「えー、我々が開発しました、この噴霧機の活気的なところはですな……。
非常に精巧な鳥型であり……
景観を損ねずに農薬や水の噴霧を行えるところにありましてな……」
今日、空京大学の講堂ではシャンバラ技術交流会が行われていました。
講堂のステージで口をもぐもぐとさせながら解説を行なっているのは90歳のルパート教授です。
「では……次に実物をごらんください。
マシュー君」
「はい、教授」
マシュー助教授が大きな檻を押してステージの上に現れます。
檻の中には何羽もの青い小鳥が入れられていました。
まるで本物の鳥のように見えますが、全てルパートたちが作った機晶ロボットです。
「えー、先程も申しましたように――」
と、ルパートが説明を続けようとした、その時。
檻の中に居た一羽の鳥が口を開き、プシュ、とマシューへ何かを噴霧しました。
「っうわ!?」
すると、濡れたマシューの顔がみるみる赤くなり、急に彼は暴れ出しました。
「……――いつまでも助手なんてやってられっけーー!!」
「むむ、どうしたのかね? マシュー君。
もしや、わしが君の分の団子まで食べたことをまだ……って、酔っとるのかい?」
鳥が噴霧したのは、酩酊薬でした。
いわゆる酔っぱらい状態を強制的に作り出す薬で、次の発表を待つリンドウ教授チームが試作していたものです。
マシューは水と酩酊薬を間違えて鳥型ロボットに補充してしまったのです。
このチームの試作は他にも、惚れ薬や、
本音しか言えなくなる素直にナールという薬があり、それらも鳥に補充されてしまったようです。
マシューが暴れた拍子に檻の扉が開き、青い小鳥たちが一斉に檻の外へと逃げ出しました。
そして鳥たちは、それぞれに薬を吹き出しながら、大学構内や空京の街へと飛び立っていったのでした。
「解除薬っ、解除薬はっ!?」
ルパート教授の熱烈な愛をかわしながら叫んだリンドウ教授の問いに、助手が青い顔で答えます。
「……か、空っぽです」
どうやら、解除薬も青い鳥に補充されてしまっているようでした。
* *
大学構内に緊急放送が響き渡ります。
『手の空いている学生は、青い鳥の捕獲をお願いします!
手の空いている学生は、青い鳥の捕獲をお願いします!』
そんな中――
「……惚れ薬か。
実に興味深いな……。どれほどのものか、試してみたいのが学者心よ」
「もしかして、これって……煮え切らない彼の本音を聞き出せるチャンス?」
などと考える学生や……
「うははは、酒持ってこーーい!」
酩酊薬ですっかり出来上がった学生などが現れ、事態は混迷を極めようとしていました。
そして放送を聞いた目賀獲ことトレルお嬢様は、マヤー・マヤーへ言います。
「お前、猫だから鳥捕まえるの得意だろ? 全種類捕まえて、園井にかけてやろーぜ」
「一応聞くけど、それって楽しいにゃ?」
「うん、とっても」