葦原明倫館

「空賊か……」
　薔薇の学舎の校長ジェイダス・観世院（じぇいだす・かんぜいん）は、薔薇の学舎の敷地内にある池のほとりにいます。
　最高級ブランドの餌を手に持ち、池に撒くジェイダス。彼の足元には餌を求めて多くのニシキゴイが集まっています。
「厄介なことになったな……」
　ジェイダスは小さく呟きますが、表情はあまり困ったようには見えません。それは、彼が常に自信に満ち溢れているからでしょう。

　しかし、実際にはやはり、ちょっとした事件が起こっていました。
　タシガン市街地の一角にたたずむ美術館。そこにはタシガン家が集めた美術品が多数展示されています。
　今回も、新たにタシガン家が購入した美術品が、ツァンダから届く予定になっています。
　しかし、ツァンダとタシガンを隔てる『タシガン空峡』には、しばしば空賊が出没し、美術品を積んだ飛空船を襲うことがあるのです。
　タシガン家もそれなりに護衛を付け警戒しており、そのお陰で最近は美術品を奪われるなどといったことは起きてはいません。しかし今回タシガン家は、積み荷を狙う空賊が、今までにないほど周到に襲撃準備をすすめている……という情報を入手したのです。

　そこでジェイダスに白羽の矢が立てられました。
「運ぶのは美術的価値の高い彫刻とのことだ。ゆえに空賊が一攫千金を狙うのはわからないでもない、が――」
　ジェイダスは、空賊がそこまで周到な準備を重ねて襲ってくる理由が解せませんでした。
　輸送されるのは所詮、彫刻です。もちろんかなりの価値があり、売り払えば数ヶ月は遊んで暮らせるでしょう。
　しかしジェイダスには、そんなちっぽけな一攫千金を夢見て空賊が襲ってくるものとは思えませんでした。タシガン家の者に聞いても、心当たりはないそうです。

「彼らは、厳重な護衛が付いているのを見て、彫刻を何物にも代え難い宝物かなにかだと勘違いしているのかもしれないが……それは、直情的かつ短絡的で刹那的な思考だな。そんなロジックに従って導き出される行動は美しくないばかりか、はた迷惑このうえない」
　ジェイダスは軽くため息をつきました。
　とはいえ、タシガン家から依頼された以上、美術品を無事にタシガンへ届けなければなりません。
「我が校の生徒がやるのは当然だが、相手は空賊だ。小型飛空艇を持つ蒼空学園の生徒や、空飛ぶ箒を有するイルミンスール魔法学校の生徒にも手伝ってもらう必要があるな。防衛戦はシャンバラ教導団の生徒が授業で習うだろうし、空賊にパラ実の生徒をぶつけるのも一興か。後方支援……癒しとして百合園女学院の生徒も呼んでおくとしよう。何事もなければ、雲海を臨む美しく素敵な空の旅が楽しめるはずだ」
　ニシキゴイに餌をやり終えたジェイダスは、各校の校長に連絡を取るため自室へ向かいました。

　その後、各校にジェイダスからの依頼が告知されたのです。

　皆さんの目的は「空賊から美術品を守り、タシガンへ送り届けること」です。
　コースはツァンダを出発し、タシガン空峡を抜けてタシガンへ向かいます。途中で確実に空賊が出没しますので、飛空船を落とされないように撃退してください。

　飛空船はキャラクター全員が乗れる規模ですが、それほど大きくありません。また、貨物船ですので武装はなく、装甲もあまり厚くありません。
　スピードは普通乗用車が高速道路を走るくらいは出ます。
　なお、小型飛空挺のスピードはスクーター程度、空飛ぶ箒はそれよりもう少し遅くなります。

　空賊は２０〜３０人程度で、全員小型飛空挺を操り、剣と銃で武装しています。遠距離攻撃を仕掛けて、怯んだところへ乗り込んできて白兵戦を仕掛けるようです。
　空賊の小型飛空挺は改造が施されており、飛空船よりスピードが出ます。

　積み荷はタシガン家が購入した等身大の彫刻です。運搬中は緩衝材を巻かれて木箱に入れられています。
　また、小型飛空挺や空飛ぶ箒はキャラクターが所持している分しかなく、ジェイダスやタシガン家から特に貸し出されることはありません。
　その代わりに、一人一本ずつ、「命綱」が貸し出されます。飛空船のデッキのどこかに忘れずに結び付けておいてください。

・空賊を撃退する！

・白兵戦に備える

・美術品のダミーを用意する