葦原明倫館

　ザンスカールの西、サルヴィン川にほど近い場所に、「長雨の町」と呼ばれる町があります。
　町はシャンバラ古王国時代の遺跡の一部が使われている物で、石造りの町並みと、一年の半分以上、雨が降っているという不思議な場所で、その風情から観光目的に訪れる人も少なくありません。
　遺跡は危険な場所であるため、大部分は利用されず、入り口からのほんのわずかな区域を町として利用しています。

　そんな長雨の町から、ある日、助けを求める声が届きました。
　なんでも、雨が一向にやまず、その上、勢いが増す一方で、ついに町の機能に影響が出始めたのです。
　町中には水があふれかえり、濁流のようになって通れなくなった道もあるそうです。そのため、建物の中に取り残されて出ることができない人々も居ます。
　こんな事態は初めてのことで、町長をはじめ、村人たちもどうして良いか分かりません。

「強力なマジックアイテム……おそらくは女王器の暴走ですわね」
　話を聞いたラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）が、資料を調べ、結論づけました。
「あの町の遺跡には、日照りを防ぐための女王器があるという記録が残っていますわ。雨が多いのは、その女王器、『招雨の宝珠』……直系２メートルはあるオーブが、近年の環境の変化で暴走をはじめたのが原因と見て間違いありませんわね」
　原因を推理したラズィーヤは、さらに解決策を導き出します。
「長雨の町から遺跡の中に侵入し、その中心部分にある『招雨の宝珠』を破壊することが必要ですわ。」

　間を置かず、町長とラズィーヤからの依頼として、長雨の町で起きている問題を解決する依頼が各校に張り出されました。

　さて、その依頼を見てイルミンスール魔法学校のアッシュ・グロック（あっしゅ・ぐろっく）がすぐに飛び出していったのですが、彼はぼろぼろになって町の入り口まで引き返してきました。
「み、みんな、気をつけろ」
　アッシュは傷を治療しながら、後から来る生徒に言います。

「町中はひどい雨だ。遺跡の奥深くに行けば行くほど、激しくなってやがる。奥の方じゃ、ずっとスコールが続いてるような状態だ」
　遺跡の状態をその目で見てきたアッシュは、中の様子を語ります。
「遺跡は町の形をしている……ギリシャやローマみたいなもんだ。けど、雨が激しすぎて、女王器がある中心部分は、もう水没してるぜ。その上、遺跡を守るゴーレムがうろついてやがる。うかつに近づくのは危険すぎる」
　ゴーレムと言えば、鉱物や金属で作られた、大きな人の形をした魔法生物です。普通の剣や並みの魔法では倒せそうにありません。
「俺様も、治療が終わったらすぐに行く」
　そう言い残して、町の診療所に運ばれていきました。

　このままでは、他の地方に降る雨までもがこの町に降り続けることでしょう。遠からず町は水没、またサルヴィン川が氾濫する、他の地方の水が枯渇するといった影響も考えられます。
　果たして、この町を救うことができるでしょうか？

　入梅の候、いかがお過ごしでしょうか。ゲームマスターの丹野佑です。

　本シナリオの主旨は以下の2点です。
１、雨が降り続ける遺跡の中での冒険
２、女王器を破壊することで、長雨の町を救う

　本シナリオの目的は、遺跡の中にある女王器を破壊することで、長雨の町を救うことです。
　依頼は各校に出されていますので、どの学校の生徒も気軽に参加できます。

　本シナリオの舞台である遺跡は、地下ダンジョンのような形ではなく、昔の町の遺跡です。ですが、大部分はガーディアンであるゴーレムに守られているため、人間が暮らすことはできません。

　女王器があるとされている最深部は地下にあるのですが、すでに浸水して水の中に沈んでいます。女王器を破壊するためには、水の中で行動する方法を考えなくてはなりません。
　なお、ウェットスーツや空気タンクなどのスキューバダイビングに必要な道具などは、ラズィーヤが手配してくれます。

　町の中を大量の水が流れているため、歩いて通ることさえ困難な道が生まれています。そのため、一部の町民は建物の中に取り残されて居ます。いつ浸水するか分からず、危険な状態です。

　それでは、よろしくお願いします。

・女王器の破壊に向かう

・取り残された人々を助ける

・ガーディアンゴーレムと戦う