シナリオガイド
暴走する守護天使は道連れを求めてクリスタルの矢を放つ。
シナリオ名:壊獣へ至る系譜:陽光弾く輝石の翼 / 担当マスター:
保坂紫子
――空京。
ある晴れた日の昼下がり。
先日死者達が溢れたことで広まった噂により幾分人の足が遠のいたその公園を一組のカップルが腕を組んで歩いています。
蒼空学園の制服を着ていますが今日が休日ということを鑑みるにどうやら制服デートの様でした。
「やーん。ここって前にゾンビとか出たって言ってたじゃないー、あたし怖ーい」
「だーいじょぶだって! 俺が守るって」
「いやーん。素敵ー、惚れ直しちゃうー――きゃっ」
なんてきゃっきゃしている途中、彼女が前につんのめるように転んでしまいました。しかしがっしりと腕を組んでいる為倒れずに済みます。
「どうした?」
「なんかぁ、足が……」
何事かと膝下まで捲り自分の足を見た女生徒は青ざめます。
脚部の肌は透明になっていました。
「ねぇ……どういう、こと?」
そして、感覚がありません。
「どういう事!!」
守護天使の彼女の叫びに、彼氏も何がどうなったのかわけがわからず、助けを求めるように首を巡らします。
そして、光を目撃しました。
噴水は今、光の乱反射に燦々と煌めいていました。
「熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、アツイィッー!!」
七色の艶を帯びた光を纏う守護天使は体内に内包する熱に耐えられず噴水に浸かりザバザバと水音も激しく暴れると、水飛沫を水蒸気へと変えていきます。
同時に熱いと叫ぶ度、周囲に凝る光の矢を放ち、周囲の地面や木々を射ってはクリスタル状に結晶化させてしまいます。
虹色に艶めく透明な六枚の翼は覚醒を得て更に煌々と輝き、遥かに眩しい存在へと変態していくのでした。
駆けつけ、地面に落ちている自分の本体たる厚手のアクリル板の様な魔導書を拾いあげた手引書キリハ・リセンは王 大鋸(わん・だーじゅ)に軽く会釈します。
「おい、何がどうなってやがる」
問われて少女は「事故です」と即答しました。
「『事故』が発生しました」
「事故?」
守護天使のやり取りの後の突然の出来事に驚いているのはどうやら大鋸だけの様で、ベンチに背中を預けている破名・クロフォード(はな・くろふぉーど)の顔を両手で挟み込み様子を伺う手引書キリハは努めて冷静でした。
「『共鳴』も始まってますね。此処は街中ですから影響もすぐ出るでしょう」
考えて、大鋸を見ます。
「王は何か聞いていますか?」
「聞いてって、二人で話して、クロフォードが叫んで……」
「詳しくはわからないと解釈しても?」
思い出すが要領を得ていない部分が多く細部まではと頷いた大鋸に手引書キリハはすぅっと顔から表情を消しました。
「では『命令文』も聞いてませんね?」
「命令、文?」
聞き返されて手引書キリハは律儀に頭を下げ、ベンチの上に仰向けに横たえさせた破名の頬を叩きます。
「クロフォード。キリハです。私がわかりますか?」
開く紫色の瞳は瞬くこと無く虚ろで、少女に対し反応しません。ただずっと独り言を話しているらしくゆるゆると唇を動かすばかりです。
大鋸、手引書キリハの二人の耳に暴走する守護天使の咆哮が空気の振動を伴って届き、ジンとした痺れを残します。
見遣ると守護天使の指先も翼同様透明に澄んで結晶化している様でした。
「『暴走』が封印型、しかも経過が早いですね。クロフォードの状態も良くないですし……それにしても『命令』を聞いて『欠けた系図』を起動するなんて……なんて仕方が無い人」
諦めの色濃く呟いて、少女はハンカチを取り出すとそれで破名の顔上半分を隠しました。
「どちらにせよ完成形でない以上、失敗は失敗ですからね。ただ事態が悪化するだけですから、私は動きますよ」
