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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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シナリオガイド【イコン参加可】

ツァンダ上空に“フリューゲル”タイプ出現!
シナリオ名:【第二話】激闘! ツァンダ上空 / 担当マスター: 影山リョウガ

 所属不明の高性能未確認機五機による教導団施設五箇所同時襲撃より数日後。
 
 
 商業都市ツァンダ レティーシア家領内 レティーシア邸
 
 
 ツァンダ家に連なるクロカス家の邸宅の自室にて、レティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)は休日を過ごしていました。

「やはり実家は落ち着きますわね。地球の方々には学園から実家においそれと帰れない方もいらっしゃるのですから、同じ街に実家がある私は恵まれていますわ」

 自室の窓の外には今日も蒼空が広がり、時折、ツァンダに吹く風がカーテンを揺らしながら入ってきます。
 ツァンダの風を心地良く浴びながら、レティーシアがベッドに座っていた時、控えめながらも焦ったような調子でドアがノックされました。
 
「どうぞ。開いておりますわよ」
 
 レティーシアが了承の意を告げた途端、執事が血相を変えて入ってきます。

「お嬢様! 一大事で御座います!」
 
 いつも落ち着いている執事が今日ばかりは大慌て。
 レティーシアもそれにつられて慌てた声を出してしまいます。

「一体どうしたというのです!?」

 執事は幾らか息を整えてから、努めて冷静に告げました。

「大変でございます。この間、教導団に襲撃をかけたテロリストの機体が……蒼空学園の施設にも……!」

 努めて冷静に告げようとしたものの、それでも動揺が滲み出る声で言う執事に対し、レティーシアはつい聞き返してしまいました。

「テロリストの機体が……なんですの……?」

 すると、執事は先ほどよりも落ち着いた態度で再び告げました。

「テロリストが来ております――蒼空学園の施設を……破壊しに」

 ここに来て執事の言っていることを呑み込めたレティーシアはベッドから勢い良く立ち上がりました。

「何てことですの! すぐに迎撃の部隊を出して頂戴!」
 
 まだ慌ててはいるものの、クロカス家の令嬢に相応しい毅然とした態度で告げるレティーシア。
 それに対して執事も打てば響くように応えます。
 
「既に出陣しております。襲撃された施設がイコン製造工場でしたものですから、すぐにサロゲート・エイコーン部隊が迎撃に出たとの報告を受けております」

 そこで一旦、言葉を切ってから執事は、言いにくそうに告げました。
 
「ですが、敵はたった五機にも関わらず圧倒的な強さで次々と迎撃部隊を討ち倒しているとのことです。このままでは施設が陥落するのもおそらく……時間の問題かと」

 その報告に絶句するレティーシア。
 先日、教導団を襲ったテロ攻撃の事件は聞き知っていたものの、改めて自分がその攻撃に直面した時の驚きは想像以上でした。
 それでも毅然とした態度を保ったまま、レティーシアは執事に命じます。
 
「已むを得ませんわ……他の学園にも救援要請を。特に教導団の方々なら実際に戦闘経験がお有りな分、わたくしたちよりもかの相手との戦いを心得ておられることでしょう……すぐに連絡して頂戴。ツァンダ家に連なるクロカス家の息女――レティーシア・クロカスの名を使って構いませんわ」
 
 すると執事は深々と一礼します。

「かしこまりました。そう仰られることと思いまして、既に連絡の準備は整っております」

 そう告げた執事の前に立つと、レティーシアは毅然とした態度で宣言しました。
 
「何があっても……絶対に守り抜くのです! わたくしたちの学校を、そしてこのツァンダの街を!」




 同日 同時刻 ヒラニプラ地方 シャンバラ教導団 イコン開発施設


「これが例の機体か」

 シャンバラ教導団が保有するイコン開発施設の一つ。
 視察に訪れていた金 鋭峰(じん・るいふぉん)は開発施設の最深部――最重要機密区画に保管された機体を見上げ、静かに呟きました。
 開発施設の奥深く。他の機体は何一つない格納庫の奥で屹立していたのは一機のイコン。
 見た目は教導団の制式イコンである鋼竜に似ていますが、背中に取り付けられた左右各二基――都合四基の筒状パーツを有する飛行ユニット、教導団どころか他の学園でも見たことのないデザインの銃器、そして銀一色に塗られた装甲など、大きな違いが幾つかあるようです。
 
