葦原明倫館

　パラミタ内海に近い廃れた港町。
　シャンバラ教導団在籍の弓彩　妃美（ゆみさき　きみ）は、紫色の霧に閉ざされた海上を見つめていました。
「この向こうに、アーベントインビスの本拠地が……」
　遠くで駆ける閃光。
　鳴り響く轟音に揺れる水面。
　肌にピリピリと、緊迫した空気が伝わってきました。

「妃美ちゃん、調査資料あったよ」
　遠藤　寿子（えんどう・ひさこ）が転びそうな勢いで、大量の紙を抱えながら走ってきます。
　目の前までやってくると、寿子は急いで報告を始めます。
「犯人の名前はコルニクス。グランツ教の信者で間違いないみたいだよ」
「それと、この紫の霧は一般人から生命力を奪い取っています」
　寿子に続いて、アイリ・ファンブロウ（あいり・ふぁんぶろう）が話を続けます。
「そうして、弱り切った人達をなんらかの目的で連れ去っているようです」
　廃れた港町には人がいた気配があるにもかかわらず、住民の姿はありませんでした。

「早く助け出さないと、大変なことになる気がするわね」
「ですが、敵の本拠地の島には≪シャドウレイヤー≫が張り巡らされています。妃美さんが中で戦うには、この用紙にサインを――」
「はいはい。名前書けばいいんでしょ？」
　妃美はアイリから紙を奪い取ると、素早く名前を書きました。
　すると、妃美の体が光に包まれます。
「おお、なんか力がみなぎってきた。これならどんな奴が相手だって――何じゃこりゃ！？」
　光が消えると、シャンバラ教導団の制服が、可愛らしい魔法少女の恰好になっていました。
「言いませんでしたか？　これは≪魔法少女仮契約書≫。≪シャドウレイヤー≫内で魔法少女として活動するための物です」
「はぁ！？　聞いてないし！？　これじゃあ、コスプレみたいじゃない！？　全然かっこよくないじゃん！？」
「え！？　かっこよくないかな……？？」
　妃美の言葉に、寿子は困惑していました。

　アイリが呆れたように息を吐きます。
「カッコいいかどうかは、後でゆっくり話し合ってください。それより今は急ぎましょう」
「そ、そうだよね。逃げられる前に捕まえないと」
「ええ。霧を止めれば、犯人を見つけやすくなるでしょう」
「捕まえるのも重要だけど、祖母ちゃん達……捕まった人達も助けないとね」
　服装のことを諦めた妃美は、担いでいたショットガンを引き抜きました。
「ま、じっとしてても仕方ないわよね。ボチボチおっぱじめるとしますか」
「そうだね、行くよアイリちゃん」
「大丈夫。準備はできています」
　少女達は武器を手に、戦場の海へと飛び出して行きます。

　初めまして、またはお久しぶりです。
　虎＠雪（とらっとゆき）です。
　ここまでご覧になっていただきありがとうございます。

　以下、今回のシナリオについての説明になります。

　◇まず初めに

　参加制限はございません。
　「偶然居合わせた」、「救助信号を受信した」等の形で、ご参加いただければと思います。

　◇目的
　今回の目的は

　・巨大飛空艇の撃破と人質の救出
　・紫の霧≪バイオレットミスト≫発生装置の破壊
　・主犯格のコルニクスがいると思われる古城への突入

　になります。

　◇シナリオガイド追記

　〜経緯〜
　先日、アーベントインビスの闇取引現場が抑えられました。
　黒幕が教導団員だったことから、シャンバラ教導団は躍起になって調査に乗り出しました。
　そして、パラミタ内海に本拠地があることがわかった矢先、不気味な孤島が忽然と出現して≪バイオレットミスト≫が港町を覆い始めました。
　調査を行っていたシャンバラ教導団員は、襲いかかる敵に対し慌てて応戦を始めました。

　緊急コールを受けて駆けつけた妃美。グランツ教を追っていた寿子とアイリ。
　彼女達が到着した時には、奇襲を受けた調査団は辛うじて持ちこたえている状態でした。
　教導団本隊が駆けつけるまで時間がかかり、コルニクスに逃げられる可能性があります。
　事は急を要するのです！


