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【原色の海】はじめての魔法。

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シナリオガイド

海の怪物VSおとぎ話。魔法は船を降りるまで続くのか?
シナリオ名:【原色の海】はじめての魔法。 / 担当マスター: 有沢楓花

 パラミタ内海の中央部には、“原色の海”(プライマリー・シー)と呼ばれる海域があります。
 無数の青が織りなす海の色からその名を付けられたという美しい場所で、原色の海はどの国にも属していません。長年、三色の旗を掲げる三つの部族が、それぞれの住処を治めてきました。
 赤の旗を掲げ列島に住む、ゆる族を中心とする、ヌイ。
 緑の旗を掲げ海上の森に住む、花妖精と守護天使が代々治めるドリュス。
 青の旗を掲げ海底都市で鯨の女王に従う海の獣人部族アステリア。
 他国との交流も盛んとは言えないその海域でしたが、近年になって、各国の商人たちが効率を求めて移住を始めました。
 三つの部族が治めるほぼ中央の海には、小さな島があったのです。ここに部族長の許可を得て自治都市をつくりあげたのでした。
 自由都市、交易都市とも称されるその都市・ヴォルロスは、現在では原色の海における中立地帯であり、交易拠点ともなっています。

 ──ですが、近年この海域から発する異変──潮位の上昇、魚の怪物の大量発生と移動など──は既にヴァイシャリー近くの沿岸部まで徐々に影響を及ぼしており……、
 この日、異変は決定的な姿となって、契約者たちの前に現れたのです。



 ──原色の海の海底。
 その「オルフェウスの竪琴」と呼ばれる岩は、名の通り、水瓶型の竪琴(リラ)の形をしていました。
「この弦の間を流れる海流の音が、異変を知らせている。以前は族長にしか聞き取れぬほどだったが、今では我々にもはっきりと聞こえる……」
 国軍に所属する、海軍ヴァイシャリー艦隊の一員に、イルカの獣人が告げました。 彼らは共同で、異変が強くなるという海の調査をしに、ここまでやってきたのです。
(俺にはさっぱり分かんねーな、やっぱ海の底にでも住んでねーと分かんないんだろうな……)
 海兵隊の一人セバスティアーノは、水中呼吸の指輪をこすりながら頷きます。
「そうですか。何か気付いた点があれば、何でも教えて欲しいんですが」
「ああ、異変はあっちから来てる。それに何かの群れが……」
 そう彼が言った時、突如、目の前の水が濁りました──血です。
 泡を纏って、体長五メートルはある鮫の怪物が突如現れ、イルカの獣人の腕を食いちぎって、ざあっと通り抜けたのでした。
 セバスティアーノは咽喉を鳴らすと、背負った槍を構えました。同様に海の獣人たちと海軍の兵士たちもまた、それぞれの武器を手に持ちました。


 ──ドリュス族の樹上都市。中央にそびえるオークの大樹の中。
 族長であり樹木の声を聞く巫女でもあるドリュアス・ハマドリュアデスの部屋から出てきたのは、族長補佐を務める守護天使でした。
 硬い表情の彼に、埃と魚の油まみれの平凡な守護天使の青年が駆け寄ってきます。
 今朝から魚の怪物・刃魚の群れが大量に根を齧り始め、守護天使たちはその駆除に当たっていたのです。彼もその一人でした。
「あー、ア……えー……アルコールなど摂取していないだろうな、息子よ」
「取り繕わなくていいです。……それで、どうでしたか? 第一陣は駆除が終わったところです。まだ押し寄せてきてますが……」
「お前も知っているな。族長と大樹の力は、この森と周辺の水域の自然のバランスを保つ力。ここ数年負担は増えていたが、こんなことは初めてだ。
 ドリュアス様は……大樹が怯えている、と仰っていた」
「刃魚にですか?」
 しかし父親は首を振り、固い口調で言います。
「違う。もっと大きな何かに、これから森の結界を強化し、一時的に外界との繋がりを遮断する。お前も手伝え。アル……心得はあるな、息子よ」
「だからいいですって」



