葉に、モップスは何かを言うでもなくしかしその場を立ち去ることもせず、リンネの一歩後ろまで歩み寄ると同じように視線を広大なイルミンスールの森へと向けました。

 ――自らの魔法の力を試したくて、魔法学校の門をくぐったあの日。
 あの時描いていた夢は、今もちゃんと胸に残っているだろうか。今の自分は夢に、どれだけ近付いているのか――。

 声なき声をモップスが感じた所で、前方からリンネの声が聞こえて来ました。
「まだまだ、私はやっとスタートラインに立ったに過ぎないのかもね。
 五年……だっけ。長いよね。その間何をしてきたんだろうって考えると、頭を抱えてしゃがみ込みたくなっちゃうけど」
 弱気とも取れる発言に、モップスが何か言葉をかけようとしますが、振り返ったリンネの顔を見て思い留まります。その顔はどこか、スッキリとしていました。
「でも、これからなんだ。パラミタだけじゃない、他の世界にも行くことになった今これから、やらなくちゃいけないことはたくさんあるんだ」
「……そう、だな。こんなことを言うのはボクの柄じゃないけど、やることはたくさんあるんだな」
「あはは、ホント、モップスらしくない。
 でも、いいんじゃないかな。私、キライじゃないよ、今のモップス」
「……照れくさいんだな。ボクはもう行くんだな」
 プイ、と背を向けて歩き出したモップスに笑いながら、リンネがモップスの背中を追って歩き出しました――。


●校長室

「……やっぱり、帰ってしまうんですかぁ?」
 そう口にしたエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)へ、ミーナコロンがこくり、と首を縦に振りました。
「この時代での僕たちの仕事は、概ね引き継ぎが終わったから。
 “回廊”の管理はエリザベートさんが出来るようになった。イルミンスールが枯れる運命が完全に無くなったわけじゃないけど、エリザベートさんとアーデルハイトさん、契約者の皆さんの力で回避できる可能性を手に入れられた。
 ……今度は僕たちが、僕たちの時代で頑張る番だから」
 うんうん、と頷くコロン、そしてミーナを見て、アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)が心配、とも取れる言葉を口にします。
「本当に、お前たちの時代に我々が向かうことは、出来ぬのか?」
「……本当はね、出来ないわけじゃないと思うんだ。ううん、多分皆さんなら出来ると思う。
 だからこそ、僕は皆さんに来てほしくないんだ。これからたくさんの未来を守っていかなくちゃいけない皆さんの、これ以上の負担になりたくないから。
 ……今更何を言っているんだ、って言われると思うけど、ね」
「そうか。……別れは皆に、伝えぬのか?」
「皆さんの言葉を聞いたら、帰れなくなっちゃうから。……だから、僕たちの我儘なのは十分理解しているけど、でも、お願いします」
「お願いします」
 ぺこり、と頭を下げるミーナとコロンに対し、なおも言葉をかけようとしたアーデルハイトを制するように、エリザベートが椅子から立ち上がります。
「分かりましたぁ。……でもぉ、もしいつか私たちがあなたたちの所に行く時が来たら、その時は笑って出迎えてくださいねぇ?」
「……分かりました。その時は、お待ちしています」

 ――たった一つの約束を交わして。
 ミーナとコロンは、元の世界へと帰っていきました――。

「……さて、どうするつもりじゃ?
 私はお前が、「これからミーナとコロンの所へ行きますよぅ」と言っても驚かんぞ?」
「流石は大ババ様ですぅ。……でも、それは言いませんよぉ。私にも立場がありますからねぇ」
 椅子に腰を下ろしてそう告げたエリザベートに、同じく腰を下ろしたアーデルハイトが感慨深げに言葉を発しました。
「言うようになったな、エリザベート。
 ……なぁ、エリザベート。お前は私と最初に契約を交わした時に、今の自分の姿を想像出来たか?」
「そんなの、出来るわけ無いじゃないですか。大ババ様は出来たんですかぁ?」
 尋ねるエリザベートにアーデルハイトは、ゆっくりと首を横に振って言いました。
「私にも無理じゃった。……何故だろうな、最近、今の自分が本当に自分なのか、と思うことがある」
「言ってることがよく分からないですぅ。今までのことがあるから、今があって未来があるんじゃないですかぁ?」
 間髪入れずに放たれたエリザベートの言葉に、アーデルハイトはハッとした顔になって、それからしばらくの間、笑っていました。


