葦原明倫館

　
　月明かりの落ちる、朽ちた神殿で。
　守護天使の亡霊は悲しみに満ちた歌を歌っていました。

　◇　◇　◇
　
「村人が村人を襲う……」

　アゾート・ワルプルギス（あぞーと・わるぷるぎす）は、村を見渡しながら小さく零しました。
　昼の陽の下。
　村は、まるで山賊やモンスターにでも襲われたかのように荒れ果てていました。

　昨晩、この村では、村人の半数が突如モンスター化して人々を襲う、という事件が起きていました。

「やりきれないな」

　共に村を訪れていたカールハインツ・ベッケンバウワー（かーるはいんつ・べっけんばうわー）が、
　地面に転がっていた血まみれのヌイグルミを拾い上げながら呟きます。
　アゾートは、彼の持ったヌイグルミを目で追いながら言いました。
　
「原因は、瘴気みたい」
「瘴気？」
「人を狂わせる、毒」

　言って、アゾートは遠く、古代の神殿がある方角へと視線を移しました。
　モンスター化した者たちは、人々を襲った後、何故か山奥の神殿遺跡の方へ去っていったのだといいます。

「……神殿には瘴気を放つ嘆きの石という石が結界に封じられてる、という話。
　伝承では、『石の瘴気に侵された者は、モンスター化して人を襲うようになる』と……」

　この地には、ある伝承がありました。
　それは、心優しい英雄ラティオと彼を愛した娘フィリナの悲しいお話――

『ラティオはこの地の人々を愛し、
　多くのモンスターや災厄から彼らを護っていました。

　ある時。
　彼は戦いの末、モンスターの毒に侵されました。
　特殊な毒に蝕まれたラティオの身体は、周囲の土地を腐らせる瘴気を放つようになり、
　彼は「傷が癒えたら、この土地を離れる」と人々に告げ、山に篭りました。

　しかし――
　山の木々が枯れ、土が腐っていく様子に、人々は恐怖を募らせ……
　やがて、彼らはラティオの傷が癒えるのを待てなくなってしまったのでした。

　彼らはフィリナという娘を世話係としてラティオの元へ送りました。
　ラティオが油断した隙を狙い、フィリナに彼を殺させるために。

　しかし、共に暮らすうち、フィリナは心優しいラティオを愛し、
　役目を果たす事が出来なくなってしまいました。
　人々は彼女の心変わりを知り、旅の吸血鬼に「“土地を枯らす化け物”を倒すためだ」と、ラティオ退治の助力を求めました。

　そして……。
　彼らは吸血鬼にフィリナを操らせて、とうとう彼女の手でラティオを殺してしまったのでした』

「自らの手でラティオを殺めさせられたフィリナは、悲しみ、怒り、狂い嘆いた挙句――」

　アゾートはカールハイツを見つめたまま、淡々と続けました。

「ラティオの傷口より流れ出た毒を飲んで、人々を呪いながら死んだ。
　……フィリナの亡骸は、やがて石になる」
「その石の放った瘴気が、人々をモンスターへと変え、彼らに大切な人を殺させた？
　まるで、“お前たちも同じ哀しみを味わえ”と言わんばかりに」

　カールハイツの言葉に、アゾートは、こくりと頷きました　

「結界によって封じられるまで、石は多くの命を奪い続けていた。
　そして、今、その封印が弱まっている。
　このまま封印が解けていけば……瘴気はその範囲を拡大し続け、もっと多くの人が犠牲になるよ」

「一刻を争う事態ってわけか。
　契約者には、この瘴気の効果は薄いようだとはいえ、長時間浴び続けているのも危険だしな。
　さっさと神殿に潜り込んで、石を破壊するか瘴気を封印する方法を探すか……何とかしよう」
「だけど……。
　神殿には通常のモンスターに加えて、モンスター化した村人たちも居る……。
　……彼らと戦うことになるよ？」
「守るべきもんの順番を間違えると守れるもんも守れなくなるぜ、実際」
「…………」
「何も、連中を見捨てろと言ってるわけじゃない。
　ただ――オレたちが急いで石を何とかしなけりゃ、理不尽な悲しみが増える一方なんだ」

　カールハインツは、手に持っていたヌイグルミを見やりながら零しました。

アゾートとカールハインツが登場していますが、
どこの所属の方でも問題なくご参加いただけます。


■神殿
樹木に覆われた古代の神殿です。
所々が崩壊しており、その合間に太い樹の枝や蔦が蔓延り、結果的に迷路のような形状を作り出しています。


■モンスター化した村人たち
硬化した爪が剣のように長く伸びています。
身体能力が劇的に増加しており、個人差はあるものの、各人共に契約者と対等に戦える程の能力を得ています。
神殿内の様々なところに潜んでおり、人を見ると襲いかかってきます。

瘴気の影響を受けた者は、キュアポイズンや清浄化のスキルなどで回復させることが出来ます。


■神殿内のモンスター
神殿内には瘴気の影響を受けた村人の他にも、
ゴブリンやスライムなどの雑魚モンスターが潜んでいます。


■瘴気について
契約者への効果は薄いですが、長時間浴び続けるのは危険です。
探索に時間が掛かると、契約者といえども瘴気の影響を受け、味方を攻撃し始めてしまう可能性があります。
（契約者の場合、モンスター化はしません）

瘴気の影響を受けた者は、キュアポイズンや清浄化のスキルなどで回復させることが出来ます。

・雑魚モンスターと戦う！

・神殿を探索する！

・石を破壊する

・村人をおさえる！

・石に呼びかける