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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

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魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~

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シナリオガイド

輪廻と輪廻。姿を写し取る剣の花嫁。その隠れた一面は
シナリオ名:魂の器・序章~剣の花嫁IN THE剣の花嫁~ / 担当マスター: 沢樹一海

 
「屋上で遊んでろって言われても……つまんないなあ。この電子マネー使ってどっか遊びに行っちゃおうかな?」 
 空京にあるデパートの屋上で、剣の花嫁のピノ・リージュンはつまらなそうにソフトクリームをなめていました。その手にはラス・リージュン(らす・りーじゅん)からこっそりとくすねた電子マネーの入った定期入れがあります。ちょっとした悪戯のつもりでした。 そこに、30センチくらいでしょうか。白くて大きい鳥が飛んできます。頭には黄色いトサカがついていました。細い首輪を着けています。
「何だろ……迷子かな?」
 ピノは鳥を腕に止まらせました。

 そんな彼女を見詰める目が4つ。
 ブラックコートで姿を隠した男が、長い髪を後ろで纏めた少女に指示を出します。少女はバズーカ砲に似た装置を右肩に担ぎ、スコープを覗いていました。
「あのガキなんだな。チェリー……確実に狙うんだな」
 直後、男の顔面にパンチが飛びました。
「……私がミスをするとでも? あと、チェリーって呼ぶな」
「……ああ、いや……忘れるんだな……メーヴィス
 それには応えず、少女――チェリーは標的をスコープの中心に据えてトリガーを引きました。
 発射されたのは、不可視の光線。しかし彼女には見えていて――
 光線は、ピノに直撃しました。男が立ち上がります。
「……さて、どうなるかな」

 結果。
「なんか、変な気持ちだなあ……」
 肩に白い鳥を乗せて、ピノは攻撃された事に気付かないままそわそわとしていました。
「どうしよう、あたし、このまま消えちゃいそうだよ……」
 不安で不安で仕方が無いのです。身体から魂が抜け出てしまうような。気を張ってないと意識を失ってしまいそうな。そして、そのまま戻ってこれなくなってしまいそうな。
「おにいちゃん……!」
 普段はうざったく感じている超甘々の保護者を求め、ピノはベンチから立ち上がりました。デパート内に戻ろうとして、定期入れを落とします。その拍子に、中から写真がはみ出てきました。自分――ピノの写真の裏からもう1枚紙が覗いています。
「なんだろ。これも写真かな……?」
 それを拾った時、ピノは言葉を失いました。そこに写っていたのは、自分とそっくりの『黒髪の』少女だったからです。
「これ、もしかして……」
 知っていた。自分がそういう存在だということは知っていた。それで良いと思っていた。でも――
 
「貴様の思ったとおりなんだな。ガキ……貴様はただの影に過ぎないんだな。亡霊のようなものだな。――価値など、無い」
「価値……?」
 ピノは、突然声を掛けてきた男に縋るような瞳を向けました。男が誰かということより、その言葉の意味を説明して欲しくて。いや、否定して欲しくて。男は無表情に、鼻血の跡を残した顔で見下ろしています。やがて――
「……私はガキじゃないわ」