「ええ。どういうわけか先日、急に動くようになったもんで。団長の仰る通り、捨てずに取っといて良かったですよ」

 団長の隣に立って施設を案内していた技術者が苦笑しながら言いました。
 整備用のツナギ姿で頭を掻きながら、技術者は更に鋭峰へと説明します。
 
「現代兵器をパラミタでも運用する――団長のお考えになった計画の一環で用意した“ラプター”――『F-22』戦闘機の件、もちろん覚えておいでですね?」
 
 確認する技術者に対し、鋭峰は即座に頷き、口を開きました。
 
「無論だ。私が紅生軍事公司を通して設計図を入手し建造した『F-22』二機を教導団の施設に移送中、護衛として随伴していた歩兵部隊と一機の鋼竜の混成小隊が何者かの攻撃を受け壊滅し、『F-22』が奪取され行方不明となった挙句、随伴していた鋼竜も一緒に姿を消し、パイロットだけが事件当時の記憶を失った状態で現場に放り出されていた――あの事件、忘れもしない」

 淡々とした口調の中に怒りを垣間見せながら語ると、鋭峰は何かに気づいたように呟きます。
 
「今思えば、あの事件も前回、前々回と我々教導団に対して行われた一連のテロ行為の一環だったのだろうな」

 鋭峰が呟き終えるのを待ち、案内役の技術者は鋭峰の説明を引き継ぐようにして、語り始めます。
 
「その後、懸命の捜索にも関わらず襲撃者はもとより、持ち去られた『F-22』と鋼竜の行方も知れなかったが、数週間後、教導団のとある施設付近に一機のイコンが直立姿勢で放棄されているのが発見された――それがこの機体です」

 そう技術者が告げると、鋭峰は再び例の機体を見上げます。
 例の機体を見上げる鋭峰の横で、技術者は説明を続けました。
 
「奪われた三機の兵器が『F-22』二機分という都合四基ものジェットエンジンを背負った一機のカスタム機に改造されて返ってきた……当時もそうでしたが、今になってもまだ犯人の意図は皆目見当もつきませんよ。ただ、判明しているのは――」
 
 案内役の技術者も一緒になって例の機体を見上げ、しみじみと呟きます。
 
「――この機体が地球技術とパラミタ技術の混血児で、現状の技術レベルでは開発が難しい代物ってことです。言うならば『誰でも思いつくが、実際に造れるのは一握りの天才だけ』……そんな逸品ですよ。これを造った奴がどんな奴なのか、同じ技術者として興味は尽きませんね」
 
 その一言に鋭峰も頷きます。
 
「だが、これほどの機体ながらも、すぐには使用できなかったのだろう?」

 問いかける鋭峰。
 問いかけに案内役の技術者は頷きました。
 
「その通りです。万全の状態で回収されたものの、なぜか全く起動しなかったんです。加えて教導団の技術者たちの興味が第二世代イコンの研究やそれに伴う『応龍』の開発に移ったもんで、いつしか忘れ去られたまま格納庫に死蔵されていた……というわけです」

 説明を聞いて、鋭峰は再び頷きます。
 
「それゆえに私もこの機体の存在を忘れていた。つい数日前――五機の未確認機による襲撃が起こった日までは」

 静かな怒りを噛みしめながら呟く鋭峰。
 やはり彼にとって教導団襲撃事件は忘れられない怒りの出来事に他なりません。
 鋭峰はすぐに落ち着きを取り戻しましたが、しばし沈黙が訪れます。
 しばしの沈黙が続いた後、それを破ったのは、遠慮がちに説明を再開した技術者の声でした。
 
「忘れもしないあの日、我々教導団と救援に来てくれた他学園の連合軍がすべての未確認機を撃破した直後、格納庫の奥で埃をかぶってたコイツが急に格納庫内でアイドリング状態に突入……原因不明の起動を遂げたんです」
 
