蒼空学園の生徒である山田 治郎(やまだ じろう)はパートナー達の前で
新しいパートナーの強化人間の来栖 亜里沙(くるす ありさ)の紹介を行いました。
「新しい、パートナーの来栖 亜里沙だ。皆よろしくな」
「来栖です……」
山田の背に隠れるように腕にしがみつき、挨拶した亜里沙。
「よろしくね」
「……よろしく」
それを見たパートナーの二人――剣の花嫁のカナメと機晶姫のミリザは複雑な思いでした。
それから日時は経ちました。
あの日以降、亜里沙は冒険はもとよりプライベートな時間まで山田にベッタリでした。
一度、離れるように仕向けた時には狂ったように暴れ、カナメとミリザの二人で抑えこむのがやっとなほどでした。
ミリザとカナメが山田へ近づけば、抱きついている亜里沙の力が強くなって山田が危なくなるといった状態です。
冒険にも一緒に出られず、普段も会うことができないカナメは、だんだんと気を病んでいきました。
「どうして? 大切にしてくれると言ったのに……」
カナメの恨みは、ミリザと亜里沙へと向けられていました。
一方、ミリザの方は今まで感じたことのない感情を処理することができず、徐々に感情のコントロールがおかしくなってきていました。
「あいつ達さえいなきゃ……」
亜里沙とカナメを排除しようと思考が傾いていきます。
事態は最悪な方向へ進みつつありました。
ついに――事態が最悪の方向に動きました。
二人は山田と亜里沙との話し合いのために森に連れてきました。
「泥棒猫! 離れろ!!」
「……!」
「嫌ッ!」
業を煮やした二人は実力行使で山田から亜里沙を引き離しました。
二人に山田を奪われた形となって。
「いやああああああああああぁぁぁ!!!!」
ショックのあまりに調整ミスで極度の依存症となっている亜里沙の精神が暴走を始めました。
「あんたなんか居なければよかった!」
「亜里沙、壊す壊す壊す壊す壊す!!!」
亜里沙は二人に襲いかかり、二人は山田をかばうように対抗しようとしますが……。
次の瞬間――
「キエロ!」
カナメと協力関係だと思われたミリザが二人に攻撃を仕掛けました。
とっさの攻撃にカナメと亜里沙にダメージを受け、ミリザ自体もダメージを受けました。
こうして三つ巴の壮絶な修羅場が展開されたのでした。
命からがら学園に逃げてきた山田は周りに助けを求めました。
その様子をたまたま聞いた教員からの情報によりますと。
運が悪いことに――彼女たちが争っている所に食料を求め、大移動中のゴブリンが接近しつつ有るという情報が入ってきました。
山田は――強化人間に使う鎮静剤を手にいれましたが、完全に怯えてました。