シャンバラ地方における都市の一つであるキマクの近くに存在する動物園。
いつもは多くの来客によってにぎわう場所でしたが、今は避難勧告が出されていて従業員も客も動物園の外に避難しています。
原因は動物達の脱走と狂暴化で、突然脱走した動物に人々が襲われたためです。
動物の脱走自体は極稀にあることですが、今回は全ての動物達が一斉に脱走して人間に対して強い敵意を向けている異常な状態です。
幸い、動物達は園外には出ておらず、大きな被害は出ていませんが、怪我を負った人達もいるようです。
「何故、こんなことに……」
動物園を見つめながら、園長は一人呟きました。
動物達が牙をむいた理由もわからず、従業員達を傷つけて住民達を危機に晒しているという不安と心配でおろおろしています。
「園長、今回の事件を聞き、駆けつけてくれた契約者達がこちらに来ています」
「お待ちしておりました!」
園長は従業員の言葉を聞くと、契約者達に向き直ります。
「さっそくですが状況の説明をさせて頂きます」
園長の話はこうでした。
動物園は動物達が闊歩しており、侵入した人を襲ってくるそうです。
その為、従業員も客も全員避難していて、園内には人は居ないとのことでした。
「それと、不思議と園内は荒らされていないのです。 もし、役に立つものがあれば自由に使っていただいて構いません」
少し不安げになりながらも、園長はそう言います。
「何度も通っていただける人達も増え、動物達に語り掛けてくれる人たちも増えてきたというのに……」
園長は動物園を遠目に、少し俯きました。
「皆様に依頼する内容としては、動物園の危険を、動物達を排除していただくことです」
園長は震えながらその言葉を言いました。
しかし、その顔はすぐにあげられ、契約者達を見つめています。
「皆様であれば、動物達も私達も救ってくれる」
園長はそこまで言って大きく息を飲みました。
「そう、信じさせていただきます……」
園長は深々と頭を下げました。