日焼けした肌に短髪、男顔負けの筋力が自慢のカノン・ハルトヴィックは、シャンバラ教導団の女猛者です。
ある日、カノンは街で1人の美少女に出会い一目ぼれをします。
それまで男性にも女性にも興味の無かったカノンの初恋です。
カノンは、その少女が百合園女学院の校長である 桜井静香(さくらい・しずか)と知っても、その思慕を抑えられません。
切なく恋心を呟くカノンを、荒地に住む邪悪な魔女マルハレータが見ていました。
マルハレータは、カノンのその巨体に似合わぬ美声と美しい瑠璃色の瞳を差し出せば、ひと目だけ静香に会わせると約束します。
静香に焦がれるあまりに、その約束を受け入れるカノン。
カノンは魔力によって、華奢で清楚な少女に変貌します。
「本当に会うだけで満足かい?」
ひと目見る以上を望むのなら……マルハレータは悪魔の取引を持ちかけます。
「もし、3日のうちに静香の唇と心を奪えれば、声と瞳と冨を」
「もし、不可能なら静香の体を差し出せ!」
美しい少女に変身したカノンは、変身した自分の容姿にほれ込み、無謀とも思えるマルハレータの取引に応じてしまいます。
その日の午後、カノンは、日本からの転校生「円城寺亜津子」として百合園の校門前に立っていました。
本物の亜津子は自家用飛行機のエンジントラブルのため、3日後に百合園に到着します。
校舎から出迎えに歩いてきた静香に見ほれるカノン、その後急速に視力が失われていきます。声と目を失ったカノンは、暗闇の中で、静香の声を聞きます。
さて、秘密裏に進むはずだったマルハレータとの密約は、おしゃべりなオウムが2人の話を立ち聞きしたために、森のあちこちで囁かれています。
「ああなんて愚かなカノン
邪悪な囁きに耳を貸し
偽りの自分を得た挙句
愛する人は見えやせず
愛の言葉も伝わらず
まんまと魔女の思う壺
ああなんて愚かなカノン
取引の期限はもうすぐさ」
オウムの歌声を聴いて、カノンに同情する人も多いようです。
さて、女性同士の恋の行方、どうなるのでしょう。