 やがて完全に落ち着きを取り戻した鋭峰は見上げていた機体から、自分の隣に立つ技術者へと視線を移しました。
 
「原因はどうあれ起動したのだ。ならば使用可能だろう? 実際の所はどうか聞かせてくれ」

 鋭峰からの問いかけに対し、技術者は深く頷きます。
 
「ええ。機体そのものはブラックボックスなんですが、なぜか操縦だけはできるようになってて。加えて、元々保存状態が良かったおかげで最低限の簡単な整備――コイツを解析できていない我々にもできる範囲の整備だけで十分に実戦投入は可能でしょう」

 その報告に鋭峰は満足げに頷くと、隣に立つ技術者へと更に説明を求めます。
 
「上等だ。実に結構。詳細なスペックを教えてもらおう。場合によっては私自らが搭乗してテストを行う」

 鋭峰に言われ、技術者はどこか困ったような声で語り始めました。
 
「“ラプター”に搭載されていた双発ターボファンエンジンを背部左右に装着した追加推進機構――我々が四連装ターボファンエンジンと呼んでいるこの推進機構のおかげで最高速度は現用機の最高速度を優に超えています。更に“ラプター”の特徴であるアフターバーナー点火なしでの超音速巡航も継承されてるのもありますし、“ラプター”を超音速巡航させられるだけのエンジンを二セット鋼竜に取り付けてるわけですから、旋回性能も現行の航空兵器を軽く凌駕してるレベルですよ。もっとも、正確な最高速度は不明ですが」
 
 立て板に水の口調で告げる技術者に対し、何かが気になった様子で鋭峰は問いかけます。
 
「不明? それはどういうことだ?」

 すると技術者はどこか困ったように、再び苦笑して答えます。
 
「最高速度に関してですが……実は測定不能だったんですよ」

 そう答える技術者に対し、鋭峰も困惑したような顔になって更に問いかけます。
 
「測定不能? それは何故だ? 詳しく説明しろ」

 鋭峰の命令に頷くと、技術者は三度苦笑し、今度は肩まですくめて答えます。
 
「起動可能になってからコイツをテストしたんですがね。コクピットに設置した計測器が加速に耐えきれず破損しまして」

 そこで一度口を閉じると、技術者は意を決したように鋭峰に告げます。
 再び口を開いた技術者は、またも肩をすくめていました。
 
「ちなみにテストパイロットは通常の地球人よりも心身ともに強化されているはずの契約者と強化人間だったんですが、テスト終了直後に吐血して気絶。担ぎ込まれた病院での検査の結果――骨格と内臓に深刻なダメージを負ってることが判明して、今は揃って入院してます」

 それを聞かされ、流石の鋭峰も絶句した様子です。
 
「他はというと、特徴的なのはあのライフルですね」

 絶句した様子の鋭峰に語りかけながら、技術者は例の機体が持っている銃器を指差しました。
 
「どうやら開発者の誰かさんは、機体だけでなく付属の武装まで合体させたようで。鋼竜が標準装備してるマシンガンと“ラプター”の『M61機関砲』を一度パーツ単位まで解体してから半ば強引に合体させたらしくて。その結果、本来は手で持って使うもんじゃない『M61機関砲』――所謂バルカンとかガトリングガンとか言われてる銃身に小銃のようなグリップとトリガーが付いたとんでもない銃器が出来上がったようですよ。そういう経緯で誕生した武器なもんで正式名称もありませんから、我々は便宜上“バルカンライフル”なんて無茶苦茶な名前で呼んでますがね」

 最後は冗談めかして言った技術者の横で、鋭峰は息を呑みました。
 
「ちなみに武器の性能はどうなんだ? 詳しく頼む」

 それでも冷静さを保って聞いた鋭峰に、技術者は冗談めかした調子で更に言いました。
 
「あの“バルカンライフル”が持ち主の身の丈と同じくらいってのを見て頂ければ、その威力ってものが理解していただけるかと。ただ……空戦中にフルオート射撃なんてしようもんなら反動で機体がひっくり返った挙句に吹っ飛ばされて大変なことになりますがね」

