葦原明倫館

　ヴァイシャリーにある大きな自然公園。
　普段は家族がピクニックに来たり、子供たちが元気に走り回っている公園なのだが今日は２月１４日。公園の様子もいつもとは違っていました。

『ヴァイシャリー・チョコアート展』

　掲げられた横断幕には大きな字でそう書かれている通り、今日はシャンバラから腕利きの菓子職人を集めてチョコのアートを展示したり、自分だけのチョコを作れたりと見て楽しむことも作って楽しむことも出来るお祭りなのです。
　ヴァイシャリーの職人たちはすでに公園で黙々とチョコアートを仕上げていき、このチョコアート展を仕切っているパッフェル・シャウラ（ぱっふぇる・しゃうら）、泉　美緒（いずみ・みお）、ラナ・リゼット（らな・りぜっと）、セイニィ・アルギエバ（せいにぃ・あるぎえば）の四人は順調に作業が進んでいく様子を見て、笑みを浮かべていました。
「ここまでやればもう大丈夫だね。後は他所から職人さんが創ったチョコが届いたら、後はみんなに楽しんでもらうだけだし」
　セイニィはイタズラっぽく笑って見せます。
「成功するといいですね。いえ、ここまでやったのですから必ず成功させましょう」
「当然……大切な人と触れ合うのはみんな好き……成功するに決まってる……」
　ラナの言葉にパッフェルは静かに答えます。
「……あら？　皆さん、あちらから誰かいらっしゃいましたよ？」
　のんびりした口調で美緒が指を指した方角を三人が見ると、菓子職人の一人が息を切らしながらこちらに走ってきました。
「た、大変です！　さっき連絡でこっちに向かってきてる菓子職人たちが移動中に事故に遭ったみたいで、運搬中だったチョコの作品も破損してしまったと！」
「ええ！？　もうチョコアート展まで時間が無いよ！？」
「落ち着いてくださいセイニィ様」
「美緒……」
「落ち着いて今からタイムスリップする方法を模索しましょう」
「駄目だ！　完全に錯乱してる！」
　二人のやり取りを尻目にラナは菓子職人に真剣な眼差しを向けます。
「とりあえず、完成している作品はどれだけあるのですか？」
「それが……あれだけしか……」
　そう言って菓子職人が指差した方向には美緒とパッフェルの等身大のチョコの像だったのです。
　ですが、その像の二人は──何故か服を着ていませんでした。
　その代用をするように本物のリボンが二人の像の身体を優しく包んでおり全裸よりよっぽど官能的な仕上がりになっていたのです。
「……何をしているんですか貴方は……」
「申し訳ありません……他に紛れたら芸術的だと思ったのですが……」
「あれだけだと……ただのえっちな像……だね」
　パッフェルがハッキリと言うと他の三人は急速に赤面しました。。
「うう、あ、あんなハレンチな像だけなんて問題がありすぎます！　は、早く次の手を考えないと」
　爆発しそうなほど顔を真っ赤にする美緒を見てセイニィはよし、と気合いを入れます。
「と、とりあえずお客さんの中でチョコを作って展示してみたい人を当たってみるよ」
「それなら私は百合園に応援を呼びかけてみます！」
　セイニィに続くようにラナも公園を飛びだしていきます。
　残された二人は自身の姿を象った像をジッと見上げて、とりあえず人目につかないように布を被せました。

　初めましての方は初めまして。
　そうでない方はお久しぶりです。
　ゲームマスターの西里田篤史です。
　今回のシナリオの目的は人手不足のチョコアート展を無事に成功させることです。
　舞台はヴァイシャリーですが、ラナとセイニィは手分けしていろんなところに連絡
をしているので、「ラナから連絡を受けた」「チョコアート展のチラシをもらって興
味があって来た」といった理由で、どの学校の生徒も気軽に参加してください。

　どうぞよろしくお願いします。


■チョコアート展
　チョコアート展はどこも人手不足です。
　チョコでアートを作るＰＣの方は自分が芸術だと思う物であれば特に制限はありま
せんが実現が不可能な代物（全長百メートルのチョコの像）なものに関しては世界観
に合うように修正させていただく場合が御座います。
　ただし、官能的・扇情的になりすぎるものについては展示許可が下りない場合があ
りますので、ご注意ください。

　アートを作らないＰＣの方もチョコが溶けないようにフォローする、お客さんにチョコを販売するなどの裏方の仕事での参加も出来ますし、アート展の見学に来てＮＰＣと絡んでいただいても問題ありません。

また、その他の場所でも人手は不足しています。
ここだったら自分は活躍出来る！　と言うところがあれば参加してみてください。
皆さんの力で、このイベントをド派手に盛り上げましょう。

・　チョコアートに挑戦する。

・　ＭＣがＬＣにチョコを渡す。

・　全身チョコ塗れになって像のフリをする。