葦原明倫館

　今ではすっかり『夏雫』開催時の賑やかさはなくなり、葦原明倫館には厳かな雰囲気が漂っています。やってくるのは龍杜　那由他（たつもり・なゆた）と皇　彼方（はなぶさ・かなた）。共に『夏雫』を観覧した２人は舞いの素晴らしさに魅了され、是非舞い人をやってみたいと思っていました。
「でも、あなた舞い装束なんて着れるの？」
「ばっ……オレにだって着れる！　……多分」
「ふふ」
「けど、あれって伝説の舞いなんだろ？　次いつ開催されるかわかんねぇじゃん」
「いいえ、『夏雫』みたいな規模の大きいものじゃないけど、あちこちで舞いを披露してるみたいよ。舞い人をやってた友人から聞いたわ。というかあなた、どうして明倫館に来たの？　蒼空学園は授業ないの？」
「いや、『夏雫』見に来た時に忘れ物しちゃってさ。聞いたら主催者側で預かってるっていうから取りに来たんだ」
　なるほど、と頷いたのも束の間。那由他がぴたりと歩みを止めました。
「どうした？」
「……嫌な予感がするわ」
　その予感は見事――いや、この場合は不幸なことに、というのが正しいかもしれません。学内から悲鳴が聞こえ、天井から学生が降ってきたのです。
　駆け寄ろうとする２人ですが何かがおかしい。天井から降ってきた学生の顔面は真っ白で、目が黒く濁っています。目元には紅の朱がさしており、髪の毛は白銀の色。不自然に大きい口からは呻き声しか出てきません。
「……明倫館にこんな学生いたっけか？」
「いいえ、いないわ。あたしにも分からない……」
　那由他が口を引き攣らせると、後ろから同じ呻き声が聞こえ、２人は振り返りました。するとそこには目の前の人間らしき人物と同じ姿形をした者達がたくさんいました。数にして５万は超えているようです。皆、２人の方へと拙い足取りでにじり寄ってきます。
「……何が起こってるのか分からないわ。けど、何かが起こっているのは確かね」
「まずいな。何とかしないと明倫館にいる学生にも危害が及ぶ」
　どうすれば良いか混乱している間にも、その者達――白塗り人間は２人へとにじり寄ってきます。
　その時、彼方が白塗り人間の遥か後方にいる、特別際立った美しい少女を見つけました。ウェーブのかかった白銀の髪に、紅の眼。黒のフリルワンピースは和柄で、足はうっすらと透けています。頭には同じく和柄のヘッドドレスを付けて、見事な和洋折衷……と思いきや、突如少女が片手を上げました。
「なっ……まじかよ」
「身体が、動かない……！」
　彼方と那由他はその場から一歩も動けなくなってしまったのです。
　白塗り人間の大群は徐々に近づいてくるのに、これではなす術がありません。

「これじゃこのままお陀仏だぜ。くそ、どうすりゃいいんだ！」

久遠 奏唄(くおん・かなた)です。悲劇の歴『磔天女』のシナリオガイドを公開致しました。
続編とは銘打っていますが、「今回が初参加です」という方でもお気軽にご参加出来る物語となっております。
前作に参加していないから今作は活躍出来ない、ということは決してございませんのでご安心ください。



○背景
「明倫館にいる学生を発見・救出」「事件の原因究明」「那由他達の護衛・白塗り人間の退治」「美しい少女について捜査・接触」の４つが主なアクションになります。この内の１つが欠ければ任務失敗の可能性が高まります。
　舞台は葦原明倫館。ですがどの学校に所属されていてもご参加可能です。授業が始まる前なので学生達の姿をたくさん見かけるのですが、不自然なくらい学内は静まり返っています。
　聞こえるのは白塗り人間の呻き声のみ。もしかしたら白塗り人間は明倫館の学生なのではないでしょうか。もしそうであれば無闇に傷つけ倒すのは御法度です。
　白塗り人間の正体が学生でもそうでなくとも、どうしてこのような事態になったのか原因究明をする必要があります。もしかしたら『夏雫』に関係があるのかも……。学生の姿があまり見えないので聞きこみは難しいかもしれませんが、梅雨の宴『夏雫』の主催者がもし無事であれば話を聞けるかもしれません。
　また、あの美しい少女は一体何者なのでしょうか。こちらも梅雨の宴『夏雫』の主催者や生徒に聞きこみ、文献等で調査する必要があります。那由他達を動けなくしたのは間違いなく彼女といって良いでしょう。危険な人物と思われますので特に注意してください。


○梅雨の宴『夏雫』の主催者
　梅雨の宴『夏雫』の主催者は葦原明倫館の女学生です。華摘（はなづみ）という苗字だそうです。ロングの黒髪に目元がちょっと吊り上がった勝気な性格ですがその他の詳細は不明です。華摘は初めて開催された『夏雫』を見たことがあり、何か事情を知っているかもしれません。


○白塗り人間と美しい少女について
　白塗り人間は身長１６５センチ前後で体格は普通。物理攻撃のみを使用します。１人のレベルはＬｖ．２５と見ていいでしょう。しかし数が多過ぎる為、実力行使で全員倒すことは不可能です。白塗り人間達を倒す方法を見つけることが必要不可欠となります。
　美しい少女は身長１７０センチで体格は細身。金縛りや打撃攻撃を使用します。レベルはＬｖ．８０と見ていいでしょう。少女には物理攻撃のみしか通用しない上に不死身ですので、こちらも少女を倒す方法を見つけることが必要不可欠となります。


○補足
「明倫館にいる学生を発見・救出」……明倫館内は白塗り人間で溢れ返っていますが無事な学生もいるかもしれません。白塗り人間に危害を加えないよう、慎重に探索をお願い致します。「事件の原因究明」……明倫館にある文献を調べたり、聞き込みを行います。上記と同様、白塗り人間に危害を加えないよう、慎重に究明をお願い致します。
「那由他達の護衛・白塗り人間の退治」……白塗り人間を殺さない程度に攻撃したりして、救出された学生や那由他達の護衛をお願い致します。護衛がいないと学生や那由他達の身の危険が一気に高まります。また白塗り人間を倒す方法を見つけたり、他の人に訊ねて知る必要があります。
「美しい少女について捜査・接触」……美しい少女は危険な人物と見ていいでしょう。少女について慎重に捜査・接触を試みてください。少女を倒す方法を見つけたり、他の人に訊ねて知る必要があります。


○お願い
　今作が初参加という方は、前作の「梅雨の宴『夏雫』」は、参加者として見に行ったという設定になります。
　もし、「参加者として見に行ったが舞いに惹かれてその後舞い人を志願した」「舞い人だったが怪我の為断念した」等設定を変更したい方がいらっしゃいましたらその旨を記述していただけると助かります。
（前作に参加してくださった方は、前作での設定を引き継ぎます）

・明倫館の学生を発見し、救出する。

・事件の原因究明をする。

・那由他達の護衛をする。

・美しい少女について捜査・接触