 そう前置きしてから、技術者は続きを説明しました。

「吹っ飛ばされた方向が上なら空の彼方に飛んでいくだけで済みますが、下だった場合は地上に激突しますんで。どうしても撃ちたければ、四連装ターボファンエンジンを逆噴射して姿勢制御してもらうしかないですね。もっとも、それがどれだけ絶妙なバランスが要求される曲芸なのかを考えれば、あまり現実的ではありませんが」

 またも肩をすくめると、技術者は付け加えます。
 
「他には、鋼竜のマシンガンにあった銃剣を取り外してそれ単体で使用できるように改造したコンバットナイフがありますが、まぁ、こっちの方がまだ武器としては現実味があるってもんです」

 そこまで語り終えて一拍置くと、しばらく待ってから技術者は更に言いました。
 
「後は、開発中だった新型の対ビームコーティングを全身の装甲、それも一枚一枚に施してあります。先日のテロ事件以来、多額の予算が降りるようになったおかげで急に開発が進んだもんで。おかげで大出力のビーム兵器に対してもある程度は耐えられるようになってます。サバイバルナイフの刀身にもコーティングを施してあるんで、短時間なら新式ビームサーベルとだって鍔迫り合いもできますよ。機体のあの銀色塗装がそのビームコーティングですね」

 技術者が説明を終えると、鋭峰は深々と頷きます。
 そして、技術者に向けて言いました。
 
「予算を出すのは当然だ。有用な技術と有能な人材には投資をする――軍人として、指揮官として、それは当たり前のこと」

 いきなり褒められて驚いたものの、すぐに背筋を伸ばして姿勢を正し、技術者は最敬礼しました。
 ややあって最敬礼を終えた後、彼は鋭峰に向けてしみじみと言いました。
 
「しかし、複雑な気分ですね。現行機を凌駕する強力なビーム兵器を持った機体が出てきたら、今度はそれを防ぐ技術が開発され、それを装備した機体が出てくる――現に我々の管轄に限って言えば、あのテロ事件以来、兵器の性能は急速に進化しています。それを考えると、何とも言えない気分になりますよ」

 技術者の言葉に口をはさむことなく、ただ黙ってじっと耳を傾けていた鋭峰は、語り終えた技術者に向けて一度深く頷きます。
 そして、鋭峰はまたも問いかけました。

「この機体のコストは?」

 すると技術者の方も、またも肩をすくめて答えます。

「“ラプター”二機に鋼竜一機、それに加えて、大出力のビーム兵器にも耐えられるよう装甲の一枚一枚に最新式のコーティングを施してますからね。団長といえども腰を抜かされるんではないかと、ちなみに材料費だけでも――」

 具体的な金額を聞いた後、黙ってうなずく鋭峰。
 常人ならば腰を抜かすか、場合によっては卒倒しかねないほどの金額にも、鋭峰は冷静なままです。
 流石は鋭峰の精神力といったところでしょう。
 一方で、技術者は真面目な顔になってこう続けました。

「でも、仮にコイツが実戦投入されることになった場合、もしもの時はパイロットに迷わず機体を破棄して脱出するよう伝えてください。パイロットの命は金では買えませんから」

 真摯に告げる技術者の言葉に鋭峰も真摯に頷きます。

「了解した。必ず伝えておこう」

 しばらくの間、二人は黙っていましたが、静寂を破るように鋭峰が口を開きました。
 
「そういえば、まだ聞いていなかったな。この機体の名前を」

 技術者は呟くような鋭峰の言葉に対して、同じく呟くように答えました。
 
「本来の名前は開発者に聞いてみないとわかりません。ですが、こちらで付けたコードネームはあります」

 そう呟く技術者の方を向く鋭峰。
 鋭峰の目は「聞かせてくれ」と言っていました。
 それに応えるように、技術者は口を開きます。
 
「“ラプター”と鋼竜が融合したことで生まれた機体ですからね、それにちなんでこう名付けています――」

 あえて一拍置いた後、技術者は例の機体の名前を告げました。

「――禽竜、と」

 鋭峰は満足げに頷きました。
 
「禽竜――か。良い名だ」

 鋭峰がそう言い終えた直後、格納庫に鋭峰の部下が駆け込んできます。
 手短に報告する部下によると、蒼空学園の施設が先日、教導団を襲撃した機体によって襲撃を受けているそうです。
 