 ピノの口調が変わりました。そして、自分の身体をチェックします。

「何なの? この身体」
「それはだな……」


           ◇◇◇◇◇◇    

「戻ったら、お金返してね?」
「分かったから……で? 何だよ改まって相談って」
 2階にあるカフェにて、ファーシー・ラドレクト(ふぁーしー・らどれくと)を前にラスは言います。神妙な様子のファーシーに、渋々という態を繕いつつも内心で無碍にする気はありません。最近、彼女の様子がおかしかったのには気付いていたからです。ろくりんピック終了後は、特にそれが顕著でした。
「うん……ここ最近、色んなことがあったでしょ。前から思ってはいたんだけど……わたし、このままで良いのかな? わたしの脚は、いつになったら動くんだろう……」
(……やっぱりな……)
 ラスは逸らしていた目をファーシーに向けました。幾ら明るくしていてもそれを気にしないではいられないだろうな、とは思っていました。心配してくれる人が居ればいるほど、世界が広がれば広がるほど、それは彼女の懸案事項となっていったのでしょう。
「わたしは、これからもずっとこのままなのかな? もう、あれから半年近く経つのに……少しは、エネルギー、溜まったのかな? もし、動けるようになるのが何十年も先だったら……」
「…………」
「わたしはちゃんと、皆の役に立つ事が、出来るのかな?」
「……お前なあ……」
「ねえ、もし今すぐ脚が直るって言われたらどうする? 直ったらきっとなんでもできるわ。ルミーナの助けになることだって、きっと……」
「あなたが、ラス?」
 聞き慣れた声に振り返ると、そこにはピノが立っていました。肩に白い鳥を乗せています。表情を緩めて立ち上がり、ラスはピノに近付きます。
「どうしたピノ。その鳥、どっから……」
「ピノなんて子は、もう居ないわ」
「何言ってんだ? あ、そうだピノ、電子マネー返せよ。またくだらねー悪戯…………!」
 突然突き出された写真に、彼の動きは止まりました。
「……それは……」
「剣の花嫁であるこの肉体に妹の名前をつけて可愛がっておいて……。未だこんなもの後生大事に持ってるのね。彼女、傷付いたみたいよ? そして……この肉体はもう私のモノ。返してもらったわ。だから……あなたも元に戻りましょう。ユーリアン」
「……? 誰だ? それ……」
「そのうち、思い出すわ。フーリの祠まで来ればね?」
 それだけ言うと、『ピノ』は身を翻して走り去りました。優雅な、優雅な動作です。
「おい、待てっ……!」
「ピノちゃん!」
「お前は来るな!」
 慌てて車椅子を発進させようとするファーシーを、ラスは強い口調で止めました。
「え、なんで……」
「来てもしょうがないだろ。邪魔なだけだ」
 言われて、ファーシーはびくっ、と身を縮めます。
「……わたしだって、ピノちゃんのこと……」
「ファーシー、お前さあ……ルヴィの言ったことに縛られ過ぎてるんじゃねーのか? 友達を大切に、もいいけど、片っ端から面倒な事に首突っ込むのはもう止めたほうがいい」
「そんな……そんな、違うわよ。わたしは……」
「銅版時代のお前は、もっと利己的だったと思うけどな」


 遠去かるラスの背中を、ファーシーは哀しそうな表情で見詰めていました。持っていた「手紙」を握りつぶし――
 彼女は、踵を……車椅子を反転させました。


           ◇◇◇◇◇◇


「成功したようなんだな」
 階段の踊り場で、男は機嫌良く言いました。左手に持った映像機器には、先程のやりとりが全て送られてきていました。
「こいつらは別にモニタリングするとして……。こちらの仕事を続けるんだな」
「本当に、これが起死回生の一手になるのか?」
「なるさ。もう俺達にはこの装置しかない。これを使って、空京を落とすんだな。弱小化した鏖殺寺院を復活させるんだな」
「壊れたら、また造り直せるんだろうな」
「ポータラカまで行かないと部品が無いんだな。これ1つだと思ってくれだな」

 2人は、会話しながら次のターゲット――<剣の花嫁>を探します。

「しかし山田 太郎よ……アクア・ベリルは何を考えてるんだろうな? ここの校長……特にルミーナが倒れた時、狂ったように喜んでいた」
「……フルネームで呼ぶなとあれほど……」

 その頃、デパートの事務所にカフェテラスでの一幕が報告されました。何やら不穏な空気が漂っていた事。『フーリの祠』なる謎の名前が出てきた事から、居合わせた客が報告したようです。念の為、各学園に事の顛末が伝えられ、警戒要請が出されました。
 ――デパートは、少しずつ混乱に包まれていきます。

 さて、この剣の花嫁騒動。被害を受けた剣の花嫁は、どんな行動を取るのでしょうか……?