●大図書室

「フィリップさん、何をお読みになっていますの?」
 周りに配慮したルーレン・ザンスカール(るーれん・ざんすかーる)の声に、広げていた書物から顔を上げたフィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)が答えます。
「ちょっと、誰が在籍しているかを見ておこうと思って」
 そう口にしたフィリップが見ていた書物には、イルミンスール魔法学校に在籍している(過去に在籍していた者も含む)生徒の顔写真と名前、出身等が記載されていました。
 古今東西の本を取り揃える大図書室であればこの程度の書物はあって当然でしたが、閲覧できるかはまた別の話です。今回フィリップが書物を見ることが出来たのには、理由がありました。
「あら。もう既に生徒会役員としての意識が芽生えておいでですのね」
 パッ、と笑顔を浮かべるルーレンに、フィリップはハハ、と元気のない声を出して続けます。
「僕に務まるなんて思えないですけど、アーデルハイト様の推薦とあれば受けないわけにもいきませんし。
 それに、リンネさんの『アインスト』よりはこっちの方が合ってると思いますしね」

 フィリップの言葉に出てきた『アインスト』とは、元々は遺跡探索を主とする学校内組織でした。それがリンネに継承され、異種族交流に寄与し、そして今回パラミタ内外(と銘打っているが、おそらく『外』の方が多くなるだろう)の調査を行う組織として再編されたのでした。
 また、ルーレンがフィリップの事を『生徒会役員』と言ったのは、アーデルハイトが「生徒会を作らねばな」と言い出し、メンバーの一員にフィリップを推薦した経緯によるものでした。
 他のメンバーは生徒の自薦及び推薦によって決まる、としており、この時点では会長すら決まっていません。

「大丈夫です。フィリップさんならきっと、務めを果たすことが出来ます」
「はは……ルーレンさんにそこまで言われたとなれば、頑張らないといけませんね。
 ……それにしても、こんなにたくさん在籍していたんですね」
 書物に目を落として、フィリップが意外な顔をして言葉を落とします。おそらく数千、下手すればそれ以上の情報を載せている書物は、かなりの厚さになっていました。
「イルミンスールは自由な校風ですから。一年に数えるほどしか学校に来られない方もいらっしゃいます」
 ルーレンのその口ぶりは今までと変わりないように見えましたが、フィリップには言葉の裏に「そのまま来なくなってしまう生徒も決して少なくない」という別の言葉が隠れているのを見抜いていました。
 理由は様々ですが、それは確かな事実として存在していました。


●イルミンスール北:氷雪の洞穴

「……そうね。最近見なくなったわね、って子は居るわ。誰か、って言われると困っちゃうけど」
「やっぱりそうだよね。ボクの頭の中にも何人か居るんだけど、パッ、とその人の顔が出てくるわけじゃないんだよねー。
 なんかイヤだね、こういうのって」
 ひんやりとした空間の中、カヤノ・アシュリング(かやの・あしゅりんぐ)メイルーンが話をしていました。発端はメイルーンの「そういえば最近見なくなった子が居るよねー」からでした。
(……あたいが顔を出せなくて、いつの間にか疎遠になっちゃったりするのよね。
 心配はしてないけど、やっぱり、気になっちゃうのよね)
 カヤノが頭に、友人、と呼ぶにはより親しい関係にあると思っている者の顔を思い浮かべた所で、洞穴の外からカヤノたちを呼ぶ声が聞こえて来ます。
「カヤノ、居るか? そろそろセイランとケイオースの手伝いに行こうと思うのだが」
 声はサラ・ヴォルテール(さら・う゛ぉるてーる)のものでした。彼女の隣にはセリシア・ウインドリィ(せりしあ・ういんどりぃ)の姿もあります。
「あーうん、分かった。じゃ、行ってくるわね」
「はーい。おみやげよろしくねー」
 分かってるわよ、と答えてカヤノは外に向かって飛び出していきました。合流した3人が向かう先は、イナテミス。
 かつてはほんの小さな町でしたが、精霊と、龍騎士と、そして魔族と交流を結んだ結果大都市と呼んで差し支えない程に発展したそこでは今日、華やかな祝福の儀が開かれようとしていました。


