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――ジャンク屋協会からのお報せ――
▼亡霊艇の復活スタッフ募集中!
▼亡霊艇の下に発見された遺跡、調査開始される。
▼D5地区にて、ウル・ジのPV撮影有り。
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▼亡霊艇の復活スタッフ募集中
ヒラニプラ近郊にある広大な廃棄物集積区域、ジャンクヤード。
その中心には古代の大型飛空艇――通称“亡霊艇”が埋もれています。
現在、ジャンクヤードでは亡霊艇を復活させようという人たちによって、
艇の大規模な改修作業と周辺ジャンクの撤去が行われているところです。
ジャンクヤードに拠点を置くジャンク屋協会の人々を中心に多くの人が参加しており、
かつて亡霊艇の中で眠っていた機晶姫や機晶ロボも作業を手伝っています。
しかし、まだまだ人手は足りず、彼らは常にスタッフを募集しています。
最近、この改修作業の様子を撮影したドキュメンタリー番組が放送されました。
その中では――
「マジで、募集してます。バイト代も出ます。
機晶技術者も欲しいけど、それ以外の人も。いや、ほんと大歓迎!
炊事洗濯から始まって事務処理だなんだって……やること、多過ぎ……」
亡霊艇再生チーム雑用係のラット少年がぐったりとした様子で訴えかけていたのでした。
▼遺跡調査
改修作業が行われる際、亡霊艇の最下層部に穴が発見されました。
その穴の先にあったのは、瓦礫に埋もれた空間でした。
瓦礫の撤去を行いながら調べた結果、それは遺跡の一部であることが判明したのです。
「皆さんにお願いしたいのは、この亡霊艇の下に存在している遺跡の探索になります。
遺跡を探索し、“枝”の正体を探るための何かを見付け出していただきたい」
微笑を浮かべたまま、ロン・シェパードが、集まった契約者たちへ言いました。
ロンは亡霊艇の動力部を調査していた調査団の責任者です。
彼らが調べていたのは、動力部に蔓延る“木の枝のようなもの”でした。
それは壁や機材、墜落当時の乗組員などと同化し、
メイン動力の機晶石を取り込んだ状態で、5000年以上の間そこにあったようです。
そして、どうやらこの“枝”は遺跡の深部から伸びているらしいのです。
「この“枝”について分かっていることは、そう多くありません。
しかし、これが艦の墜落や以前の亡霊艇事件の発生と深く関わっている可能性は高い。
何故この艦は墜ちたのか、何故いまになって息を吹き返したのか、
そして、この遺跡と“枝”は一体どういったものなのか――
これらを解き明かすために、遺跡内部の情報が必要なのです。
それに――動力部を同化現象から解放しない限りは飛空艇を飛ばすことは出来ません。
改修作業を行っている方々のためにも、今回の探索で有用な情報を得られることが期待されています」
ロンは眼鏡を指先で軽く押してから、「さて」と一人の男性に手を向けました。
「こちらはニコロ・フランチ。
皆さんのサポートにあたるチームのリーダーです」
「ニコロです。よろしくお願いします」
紹介されたニコロが資料を展開します。
「今回、皆さんにお願いしたいのは、
『遺跡の深部を目指し、“枝”の根本を探ること』
『遺跡にある物を調べ、情報を得ること』
この二点になります。
……つまり、ほとんど何も分かっていないので、何でもいいから見つけてきて欲しい、というのが正直なところです」
ニコロはため息混じりに言ってから、小さく咳払いをし、続けました。
「事前調査の結果、遺跡内は通信が可能であると予測されています。
僕たちは通信で皆さんの探索と調査をサポートさせていただきます。
遺跡は状態が悪く、また、モンスターの出現も考えれますので、十分に気をつけてください」
▼ウル・ジ失踪
ジャンクヤードD5地区。
「ああ!? ウルが居なくなった!?」
「は、はい、トイレに行ってくるって言って……それっきり……。
やっぱり、亡霊艇にはどうしても近づきたく無かったんですね」
撮影スタッフの言葉に、監督が心底から呆れたように嘆息します。
「にしても、だ。……ったく、あいつ自分の立場分かってんのかァ?」
と――
「駄目だな、女ってヤツは。仕事に対する情熱と自覚が足りねぇ」
サングラスを掛けた黒スーツの男が笑いました。
振り向く監督たちの前で、彼は携帯を操作し、それを耳に当て、
「――ランドウです。
逃げましたよ、満足ですか?
――ええ、抜かりはありません。お任せを。
多少、傷物になるかもしれませんが……もう、いいんでしょう?」
そして、男は携帯を切り、後ろに控えていた黒服たちに命じました。
「連れてこい」