「了解した。禽竜は出せるか?」

 その問いかけに技術者は気合十分といった調子で答えます。
 
「勿論です。ただし、乗りたがるパイロットがいれば……ですけど」

 すると鋭峰は毅然とした態度で言いました。
 
「もはや手段を選んでいられる状況ではない。すぐに禽竜を準備しろ」

 そう告げると、鋭峰は格納庫に声を響かせます。
 
「これより教導団は蒼空学園の援護に向かい、テロリストを殲滅する。以上だ」




 同日 同時刻 某所 

 とある場所。
 自分のデスクでPCを操作していたスミスの背後でドアが開きました。
 
「これはこれは来里人くん。それに深行(みゆき)さんまで。お二人揃ってということは、出撃されるおつもりで?」

 ドアが開いて入ってきた相手に気付くと、スミスはデスクから立ち上がってその相手――来里人と彼に同行する少女を迎えます。
 来里人に同行する少女は一見するとごく普通の少女のように見えます。特徴といえば、コンコルドクリップで後頭部に纏めた長い髪でしょうか。
 
「それとも“ユーバツィア”の開発状況を聞きに? それでしたら先日お伝えした通り、“フリューゲル”は既に完成してますが、“シュベールト”は君から直々のOS調整注文があったもので再調整中、対・“カノーネ”はこの前の戦闘で随伴歩兵対策という新たな課題が判明した為、急遽ハードウェア面での改良――対人兵器の搭載を行っている最中なのでもう少し待っていただければ、それ以降のバリエーションに関してはお察しください」

 早口に淀みなく言うスミスに対し、来里人は淡々と手短にと答えます。
 
「今日の要件はそれじゃあない。ただ一言を言いに来ただけだ。あまり奴らを舐めない方がいい――とだけな。そう遠くないうち、奴らは俺たちの使用している技術を解析して追いすがってくる。それよりも前――圧倒的な優位性があるうちに完膚なきまでに叩き潰す。それが良いと思うが?」

 するとスミスは大仰な動作で一礼してみせます。
 
「おお、これはこれは。わざわざご忠告頂けるとは、そのお気遣い、痛み入ります」

 そう言い終え、頭を上げると、スミスは更に言います。
 
「ですが、ご心配には及びませんよ。今回は通常の“フリューゲル”四機に加え、一機のシュバルツタイプが指揮官として出ていますから」

 スミスが言い放ったその一言に来里人は小さく反応を示します。
 
「そうか。あいつが出ているのか。なら、俺がとやかく言うことじゃあないな」

 そう言うと来里人に対し、スミスは小さく笑って言いました。

「敵が私たちの技術を解析しようとするのは想定の内ですよ。もっとも、私たちの技術が『本来ならば数十年先になってやっと手に入る筈の技術』だと知ったら――敵はどんな顔をするでしょうか」

 まるで悪戯を思いついた時のような顔で言うスミスに対し、来里人は鼻を鳴らすと、すぐに踵を返して深行とともに去っていきます。
 鈴の付いた三つ編みの黒髪が背中で揺れる来里人の後姿を見送ったスミスは、自分のデスクに目を戻しました。
 彼のデスクの上にはデスクトップのPCが一台。
 それに繋がった増設ポートには、各々色の違う五本のUSBメモリが挿ささっています。
 USBメモリはクリアパーツであるおかげか、中に入った銀色のチップが見えています。
 そして、PCのモニターには、先日の戦い――五機の高性能イコンによる教導団施設襲撃の映像が五つのウィンドウに分かれ、同時に再生されていたのでした。