　〜島を覆う≪シャドウレイヤー≫〜
　≪シャドウレイヤー≫内では一般人は活動できず、契約者も能力が大きく低下してしまいます。
　ですが、アイリの持つ≪魔法少女仮契約書≫にサインすることで、（魔法少女以外のクラスでも）一時的に魔法少女になって能力の低下から逃れることができます。
　ただし、強制的に魔法少女っぽい衣装に変更するため、男性などで恥ずかしい方は、動物などを模したマスコットキャラ（ぬいぐるみ的なイメージ）になることでも、同じように能力の低下を逃れることができます。

　また今回は、マスコットキャラになった男性限定の効果があります。
　魔法少女の近くでのみ、短い時間だけですが元の姿にマスコットのアレンジが加わえた姿になって戦うことができます。
　（『マスコット時と同じ耳や尻尾が装着』、『ドラゴンのマスコットから、本物のドラゴンのようになる』など。アクションでの宣言が必要です）
　ちなみに、魔法少女のエナジー（想い）を受けて、若干ステータスが上昇します。
　最初に使って一気に攻めるか、いざという時に残しておくか、それはキャラクター次第です。


　◇アクションに関して
　　戦闘は主に３チームに別れて行われます。

　・アクション『敵飛空艇の撃破』
　　敵の巨大飛空艇。
　　自立型小型迎撃兵器を撃ちだしてくる相手に、調査団の飛空艇は無残にも海上に散りました。
　　兵器は素早く、生徒達は常に空中での戦闘が強いられます。

　　巨大飛空艇への接近戦は対空砲火が激しくて難しい。そのため、まずは遠距離から機銃やバリアの破壊を行います。
　　
　　巨大飛空艇内部には、教導団員や近隣市民など捕らわれた人々がいます。隙を見て潜入し、助け出して欲しいです。
　　＊≪シャドウレイヤー≫はありません。
　　　女性は魔法少女に、男性はマスコットにならず活動できます。

　　必須能力：飛行
　　推奨能力：高い機動力と遠距離火力
　　参加ＮＰＣ：弓彩　妃美　
　　　　　　　　「私の祖母ちゃんが捕まってるの。お願い、力を貸して！」

　

　古城が佇む孤島。
　大半が森で囲まれていますが、中央にある古城の周囲だけは巨大な城壁が迷路のように形成しています。

　＊高度があがると≪シャドウレイヤー≫の影響や霧による視界の悪さが増します。
　　敵に狙い撃ちにされるため、城壁や森を飛び越えて移動するのは大変危険なので避けてください。

　・アクション『霧の発生を止める』
　　島には、≪バイオレットミスト≫を発生させている四つの塔があります。
　　狩人と魔法使いが潜む森を抜け、島の各所にある塔を制圧します。
　　霧が消えれば、主犯の捜索が楽になり、逃亡率を低下させることができます。

　　推奨能力：機動力と常に動き回る体力。魔法耐性。
　　　　　　　　視界が悪いので気配察知能力があると有効。
　　参加ＮＰＣ：魔法少女アウストラリス（アイリ・ファンブロウ）
　　　　　　　　「あまり時間がありませんね。皆さん一緒に頑張りましょう」

　・アクション『古城に突撃せよ』
　　槍や剣を持った≪アンデットナイト≫を蹴散らしながら、迷路の城壁を抜けて古城を目指します。
　　（霧で集めた生命力をエネルギーに変換して活動しているため、≪アンデットナイト≫は時間が経つと復活します）

　　城壁を抜けた先にある古城への入り口となる門。
　　そこには、奈落から生まれたと言われる凶暴で醜態な大型の化け物が待ちうけています。
　（全身から高熱を発し、硬い皮膚に覆われている。巨大な斧を振う）
　　ちなみに、魔力で強化された最後の城壁部分以外は、一定以上のパワーがあれば破壊して進むことも可能です。

　　推奨：パワーと速度　
　　参加ＮＰＣ：魔法少女ポラリス（遠藤寿子）
　　　　　　　　「はう〜、ちゃんとできるかなぁ……ううん。皆がいるんだから、弱気になっちゃだめだよね」

　◇最後に

　　以上が今回のシナリオになります。
　　バトルが中心になりますが、よろしければご参加ください。

・囮役を引き受ける

・無事に皆が帰還できるように

・古城まで仲間を導く

・救える命を繋ぎとめたい