葦原明倫館

「……あら」
　玄関を開けた白鞘　琴子（しらさや・ことこ）は、宙に腕を差しのばしました。
　いつの間に降り出したのか、外は雨。
　絹糸のような雨が、さらさらとかそけき音を立てて降りしきっているのでした。
　買い物に出かける予定だったけれど、傘と荷物を持つことを考えるとちょっと躊躇われます。
　しばらくの間、雨を見てどうしようと考えていた琴子は、何かを思いついたように家の中に戻って行きました。
　次に出て来た時には、琴子は普段着の紬の上に雨コートを羽織っていました。足下も草履をやめて雨コートとお揃いの時雨下駄にして。
「一緒に出かけません？」
　家の中に呼びかけると、声だけが返ってきます。
「雨降ってんだろ。俺ぁ家でごろごろしてるぜ」
「そうですの。ではわたくしは行って参りますわね」
　和傘をさすと、買い物ではなく郊外へ向かいます。
　琴子が向かっているのは紫陽花の群生地。雨に濡れた紫陽花の風情は格別なことでしょう。その一角にはこの期間だけ茶店が開かれ、生徒たちがそこでアルバイトをするような話も耳にしていました。
　　　　――今日は雨降り。
　　　　――だからこその楽しみ。
　
　
　ぴっちょん…………ぴちょ………………ぴちょん……。
「雨……ですねぇ」
　福の神布紅は、跳ねる水滴を眺めて呟きました。
　ここは福神社の中。そして水滴が跳ねているのはどんぶりの中。
　どこから雨漏りしているのか、間遠に天井から水滴が落ちてきます。
　雨の所為か参拝客も今日はまだ１人も来ていません。
　ぴっちょん…………ぴちょ………………ぴちょん……。
　水滴の音を聞きながら、布紅は穏やかな気分で目を閉じました。
　　　　――今日は雨降り。
　　　　――のんびりと一休み。
　
　
　今日は雨。
　誰の上にも等しく降る雨の中、何をして過ごしましょうか。
　
　

　こんにちは〜。桜月うさぎ（さくらづき・−）です〜。

　雨ばっかりで厭だな〜、洗濯物が外に干せないし〜、とぼやいた時に、雨好きですよ、ゆっくり考え事とか出来るじゃないですか、と言われたことがあります。ああ、そんな考え方っていいな〜って思いました。

　外はぼんやり明るくて、耳をすませばかそけき雨音。
　そんな日、あなたはどう過ごしますか？
　琴子のように紫陽花を観に行くもよし、雨にも負けず茶店でアルバイトするもよし。
　布紅のところに遊びに行くもよし、家でぼんやりと過ごすもよし、雨の日デートするもよし、外でどろんこ遊びするもよし。
　雨の一日、あなたらしくお過ごし下さいませ。

・紫陽花を観に行く

・茶店でアルバイト

・福神社へお参り／遊びに

・家でぼんやり物思いにふける

・その他、雨の日の過ごし方いろいろ