葦原明倫館

――ヒラニプラの山奥にある一地方。ここは、異端の者達の数多く住まう辺境の都であり、黒羊郷と呼ばれています。
　幾つの森と谷を越え、山間に開けた豊かな土地は、かつての戦いから逃れた落ち武者や魔女などの隠れ里ともなっているのでした。
　そして今、この地で、教導団の命運に関わる異変が……――

　旧オークスバレー。
　砦を改良した第四師団の新分校……
「騎凛教官。最近、黒羊　アンテロウム（くろひつじの・あんてろうむ）副官の姿を見かけないな？」
「ええ。アンテロウムは、里帰りしているのですよ」　
　新分校の庶務を預かるメイド隊長と、騎凛先生の会話が聞こえてきます。
「里帰り……」
「そう、あれでも昔は異端信仰のシンボルとされてたらしく、この時期になると故郷のお祭りに参加するために出ていくんです」
「故郷っていうのは、何処にあるんだろう？」
「ヒラニプラの山を越え谷を越え……（以下略）」
「そ、そうか……あの年で、大変だな。帰ってきたら、メイド総出の至れり尽くせりで、労ってあげないと」
「ありがとうございます。でも、今年は少し、出かけるのが早かったり、そろそろ届いてもいいだろう手紙も来なかったりで……何だかいつもと様子が違いまして。
　もう、戻って来ないんではないかって……」
「そんな、騎凛教官……パートナーだろ？
　そうだ。一度、教官自身そこを訪れてみるってのはどうだ？　たまには休みをとる意味でもいいかも知れないぜ」
　かくして、騎凛　セイカ（きりん・せいか）は休暇願いが通り、ちょっとした旅行へと出かけるのでした。



　数日後。
　ヒラニプラの山奥で、異端達にあやしい動向があり、活発化し近隣地方で問題が起こり始めている――これを調査するため、第四師団が派遣されることとなったのでした。実質は、大規模な遠征軍であり、となると当然、戦いが予想される……
「おっほん。此度、遠征軍の総大将をつとめることとなった、パルボンである。
　……というわけで、我々は今、二日の旅を経て、最初の大きな町・三日月湖畔のウルレミラに到着した。
　目的の地へはまだ、ここから四日を費やす。
　この先は、独立勢力の点在する危険な土地。しかし、今回の遠征の主力部隊である（とわしは認めておるわけではないが）【ノイエ・シュテルン】と【獅子小隊】が、別の戦地から到着が遅れておる。
　なので貴君らは、二部隊の到着を待つ間、ここウルレミラにてせいぜい羽を伸ばすがよかろう。
　だが、よいな、むやみやたらに土地の者と交流し、喧嘩したり、まして戦いを勃発させるなど、絶対に問題を起こすでないぞ。よいな、もう一度言うぞ。絶対に絶対に問題を起こすでないぞでないぞ」



　さて、三日月湖の南・ウルレミラから湖をはさんで、月の中心部にあたる丘陵の町バンダロハム。
　教導団の来訪に騒然となり、追い返そうとする土地の豪族やその傭兵（多くはもと逃亡兵や脱獄囚）、教導団に味方して雇い入れてもらおうとする食い詰め浪人に二分された状態。中には、財物を持ち出して、逃げ去ろうとする者も。

　更に、湖の北側の森には、黒羊旗を掲げる軍勢が迫りつつあります……

　「黒羊郷探訪」。オーク戦に続く第四師団シナリオです。
　第一回は、最終目的地・黒羊郷に至る中間点、三日月湖を中心としたお話になります。
　第四師団遠征軍は、旧オークスバレーを出発し、北東へ十数キロ、湖畔の町ウルレミラに到着したところ。
　皆様は基本的にここウルレミラからスタートすることになります。
　他校生の場合、傭兵として雇われて、友人に付いてきて等理由は様々でかまいませんが、今回はすでに山奥ですので、その場に居合わせた等は採用しにくいと思います。（とくに理由がない場合、また理由が採用しづらい場合、基本的には他校からの傭兵戦力としてきていることになりますが、自由設定等から理由を改変することもあります。ご了承ください。）

　そして、シナリオガイドにもあるように、オーク戦で活躍して頂いた【獅子小隊】と【ノイエ・シュテルン】の二部隊は、今回あえて遅れての出発としてみました。
　ご参加される場合、第一回は旧オークスバレーの温泉からの出発〜三日月湖地方までの道中となります。
　もちろん、今後の展開に向け重要な筋となる可能性があります。
　道中でのアクションは、下のヒント等をご参考にお願いします。
　また各部隊、隊員のうち一人のみ、本隊（遠征軍）の行軍に間に合い本隊側でアクションをとることができる、というルールを設けます。（使用してもしなくても可）
　二部隊以外の方でも、温泉から出発したい人はそうすることも可能です。（遠征軍に遅れた理由を明記してください。）