●共存都市イナテミス

「いい天気だな。こんな日は思いっきり、飛び回りたくなるぜ」
 大きく伸びをして、ニーズヘッグが青く染まる空を見上げます。そこまで呟いて、最近は龍の姿になることも少なくなったな、とニーズヘッグは思いました。
「そういやあアイツも、巨大化すること減ったな。はは、これじゃ二人とも何の種族か分からなくなるぜ」
 ニーズヘッグが『アイツ』と呼んだのは、かつてのエリュシオン帝国第五龍騎士団団長、アメイア・アマイアのことです。ニーズヘッグはエリュシオンの世界樹、ユグドラシルに住んでいた龍であり、アメイアはかつて大陸に覇を唱えていた巨人族の生き残りでしたが、この街で自警団として過ごしている間は人の姿を取っているため、今や彼女らはちょっと腕っ節の強いシャンバラ人扱いとなっていたのでした。
「……ま、それはそれで、いいんだけどよ。アイツも何があったか、結婚だなんてな。
 一昔前のオレなら腹抱えて笑い転げてたろうが……ま、長い付き合いってヤツだ。祝福してやっか」
 空から目を外して、ニーズヘッグは最近完成した建物、『エレメント・ナイト・ガーデン』を目指して歩いていきます――。


「凄い人の数ね……それに、みんな楽しそう。
 こんな沢山の笑顔を見るなんて、初めてだわ」
「そうですね、ルピナス……いえ、そうね」
「ふふ。また、敬語になってるわよ、ミーミル」
「うぅ……なかなか慣れないです……」
 賑やかな街並みを並んで歩く、二人の少女。一人はパラミタの『聖少女』、ミーミル・ワルプルギス(みーみる・わるぷるぎす)。もう一人はパラミタとは別世界のやはり『聖少女』、ルピナス・アーノイド
 『天秤世界』の中で出会った二人は、契約者の行動の結果家族として、姉妹として一つの世界に『共存』することになったのでした。
 先程の言葉遣いを望んだのは、ルピナスです。ルピナスの方は馴染んでいるようですが、ミーミルの方は悪戦苦闘しているようでした。


●ザナドゥ:ロンウェル

「ロノウェ様、こちら、確認をお願いしますです」
 副官を務めるヨミから差し出された書類のいくつかにサインをした魔神 ロノウェ(まじん・ろのうぇ)が、一礼して去っていくヨミを見送り、ほぅ、と息を漏らしました。
(やっと、落ち着いてきたわね……。
 不思議なものね。忙しい時は安寧を望むのに、いざ安寧の時が来ると慌ただしかった時が懐かしく思えるなんて)
 ザナドゥは魔神 パイモン(まじん・ぱいもん)の統治の下、一時期の混乱から脱し、安定した時間を過ごし始めていました。魔神 ナベリウス(まじん・なべりうす)魔神 アムドゥスキアス(まじん・あむどぅすきあす)もそれぞれが治める街で、思い思いの時間を過ごしています。
(ふふ……こうして私達は、歴史の一ページに埋もれていくのでしょうね。
 でも、その事を決して悪くない、と思う自分が居る。何故かしら……?)
 しばらくぼんやりと考えて、ロノウェはその理由が『確かに得られたものがあるから』ではないかという結論に辿り着きました。
(さて、と。明日はどんな一日が待っているのかしら?)
 椅子から腰を上げた所で、今自分が抱いた考えがまさに人間の抱くものだということに気付いたロノウェは、お腹を押さえてひどく可笑しそうに笑ったのでした。


 数々の過去を積み重ねて、今がここにあります。
 その先には未来が、手を伸ばせば届く所で待っているのです――。

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮 烈です。
以前に予告していた通り、この『イルミンスールの希望』をもって、猫宮個人のイルミンスール魔法学校のシナリオ運営を終わりにしたいと思います。
まずは皆様、ここまでお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

内容としては、特に事件性のない(……ないよね?)日常シナリオです。
最後は「俺たちの戦いはこれからだ!」となるのか、「二人は幸せなキスをして終了」となるのか、
はたまたどのような終わりとなるのか、楽しみにしたい所です。

それでは、個人としては最後のシナリオ、どうぞよろしくお願いいたします。

▼サンプルアクション

・『アインスト』のメンバーに加わる

・生徒会役員に立候補する/役員に相応しい生徒を推薦する

・イナテミスで式を挙げる/新たな門出を祝福する

・思い出の場所で、これまでと、これからに思いを馳せる

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2014年07月01日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年07月02日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年07月06日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年07月23日


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