葦原明倫館

「行くよマリエル！　ぼやぼやしていると置いていくからね！」
「う、うん……」

　小谷　愛美（こたに・まなみ）のいつもと違う、溌剌とした姉御肌の物言いに、パートナーのマリエル・デカトリース（まりえる・でかとりーす）は困惑気味に応えました。

（どうしてこうなっちゃったんだろう……あの服、早く脱がさないと、マナの暴走が止まらないよ）

　溜息を付くマリエルの視線の先の愛美は、普段着ている蒼空学園の制服ではなく、肌も露わなビキニアーマーを身に付けています。
　ブレスドメイスを腰に下げ、ラウンドシールドを左手に持ったその姿は、歴戦の女戦士や猛々しいアマゾネスの雰囲気すら纏っているかのようです。

（でも、似合っているのが悔しいなぁ）

　ここはツァンダの街中で往来があります。男性達は直視しないものの、ちらちらと覗き見ています。
　しかし、愛美本人は恥ずかしいといったことはないようで、自分の姿を誇らしげに胸を張っています。むしろ後ろにいるマリエルの方が恥ずかしいくらいです。
　足が長くスタイルの良い愛美は、ビキニアーマーも難なく着こなしています。日焼けしていない瑞々しい珠の肌が得も言われぬ色香を醸し出しています。
　「ボンキュッボンな体になりたーい」と普段から公言しているマリエルには眩しく映ります。

　今の愛美は自分が歴戦の女戦士だと思い込んでいるのです。
　原因は愛美が着ているビキニアーマーにあるようです。
　詳しいことはマリエルにも分かりませんが、ビキニアーマーを着た途端、愛美の性格が変わったのですから、着用者の性格を変えてしまう魔法の鎧とみてまず間違いないでしょう。

　事の発端は蒼空学園で開催されたフリーマーケットでした。
　そこで防具や服が売られており、愛美が身に付けているビキニアーマーもその一つでした。
　「これを着たら『運命の人』を悩殺出来るかも」というマリエルの言葉に、愛美が装備した結果でした。
　その他にも、メイド服やセーラー服が売られており、他校生も買っていったことから、着てしまった生徒には同様の効果が現れているかも知れません。

　マリエルが調べたところ、この鎧や服を作ったのは、ツァンダの郊外にある尖塔に住む魔女だといいます。
　マリエルは愛美を元に戻してもらうために、これから尖塔に向かおうとしているのです。
　しかし、郊外に住む魔女は大層偏屈だそうで、尖塔には番犬の代わりにモンスターを手なずけて放し飼いにしているという噂も聞きます。
　愛美は歴戦の女戦士になりきっていますが、実力が伴っているとは限りません。

（他にあの魔法の服を買っちゃった人が居ないかメールで確認しておかないと）

　マリエルは携帯電話を取り出すと、片っ端から友達にメールを送り始めました。

　新しくゲームマスターになりました奏哉（かなや）です。
　皆様のキャラクターと一緒に『蒼空のフロンティア』の世界を紡いでいきたいと思います。
　よろしくお願いいたします。

　「普段と違う性格のキャラクターで冒険する」のが、このシナリオのテーマです。
　学園生活シナリオですが、コミカル要素も入っています。
　蒼空学園のフリマは蒼空学園の生徒だけではなく、他校生も参加できますので、学校を問わず「魔法の服を買ってしまった」、「マリエルから連絡をもらった」といった理由などで参加できます。

　ビキニアーマーを着た愛美が荒々しい姉御肌になってしまったように、この魔法の服や鎧は着用者の性格を「その服装や鎧の職種に準じたもの」に変えてしまう効果があります。
　例えばメイド服や執事服であれば「ご主人様に従順」、メガネ＋セーラー服であれば「物静かな文学少女」、という感じです。
　どのような服を買ってしまい、どんな性格に変わったか、皆さんで設定を考えてアクションに書いて下さい。
　性格に応じて口調なども変わりますので、ＰＣデータと口調が変わることを予めご了承の上参加してください。
　この魔法の服はＭＣ・ＬＣ問わず効果がありますが、愛美とマリエルのようにＭＣかＬＣのどちらかが着てしまい、素面のパートナーがフォローする、という形がいいと思います。

　ただし、魔女に効果を解いてもらった後は回収しますので、アイテムとしては差し上げられません。
　申し訳ございません。

　魔女の住む尖塔には、ジャイアント・スパイダー（巨大蜘蛛）やウォーム（巨大芋虫）、リビングソーン（生きている蔦）といったモンスターが蔓延っています。いずれのモンスターも麻痺毒や酸を使用しますので、見た目の割に一筋縄ではいかないです。

　ちなみに、愛美は歴戦の女戦士になりきっていますが、実力は変わりませんのでご注意下さい。

・ＭＣがメイド服を着てしまった

・ＬＣがセーラー服を着てしまった

・愛美をフォローする