　では、以下、注意事項やヒントになります。
・　本シナリオでは、バイク、車、自転車、それに飛空艇といった乗り物は使用できません。
・　空飛ぶ箒は使用できますが、バンダロハムの大砲や、湖に展開する水賊の攻撃対象になりますのでご注意ください。
・　前回の第四師団シナリオで騎狼部隊に所属した者は騎狼、それ以外は、ゆる馬車および徒歩での行軍をしてきたことになります。
・　第四師団独自の部隊である騎狼部隊については、更なる募集や、編成など、前回までに与えた称号も参考に、ご自由に行ってください。
・　三日月湖の北の森にいる黒羊旗のところまで到達できるのは、騎狼部隊所属者か、馬の所持者に限られます。それから空飛ぶ箒でも可能ですが、空を飛ぶ経路等に細心の注意を払ってください。
・　部隊長ロンデハイネは本隊の殿軍として、一日目に戦った山鬼達の追っ手を蹴散らした後、三日月湖地方へ入ります。
・　部隊長レーヂエは、前回の戦いで重症を負ったため、旧オークスバレーの温泉で兵法の勉強をしながら療養中です。

・　三日月湖の周辺地図
↑北↑
　至黒羊卿
　◆北の森……三日月湖の北。黒羊旗が駐屯。敵味方、戦力等、全くの未知。
　◆バンダロハム……月の中心の丘陵に築かれた町。上層には、土地の貴族達の館群、中間部は雑居区で傭兵の酒場や妖しいビルが点在、最下層は貧民窟となっています。治安が悪い。
　西側が湖、東側は丘陵の裾が広がり月の外へ出ると沼地になっています。
　貧民窟と沼地の境界には、露店が立ち並ぶ沼人マーケットが発展。
　◆ウルレミラ……三日月湖の南にある湖畔の町。ここは治安もよく美しい景観の町で、湖を見渡せるカフェやレストラン、宿が数多くあります。
　教導団は町の中心にある貴族の館を仮の兵舎として滞在していますが、自由に宿を選ぶこともできます。
　周辺：
　◆湖賊砦……三日月湖から、北部の川（黒羊郷へ至る）にかけて勢力を持つ湖賊の拠点。
　◆遊郭……湖に浮かぶ島に発展した遊郭。
　◆みずねこの村……湖のほとりにあるみずねこの村。
↓南↓

・　三日月湖地方までの地図
↑北↑
　谷間の宿場：北へ行く旅人を客として幾つかの宿が存在。温泉スタート者はここへの到着が一つの目途。翌日には、三日月湖地方に入る（次回シナリオには三日月湖地方に合流）。
　◆鬼の牢獄亭……小山をくり貫いて作られた建造物で、かつて、北へ行く者はここで鬼の尋問を受け罪が発覚すると投獄され食われたという。
　北の辺境帯への入り口とされ、今は鬼型ゆる族が経営する大型の旅館となっています。
　教導団遠征軍が一日目に滞在した宿。
　◆魔女バルババの家……谷にぶら下がる巨大アシナガバチの古巣をくり貫いて作られた建造物で、魔女バルババが住み着いています。蜂を操る小賢しい性格の魔女と言われ、教導団はここは避けて通りました。
　◆山鬼の家……谷を通る人を襲って財宝や女を奪う山鬼が経営する宿。旅人から奪った多くの財宝や囚われた女達が隠されている？
　草原地方：山谷の合い間にある草原
　◆馬車の一団……三台の馬車の一団。追い剥ぎに追われています。
　◆ぶちねこの一団……流浪のゆる族、追い剥ぎの集団です。40〜50人。
　◆巡礼の一団……黒い衣に身を包んだ巡礼の一団。北へ向かっています。人数は数十人、目的は不明。
　◆サーカスの一団……謎のサーカス。草原の村に滞在してサーカスを開いています。詳細は不明。
　◆草原亭……草餅や草団子を売っている、草原にぽつんとある一軒の茶店。
　◆草の家……草原のゆる族が経営する茶店。
至オークスバレー
　◆プリモ温泉……プリモ・リボルテックが経営する温泉宿。
↓南↓

　その他、シナリオガイドやヒント、地図等から読みとれる情報であればそれに関するアクションはなるべく採用させて頂くつもりです。
　第一回はかなり自由度は高い内容だと思います。（まったりいこうという）長丁場の始まりなので、あまり先を決めずに、今回の皆様の行動で、色々筋を派生させていくのも面白いかなと思っています。
　勿論、ストーリーは最終的にタイトルでもある決戦の地・黒羊郷に行き着きますし、また本シナリオ自体も後々の展開への重要な伏線にもなってくるので、お楽しみに。

・バンダロハムの傭兵と戦う

・作戦を立てて戦う

・情報を集める

・温泉から出発

・騎凛先生と一緒に行く