葦原明倫館

　ヴァイシャリー近くの街、ラテル。
　石畳の大通りを靴音を鳴らして歩いて行くと、道の両側には古い煉瓦造りの建物が並び、店の前にはひらひらと旗が翻っています。
　この洒落た大通りは街の人の自慢でしたが、少し裏に入れば、そこには昔ながらの暮らし……庭付きの小さな家と、よく手入れされた畑、駆け回る子供たち、という風景があるのでした。

　このラテルの街に、今度新しく図書館ができることになりました。
　といっても、公共の施設ではありません。
　絵本が大好きなサリチェという女性が、自分が所蔵する希少な絵本と、図書館の為に買い揃えた絵本を集めて作った私設の図書館、『絵本図書館ミルム』です。
　大通りから１本入った処に建つ、赤い屋根に煉瓦の壁の可愛い建物。
　木が多用された室内は、ゆっくりと本が読める椅子やテーブル、子供達が集まれるスペースが設けられていて、何時間でも絵本を読んで過ごせるようになっています。
　サリチェが心をこめて準備してきた図書館もいよいよ開館。
　……なのですけれど。
　オープンをサリチェ１人では乗り切れそうにありません。
　そこで、学園の生徒に手伝いを依頼することにしました。

「申し訳ないのだけれど、私の私財はほとんど絵本図書館の為につぎ込んでしまっていて、みなさんにお礼をする余裕がないの。それでもいい、って人がいたら、図書館のオープンを手伝ってもらえないかしら」
　お願い、とサリチェは手をあわせました。
　40歳前後に見えるサリチェですが、そうするとどこか少女めいた雰囲気が漂います。

「まず、貸し出しや本の整理を手伝ってくれる人が必要なの。貸し出しはともかく、本の整理は私には重労働なのよ」

「それと、誰か子供達の相手をしてもらえないかしら。クッションをたくさん置いたスペースが作ってあるから、そこで絵本の読み聞かせをしてあげたりしてほしいの」

「それから……こんなことを口にするのは気が引けるんだけど……図書館にはどうしても、本を勝手に持ち出そうとしたり、乱暴に扱ったりする人が出て来てしまうのよね。できれば、その人たちへの対処もお願いしたいの」

　そう頼んだ後、サリチェは付け加えました。

「交代で手伝ってくれればいいから、空き時間には好きに絵本を読んでくれて構わないわ。珍しい絵本もあるし、もしかしたら子供の頃に読んだ絵本が見つかるかも知れないわよ」
　それくらいしか、お礼になるようなことができないし、とサリチェは笑いました。

「無償のお手伝いで悪いんだけど、本好きな学生さんがいたらぜひ手伝いに来てね。待ってるわ」
　最後にもう一度頼むと、サリチェはオープン間近の図書館へ、急ぎ足で帰っていったのでした。

　みなさま、はじめまして。
　このたび、マスターに登録させていただきました、桜月うさぎ（さくらづき・うさぎ）です。どうぞよろしくお願いいたします。
　蒼空のフロンティアでの最初のお話……何にしようか迷いましたけれど、お気に入りの場所である図書館を舞台にしたシナリオにしてみました。
　このシリーズは全３回。絵本図書館のオープン、ちょっとした事件、ちょっとしたイベント、という構成です。

　初心者さんも玄人さんも大歓迎、もちろんどの学園所属でもだいじょうぶ、のシナリオです。どなたでも遠慮無くお気軽にどうぞ。
　オープン、といっても絵本図書館での時間はのんびりふんわり。来館者はそれなりに多いですけれど、きりきり仕事しなくても平気です。

　ただ、注意が１つ。実際にある絵本を出すことは避けたいので、絵本の題名や内容を出したりする時には、みなさんが考えたオリジナルでお願いします。約束ですよ〜。

　では、みなさまのお越しを絵本図書館にてお待ちしております。
　

・貸し出しや本の整理を手伝う

・子供たちの世話をする

・不届き者に天誅をくだす

・空き時間に自分も読書してみる

・その他、図書館への協力行動をする