 それは日差しの温かな、穏やかな冬の日の午後のことでした。
 ヴォルロスから出発した遊覧船の上に、契約者たちは乗り込んでいました。
 船内では、拍手が沸き起こっています。
 子どもたちが目を輝かせ、両親がそれを優しく見守り、また自身たちも楽しんで……。
「お次は人形劇『ちいさなクラゲ・クライスの冒険』です。ヌイ族特製の精巧な人形による劇をお楽しみください〜!」
 司会役は、着ぐるみ一族・ヌイ族の族長ドン・カバチョの姪であるユルルです。
 といっても彼女はまだ「自分の姿」を決めておらず、今回はカモメの姿だったので、知人でなければ気付かなかったでしょうが……。
 これは、ヌイ族がヴォルロスで始めた観光事業のひとつです。穏やかな沿岸を二、三時間ほど遊覧しながら、中で着ぐるみショーや人形劇を楽しもうという、家族・カップル向けのイベントでした。
 契約者たちもその観客として、そしてアルバイトとして、舞台やバックヤードにいました。

 百合園女学院の生徒会・白百合会の会計である村上 琴理(むらかみ・ことり)も、観客としてその中にいました。以前ヌイ族に貰って、使わないままになっていた観光チケット。
 少し気になることがあって、これを口実に、船に乗ったのです。
 パートナーのフェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)は最近ヴァイシャリーの貴族令嬢と見合いをし、婚約前提で話を進めてます。
 パートナーだというのに、多忙にかまけて話ができていなかったので、一度きちんと会話をしたかったのでした。だというのに、フェルナンとは商売の話ばかりになってしまっています。
「ええ、そうですよ。以前の繋がりで、シャントルイユ商会からヴァイシャリー・グラスを食器として使って頂いてます。それから布地も、あの調度品もそうですね」
 彼とは数年来の付き合いですから、わざと話題にしないことは分かりました。多分、それが様々な思いやりのためであろうことも。
 いつも通り、普段通りの微笑。それは、琴理に対してもままありましたが、特別気を遣っているときには、その“さりげなさ”が完璧になるのです。
 琴理は決意して真剣な顔で、彼に言いました。
「少し、外に出ない? フェルナン。聞いておきたいことがあるのよ」
 人形劇が始まる前にと、二人はデッキに移動しました。冬の冷たい空気に頬を引き締められたように、琴理は手すりに両手をかけます。
「あの……ジェラルディ家とのお見合い、上手くいってるんでしょう? 婚約、するの?」
「ええ。あちらが非常に乗り気で……今は、正式な婚約に向けて準備をしているところです。婚約指輪を作る職人を探しています」
 淀みなく答えたフェルナンのその笑顔に、琴理は眉を潜めました。
「いい、正直に答えて。それは、フェルナン自身が?」
「言わなくてはいけませんか?」
 琴理は真っ直ぐにパートナーを見据えました。
「それを聞きに、ここに来たのよ。私と契約したのは政治的な思想の一致、それも勿論知ってる。私よりなにより実家と、そして育ったヴァイシャリーが大事なことも。そのための契約。実家で。
 だけど、それは、……私もフェルナンも、実家に煩わされることも、多くて。
 私が契約して、貴方に本当にあげたかったのは、いつでも寝転んで、いつでもお茶を飲んで、いつでも海の絵の描ける小さなお屋敷を──そんな生活を時々はできる、『自由』だった。
 ……私は、親友だと思ってる。貴方もそうだって思ってる。私が結婚という幸せの邪魔になるなら、もう関わらない。でも、そうでないなら……」
 フェルナンは長い息を吐くと、こう言いました。
「──父が、父の執事に探させて。ですが、結婚するからには……失礼な言い方ですが……愛します。体が弱く大変内気な方ですから、人並みに愛するように……少なくとも、そう振る舞う自信があります。
 といっても琴理さんまで政略結婚をする必要はない──いや。しないで欲しい。気になっている人がいるんでしょう?」
 彼は琴理に笑いかけると、言葉を続けました。
「社交も無理はさせませんし、そのように言われています。……彼女の父親、娘を溺愛しているんですよ。
 だた……彼女には、俺の意志とは全く関係ないところで、気にかかるところがあって……先日、屋敷にいらした時も……」
 そう、言いかけた時でした。
 フェルナンは目を見張り、声をあげました。水平線に浮かぶ黒い塊を見付けたのです。
「──あれは──!」