「さて、教導団にやった『アレ』もそろそろ起動した頃でしょうし……今回の勝負も実に見物ですね」
 
 同日 同時刻 ツァンダ地方 蒼空学園 イコン製造施設
 



「なんて性能だ……!」

 蒼空学園のイコン製造施設の防衛にあたっていたイーグリット・アサルトのパイロットはコクピットで戦慄していました。
 圧倒的な敵機の性能。
 それに戦慄しながら、彼は愛機のカメラアイが捉えた映像を凝視します。
 コクピットのモニターに映っているのは迫り来る四機の“フリューゲル”、そして、その後ろに控える一機の黒い“フリューゲル”の姿でした。

担当マスターより

▼担当マスター

影山リョウガ

▼マスターコメント

■7月31追記
禽竜の<スペックデータ>に誤りがあったため、修正を行いました。



*****マスターより*****

 今回は蒼空学園が舞台のシナリオですが、所属学校に関係なくどなたも気軽にご参加ください。

 さて、前回のシナリオに続き、第二話のシナリオガイドが公開です!
 このシナリオは今年5月に公開された『【第一話】動き出す“蛍”』と設定的に繋がりはありますが、既出のシナリオを全く知らなくても楽しめるように設計されていますからご安心ください。
 皆さんはレティーシアから救援要請を受けたという設定でシナリオに参加します。
 蒼空学園や教導団だけでなく、救援要請を受けて他の学園から応援に駆けつけたという設定でも可ですので、それ以外の学園の生徒の方も奮ってご参加ください!
 
 今回のシナリオでは、どなたか一組がスポット参戦するイコン――禽竜に乗ることができます。
 我こそは! という方は奮ってご搭乗ください!

☆☆☆アクションの例☆☆☆

 選択肢は六つ。
 

 ●●●選択肢データ●●●

 1.迎撃に出る(蒼空学園限定)
 
 襲撃をかけてきた敵機を迎撃する選択肢です。
 なお、この選択肢は蒼空学園の生徒限定で選択可能です。


 2.救援に駆けつける
 
 迎撃にあたっている蒼空学園の生徒の救援に駆けつける選択肢です。
 教導団をはじめとする蒼空学園以外の学校の生徒はこちらが選択可能です。

  
 3.救護担当

 撤退してきた蒼空学園の初動部隊の人員を救護する選択肢です。
 所属学園に関係なく選択可能です。


 4.修理・補給担当
 
 撤退してきた蒼空学園の初動部隊の機体を整備する選択肢です。
 所属学園に関係なく選択可能です。


 5.指揮・分析担当

 指揮や分析などの後方支援を行う選択肢です。
 所属学園に関係なく選択可能です。

 6.諜報担当

 前回、その一端が語られた『偽りの大敵事件』について調査する選択肢です。
 他の参加者とは別行動となります。
 現時点では教導団の生徒のみ選択可能です。


 ●●●敵データ●●●

■■■
 コードネーム:“フリューゲル”
 所属:鏖殺寺院・エッシェンバッハ派
 出現数:四機

 
 特徴:
  ・大型翼状パーツ搭載の飛行ユニット装備による超高機動力。
  ・飛行ユニットのジェネレーターから得られるエネルギー供給による大出力・高威力のエネルギー兵器。

 
 武装:
  ・新式プラズマライフル:
    大出力のビームライフル。
  
  ・新型ビームサーベル:
    大出力のビームサーベル。
 

 備考:
  ・前回の戦闘以降、プラズマライフルが新式のものにアップデートされるマイナーチェンジが施された模様。
■■■
 コードネーム:なし(※未確認機の為)
 所属:鏖殺寺院・エッシェンバッハ派と推定
 出現数:一機

 
 特徴:
  ・大型翼状パーツ搭載の飛行ユニット装備による超高機動力。
  ・飛行ユニットのジェネレーターから得られるエネルギー供給による大出力・高威力のエネルギー兵器。
  ・“フリューゲル”と同様の仕様ながら、全体的な性能は一段階上。

 
 武装:
  ・新式プラズマライフル:
    大出力のビームライフル。
  
  ・新型ビームサーベル:
    大出力のビームライフル。
  ・マニューバ Celestial Light(必):
    超高速で超高高度まで上昇し、新式プラズマライフルの最大出力で地上を薙ぎ払う。
    複数の標的を同時攻撃可能。1シナリオ3回まで。