担当マスターより

▼担当マスター

沢樹一海

▼マスターコメント

新シリーズ、序章です。

契約者の大切な人の姿に似ている<剣の花嫁>。
以前に別の契約者がいた場合、その姿は全く別の――「その契約者の大切な人」の姿をしていた筈。その時にどんな姿をしていたのか。どんな人格を有していたのか。という所から発したシナリオです。

チェリーのバズーカ光線を受けて、ピノは意識を別人格に譲ってしまいました。さて、どうなってしまうのでしょうか。そして、他の剣の花嫁は……?

序章という位置付けですが、<剣の花嫁>事件はこの1回で終わらせる予定です。前回の魂シリーズと同じく、短編連作風味にしていこうと思っていますが……クリエイティブがどんな悪戯をするのか、で変わってくるでしょう。

以下は、アクションをかける上での補足です。
――――――――――――

1、チェリーの持っているバズーカについて
・<剣の花嫁>の魂を不安定な状態にする不可視の光線を出します。
・光線は肉眼では見えません。映像機器などの画面越しに確認出来ます。
・現在が初契約の<剣の花嫁>、及び過去の記憶を持っている(同人格)の<剣の花嫁>も光線を浴びると魂自体は不安定になります。意識を失う1歩手前で戦闘不可と考えてください。

2、被害に遭った剣の花嫁について
別人格(以前に別の姿をしていた)剣の花嫁は、ピノちゃんのように何かのきっかけを与えられるか、光線を浴びた3分後に意識の反転が起きます。1度別人格が出てしまうと、時と共に以前の姿に戻っていきます。
この状態になった場合、以降のアクションでは空京以外の地区に移動することも可能です。ですが、出来るだけ空京内にしていただけると主に私が助かります。

※最終的には「必ず」元に戻るようにいたしますので、安心してアクションをかけていただいて大丈夫です。(変則ではありますが、被害に遭われる場合は確定アクション推奨とさせていただきます)

※希望アクションが無い限り別人格は現れず、戦闘不可状態で留まります。

元に戻る方法については「君が私で×私が君で」にて多数ツッコミを頂いた逆説方法を取る予定ですが、他にアイディアがありましたら積極的に採用していきたいと思っています。アイディアお待ちしております。

――――――――――――
◇各NPC現在位置◇

山田太郎&チェリー・メービス……鏖殺寺院リストラ組。デパートで剣の花嫁を狙ってこっそり活動中。2人共ブラックコート着用。チェリーは犬の獣人、太郎は超能力者(サイオニック)、契約関係にあります。

ピノ(?)&ラス・リージュン……ピノ(?)がフーリの祠に誘導中。祠はツァンダの森を通った山の中にあります。祠には特に危険はありません。道中にモンスターが出る可能性はあります。(ネタバレシーンあり)
ちなみに、ラスは一文無しです。電子マネーはまだピノ(?)が持っています。

ファーシー・ラドレクト……デパートを出て、どこかに向かったようです。携帯電話で連絡可能。

◇NPCとの接触を試みる場合の参考ページ◇
※ラス、ピノ、ファーシー、ルヴィに関する基本情報はキャラクターページ及びマスターページに記載してあります。(ピノちゃん、ルヴィは未登録です)
ラスのシスコンぶりは「魂の欠片の行方3」以降のメガネシナ以外で確認できます。
「ルヴィの言った台詞」に関しては「魂の欠片の行方3」15Pに記載されています。

今回、ガイドのそこら中に伏線、ネタバレヒントを張ってみました。中には、本編に繋がるヒントもあるかもしれません。
どうでもいいですが、白い鳥の種類はパラミタキバタンです。キバタンかわいいよキバタン。

……ごほん。

いろいろと長くなりましたが、それではよろしくお願いいたします。

▼サンプルアクション

・パートナーの様子がおかしい!

・事態の解決を図る

・フーリの祠までラスの護衛をする

・ファーシーを追いかける!

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2010年09月30日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年10月01日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年10月05日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年11月03日


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