 船員が双眼鏡で調べたところ、それはボロボロの船、死者を満載した幽霊船の一団であることが分かりました。
 幸い、あちらはこの船には気付いていないようです。
 ヴォルロスにいたヴァイシャリー海軍の提督・フランセット・ドゥラクロワ(ふらんせっと・どぅらくろわ)との連絡はすぐに付きました。
「分った、何とかする。あちらが気付く前に、なるべく静かに航行して港に帰ってくれ。
 それから、くれぐれもパニックは起させないで欲しい。これから日も暮れる上、最近海の怪物が多い。脱出するための小舟が転覆したりこの冬の海に飛び込んで、怪我で済むとは限らないからな」
 フランセットは部下を集めてすぐに対処すると約束しました。
 ですが、パニックを起こさせないようにとはどうすればいいのでしょうか。
 船長室に集まった船長をはじめとしたスタッフや一部の契約者は考えていましたが、
「簡単ですわ」
 沈黙を破ったのは、百合園女学院の生徒会長・アナスタシア・ヤグディン(あなすたしあ・やぐでぃん)です。
 彼女といくらかの百合園女学院の生徒たちは、観光とヌイ族との親善を兼ねて船に乗っていたのです。
「パニックを起こさせない、つまりパニックの原因に気付かなければいいのですわ。
 ──つまり、私たちでイベントを盛り上げれば誰もそれ以外に興味は向きませんわね。さっきお手洗い休憩もあったことですし?」
「それはそうだが……これから戦闘が始まるんだろう? 避けて通るとはいえ、限界がある。あの幽霊船はヴォルロスに向かっているようだからな」
「少々手荒ですが、何となれば魔法で眠っていただくこともできなくはありませんが……もしもの時の避難に時間がかかりますよね」
 琴理は言いにくそうに提案しました。
 ですが、アナスタシアは何故だか得意げに指を振りました。
「魔法とは何かしら? エリュシオン帝国出身の私には当たり前の技術、学問、でもそれだけかしら?」
 また冒険小説にでも感化されたんだんだな、と琴理は判断を付けましたが、今は突っ込んでいる場合ではありません。
 それに興味もありました。
 アナスタシアは、薄いロシアン・ブルーの瞳で一同を見渡します。
「この船には、まだ人形劇のお話の魔法がかかっていますわ。ですからおとぎ話の魔法を続けましょう。
 ──そうですわ、自分たちが出会ったり使った『初めての魔法』の話をするというのはどうかしら?
 勿論、具体的な魔法でなくてもいいのですわ。おとぎ話の魔女が与えたのは魔法のドレス? それとも勇気と切っ掛けかしら?」

 こうして、船内の契約者たちが集められて、話をすることになりました。
 あなたが出会った初めての魔法は、何でしたか?
 あなたが使った初めての魔法は、何でしたか?

担当マスターより

▼担当マスター

有沢楓花

▼マスターコメント

こんにちは、有沢です。
百合園女学院の合同学園祭・忘年会を挟みまして、単独でのシナリオではお久しぶりです。
こちらは、これまで展開していた“原色の海”(プライマリー・シー)を舞台とした連続シナリオの第一回となります。
といっても、このイベントシナリオのみの参加も大歓迎です!
異変が各地で同時に発生したため、情報があれこれありますが、これは次回以降へ繋がる初期情報(PL情報)となっています。皆さん全員は、これらの情報を帰港後(シナリオ終了後)知ることになります(シナリオ中のアクション次第で得ることもできますが、同時発生のため互いに状況把握をしていないために難しく、メリットも少ないと思います)。

このイベントシナリオに必要な情報は、極端に言えば、最後の三文だけです。
状況はピンチですが、船内はあくまでほのぼの、です。
基本的に皆さんはこの船内におり、はじめての魔法について話をすることになります。また、パニックを起こさせないための行動(人形劇をする、お茶を出すなど)をすることもできます。
船は機晶石を用いた現代的な外観です。サンドイッチ程度の軽食ができるカフェとホール、そしてその上に客席が二層あります。
遊覧船ということでオープンデッキが各層にあり、そして窓が大きくとられていますので、派手な戦闘が起これば、間もなく気付かれてしまうでしょう。
ホールには暗幕があるので、劇の上映中は締めておいても不審ではありませんが、長時間だと子供がぐずったりすることもあります。
念のため警備や待機をするスタッフはいますが、観客が長時間複数人が(或いは短時間でも契約者の大半が)席を外しても不審がられます。
現在、乗客は皆ホールに集まっています。

それでは、アクションをお待ちしています。

▼サンプルアクション

・はじめての魔法の話をする

・人形劇を上演する

・子どもたちにお菓子を配る

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2013年02月24日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年02月25日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年03月01日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年03月13日


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