 ※名称の末尾に『(必)』がある武装は厳密には武装ではなく必殺技であるが、便宜上武装として表記しているもの。
■■■


 ●●●スポット参戦機体データ●●●
 コードネーム:禽竜
 所属:シャンバラ教導団
 保有数:一機

 
 特徴:
  ・四連装ターボファンエンジンによって生み出される、“フリューゲル”と同等かそれ以上の超高機動力。
  ・最新式のビームコートによる、ビーム兵器への高い防御力。
  ・心身ともに強化された高レベルの契約者ですら耐えられないほどの超加速と強力なG。

 
 スペック
  サイズ:M
  定員:2
  HP:700
  EN:500
  パワー:250
  照準:250
  機動:500
  機甲:150
  誘爆:50
  追加回避:50
  追加防御:0
  センサー:25
 
 ■移動  
  移動属性(地上):○
  移動属性(水中):×
  移動属性(空中):○
  移動属性(異界):×
  移動力:10
  移動タイプ:飛行
  イコンアビリティ:なし

 ■耐性
  攻撃属性(格闘):100
  攻撃属性(射撃):100
  ダメージ属性(物理):100
  ダメージ属性(炎熱):100
  ダメージ属性(雷電):70
  ダメージ属性(氷結):100
  ダメージ属性(光輝):100
  ダメージ属性(闇黒):100
  クリティカル属性(物理):100
  クリティカル属性(魔法):100
  クリティカル属性(精神):100


 ウェポン:
  ・M61バルカンライフル(強化型ガトリングガン):
    “ラプター”のM61機関砲と鋼竜のマシンガンのパーツで組み立てたライフル。高い連射力と破壊力を持つ。
  ・コンバットナイフ(ソード):
    鋼竜のマシンガンに装着されていた銃剣を単独で使用できるようにしたもの。


 道具:
  ・四連装ターボファンエンジン壱號基(スラスターユニット):
    背部に装着された強力な推進機構のうちの一基。機動、移動力が上がる。

  ・四連装ターボファンエンジン弐號基(スラスターユニット):
    背部に装着された強力な推進機構のうちの一基。機動、移動力が上がる。

  ・四連装ターボファンエンジン参號基(スラスターユニット):
    背部に装着された強力な推進機構のうちの一基。機動、移動力が上がる。

  ・四連装ターボファンエンジン四號基(スラスターユニット):
    背部に装着された強力な推進機構のうちの一基。機動、移動力が上がる。

  ・最新式ビームコート(超電導バリアー):
    全身の装甲に施された対・ビームコーティング。雷電属性への耐性が得られる。

 
 備考:
  ・ウェポンや道具の名前の横にある()内の名前は判定上使用するウェポンや道具のデータです。
   (例:『M61バルカンライフル(強化型ガトリングガン)』の場合、強化型ガトリングガンのデータを用いて判定を行います)

  ・乗りたい方はアクション相談用の掲示板にて表明をお願い致します。
  ・基本的にはどの学園所属の方でも乗ることができます。
  ・誰が乗るかは話し合いで決めて頂いて構いません。
  ・立候補が複数の場合で、アクション締切日まで決まらなかった場合は、先着順とさせて頂きます。
  ・もし立候補が同時だった場合は教導団の生徒が優先とさせて頂きます。
  ・両方教導団の生徒だった場合は、当事者の方々同士で話し合ってご決定ください。

  ・この機体に乗ったパイロットは、骨折したり吐血したりした末、戦闘終了後に気絶します。
  ・なお、この機体はこのシナリオでのみ使用可能です。
  ・他のマスターシナリオやロボットミッション等々への持ち込みはできませんので、予めご了承くださいませ。

▼サンプルアクション

・禽竜に乗って“フリューゲル”と戦闘し、鏖殺寺院の機体を圧倒する。

・あくまで愛機で鏖殺寺院の機体に勝つことにこだわる。

・今後の事を考えて、別行動で『偽りの大敵事件』を調査する。

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2012年07月28日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年07月29日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年08月02日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年08月20日


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