葦原明倫館

　大都市・空京の影に隠れるように存在する街・光零（コウレイ）。古代シャンバラ王国の遺跡の上に築かれ、今も王国の建築物や地下水路などに多少手を加えて、そのまま利用しています。「光が零れる」ほどの繁栄はなく、どこか寂れた雰囲気のある街です。そんな街にはいつの頃からか、ある都市伝説が囁かれるようになります。
「月が姿を消す新月の夜、地下水路に恐ろしい化け物が姿を現す」
　肝心の化け物の正体に関しては、人によって大きく異なっています。ある者は巨大蜘蛛と言い、ある者は口の裂けた女だと答えます。数も最初は一体だったはずが、三体に増えていたりします。そして、その化け物が具体的にどう危害を加えるのかも不明のままです。
　結局、ただの噂話。数ある都市伝説の一つとして考えられてきました。ただ一つだけ気になる点は、最近になって地下水路に通じるマンホールの蓋が、全てロックされたことです。
　
　そして、今夜は一人の少女によって噂は現実に変化します。
　その少女が飛び込んだ先は、学生御用達の食堂「青楽亭（セイラクテイ）」。時刻は午後８時頃で、まだ生徒たちが残っていました。
　少女は背中を押されるように食堂のドアを押し開け、そのまま倒れ込みました。全身泥だらけで、手足には多数の擦り傷を負っていました。
　助け起こされた少女の体は冷たく、虚ろな目をしています。震える紫の唇から告げられた言葉に、食堂は凍りつきます。
「地下水路に友達が……。友達が残っているの。化け物が……助けて」
　窓の外を見れば新月。少女の尋常ではない様子に、一刻を争う事態だと悟った生徒たちは、地下水路へ救出に向かいます。
　少女の話通り、一か所だけ開いているマンホールを見つけます。少女が脱出したマンホールです。生徒たちは地下の闇へと降りていきます。懐中電灯は食堂から借りて来ました。
　生徒達が奥へと進む中、開いていたマンホールの蓋がゆっくり閉じていきます。
ヅヅヅヅヅ……ガチッ！
　音に気づいた生徒が慌てて閉じたマンホールを押しますが、強力な力で全く動きません。
　そこで、生徒たちは罠に嵌められたのだと気づきましたが、もう手遅れです。
　生徒達は途方にくれますが、ある生徒が水路の上流を辿っていけば階段があり、天井が網になっている部分があることを思い出します。そこなら、網を壊して外に出ることができます。
　さあ、貴方はこの闇から脱出しますか？　それとも、化け物の正体を見極めますか？

　このシナリオは、地下水路に閉じ込められた状態からのスタートになります。化け物を倒すことや交流を持つことはできませんが、明るい性格や熱血系のＰＣを無理に暗くする必要はありません。外国ホラー映画にも乗りの良い人物や明るい人物が登場しますので、問題はありません。
　また、死亡や錯乱もありません。化け物との接触により一時的な錯乱状態はありますが、夜が明ければ正気に戻ります。
　それでは、短編ホラー映画の登場人物になった気分を味わって頂ければ幸いです。

・一刻も早く脱出して、少女がいる「青楽亭」に戻る

・地下水路の探索

・地下水路で迷子になる