コンロンの郊外にある広い緑に囲まれた劉玄白の屋敷。
「グゥゥウウゥウウウオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
その屋敷が空を裂くような轟音とともに紙くずのように崩れ、地面から機械仕掛けの巨人が姿を現す。
無骨な印象を受けるゴツゴツとした外見に加え、全長40メートルの巨人の前には背の高い木々も腰ほどの高さに留まってしまう。
コクピットに乗っていた玄白はそこから自分の広い庭を見下ろす。
「さて、迅雷。この大きさで走れというのはいささか酷だろうから、ゆっくり行こうか。すぐに終わらせるのは勿体ない。ゆっくりとコンロンを踏みつぶしに向かおう」
迅雷と呼ばれた巨人は木々を踏みつぶしながらゆっくり歩き始める。
屋敷から脱出した楊霞は玄白の忠臣である紅玉を連れて、巨人を見上げる。
「動き出してしまいましたか……一刻も早く破壊しないと……」
独りごちる楊霞に紅玉はバカにするように鼻を鳴らす。
「破壊? イコンでも出すつもりですか? ここはコンロンですよ? よそのイコンが群れでやってくることがあれば国境侵犯になるわよ? それに、騒ぎが大きくなればコンロンだって黙っていないわ」
「そんなことは分かっています。ですから玄白の敷地内でイコンを使わずにアレを破壊すればいいだけの話です。幸いにも広い庭ですから、アレが脱出するのとこちらが妨害を仕掛ければ動きは止まるでしょう。個人の敷地内で問題があってもコンロンは大事にはしないはずです。必要であれば生身の応援も呼べばいい」
楊霞は言いながら契約者達に目を向ける。
「皆さんをこんなことに巻き込んだのは今も心苦しく思っています。でも、もう一人で解決しようするはお終いにします。……ですからお願いです……僕に故郷を救う力を貸してください」
楊霞は契約者達に頭を下げ、木がなぎ倒される音と雷鳴のような鳴き声が周囲に轟いた。