葦原明倫館

「でね〜、これがまた可愛いんだって！
　あたしを見付けて、ぴょんって飛びついてきたんだからっ！」
「へぇ、そんなことが……あ、そこのお姉さ〜ん。
　オレとお茶しな〜い？」

　雨風も過ぎ去り、からり碧天。
　そんな夏の日のお話です。

「ちょっと燿助っ、聴いてるっ！？」
「あぁはいはいごめんってなゆた〜みみひっぱらないでぇ〜」

　城下を歩く人のなかに、龍杜那由他（たつもり・なゆた）と仁科耀助（にしな・ようすけ）の姿がありました。
　総奉行命名『さまーばけーしょん』が終わるため、明日からの学校生活に必要な物資を買い揃えていたのです。

「ほら、此処で最後だから、しっかりしてよねっ！」
「う〜オレの可愛いお耳ちゃんが〜」
「ごめんくださ〜」

　そのとき。
　那由他の声を遮るように、甲高い一声が響き渡りました。

「麗しきお姉さんの悲鳴とはっ、何事だっ！？」

　振り返りざまに燿助が走り出すのも、自然の成り行きだったのでしょう。
　声は、店の脇の路地を抜けて反対側から聞こえてきていました。
　砂埃のなか倒れ込む初老の男性を、間一髪で受け止めます。

「大丈夫ですかっ！？」
「なにがあったんだ！？」

　老人を運び入れた長屋にて、紡がれる哀しい物語。
　長いので要約すると、借金のカタに末娘を連れ去られたらしいのです。

「マジかよ、そんな時代劇設定がリアルで起こるとか……」
「ほら、そんな遠い視線とかいいからっ……」
「すぐ助けるぜ〜オレのマドンナ〜っ！」
「ぁちょっ、燿助っ！？」

　速攻で、独り街道を駆ける燿助。
　追おうとする那由他を、老人が呼び止めました。

「ぇ、駄目って、なんでっ！？」

　曰く、賊の住み処は城下を出て半日ほど走り続けた場所にあると。
　そこには少なくとも、２０から３０人の屈強な男性ばかりが揃っているようで。
　さらにさらに、賊どもが『先生』と呼ぶ女性の凄腕用心棒がいるというではありませんか。

「たいへんっ！
　燿助独りじゃ到底勝てやしないわっ！」

　礼を告げ、那由他は明倫館へと走ります。

「おや、那由他さん。
　そんなに慌てて、いかがいたしましたか？」
「たっ……へっ……よ……すけがっ……」
「なに言っているのかまったく解らないでござるよ。
　ちょっとこっちに座って、落ち着くでござる」
「はいぃ、ありがとう、ございます……ふぅ〜」

　抱き留めたのは、ちょうど校長室を出ようとしていた葦原房姫（あしはらの・ふさひめ）でした。
　切れ切れの言葉に、真田佐保（さなだ・さほ）はうむぅと首を傾げてしまいます。
　なかへと通されお茶をいただき、一息。

「さて、なにがあったのか教えていただけますか？」
「えぇ、それが……」
「なんとっ、すぐに助けに行くでござるよっ！」
「ふむふむなるほど、城下を荒らす不届き者どものぅ。
　妾が行ければよいのじゃが、今日はどうしても外せぬ公務があるのでありんす……」
「大丈夫でござるよ！
　２人とも、拙者が必ず助けるでござるっ！」
「私も同行はできませんが、せめて各校の契約者にも連絡いたしますわ。
　後程、お２人のもとへ援軍が到着するでしょう」

　房姫の問いかけに、那由他はすべてを伝えました。
　結果、ハイナ・ウィルソン（はいな・うぃるそん）の助力は借りられませんでしたが、佐保がついてきてくれることに。

「皆さんっ、ありがとうございますっ！」

　那由他と佐保は、地図を片手に廊下を抜ける。
　あれでいて大切な相棒を、そして、攫われたという町娘を救うために。

このシナリオには、学校を問わずどなたでも参加が可能です。

ＭＣとＬＣの行動は、同じものでも異なるものでも構いません。
それぞれにおいてどのように立ちまわるかは、皆様の自由です。
キャラクターらしさの出る行動をおとりください。
台詞や心情表現も含め、具体的なアクションであればあるほど採用率が高くなります。
目的達成のために必要な道具などをお持ちになられる場合は、アクションにてお知らせください。
ほかのキャラクターやＮＰＣと絡みたい場合も、相手の名前を明記してください。

ＮＰＣ
　佐保＆那由他→明倫館を出発するところです。
　　　　　　　燿助→既に賊の住み処へと向かっています、急げば追いつけるかも。
　　　　　　　房姫→校長室にてお留守番なぅです。
　　　　　　ハイナ→公務中。

それでは、皆様のご参加とアクションをお待ちしております。

・燿助を追いかける。

・房姫とお留守番。

・那由他達に着いていく。

・賊との戦闘へ赴く。