緊急であれば猶予は無いと即断し、
「非常事態発生の為、私手引書キリハ・リセンがこれより楔、及び系図の権限の一部移行、また、現在実行されているプログラムの強制終了の作業を始めます」
開始宣言に声を張り上げました。そして、マニュアル通りの手順を踏みながら事の対処にあたります。
宙に固定された魔導書を中心に金に光る白い古代文字と銀に光る白い古代文字がそれぞれの法則に則って展開解放されていきます。
「クロフォード。私が尽力しますから全権の放棄だけはしないでください。どうか気を失わないで。
それに、事がこれ以上大きくなる前に帰りましょう。こんな事故が発生したなんて、そんな汚点を『未来の子供達』に残すべきではありません」
こうしている間にも守護天使の共鳴は続いています。
翼が翼を伝い、波紋のように広がり、彼らがその変異に気付き苦しみだすのも時間の問題でしょう。
「まだ間に合います。間に合いますから、しっかりして下さい」
消え入るように小さく囁き、必要な情報を光の文字に変換させ展開、拡散する少女は、大鋸に振り返りました。
「王、二つほどお願いがあります」
「何だ?」
「ひとつは、共鳴の発生源をこの場に留める事ができる方を。ひとつは、私に協力してくれる方を。何人か至急この場にお呼びできませんか?」
できれば全てを内密に出来る人を。という言葉を手引書キリハは飲み込みました。
言えば望んだ通りになるかもしれません。が、それを説明している時間すら惜しかったのです。
「もし、今暴走している守護天使が意識を失った、或いは封印されてしまった場合、同時にクロフォードが意識を手放し私の対処が遅れた場合、この共鳴を止める術がありません。
共鳴が広がれば守護天使という種族に致命的な傷を残します。それだけは、そんな最悪のケースだけは避けたいのです。お願いできますか?」
「……共鳴ってなんだ?」
共鳴の単語に大鋸は覚えがあります。
問われて、少女は下唇を噛み締めます。この時になって漸く見せた不安げな表情でした。魔導書から開始コードを引き出す手が震えています。
「説明は致します。今はどうかただ……ただ力を貸してください。お願いします」
兎にも角にも早くこの事態を沈静化させ、できれば無かったことにしたいと願う少女は立ち上がると深々と頭を下げて助けを請いました。
担当マスターより
▼担当マスター
保坂紫子
▼マスターコメント
はじめましての方もお久しぶりな方も、こんにちは。保坂紫子と申します。
どうぞ宜しくお願い致します。
空京にある公園の噴水に、『周囲の守護天使を結晶化してしまう』奇妙な守護天使がおり、暴走しています。
そこに居合わせた王 大鋸が、
・この暴走している守護天使が移動しないように留める者
・手引書キリハ・リセンへの協力者
を求めています。
また、以下はPL情報ですので、ご注意ください。
■種族:守護天使への影響について。
守護天使への影響は主に結晶化です。
手足の末端から透明になって結晶化していきます。
また同時に周囲に羽根を模したエネルギー体の矢が出現、形の形成が終了後パートナー目指し撃ちだされ、射られた部分が結晶化されていきます。その命中率は高く躱すなり受けるなりの手段は必要かと思います。
■暴走する守護天使について。
守護天使です。金髪碧眼の男性です。
研究資料を魔女ルシェード・サファイスに奪われ、後日返すからと連絡を受けて待ち合わせた公園で破名と出会いました。この出会いに興奮し勢いのまま破名に自分の系図起動を命令してしまい、そして現在暴走しています。
今は噴水に留まっていますがいつ移動するかわかりません。
また、透明なクリスタル状への結晶化を促すエネルギー体の矢をところ構わず放っています。射られた場合その部分が無機有機に関わらず結晶化します。
また、種族・守護天使に結晶化を促す共鳴の発生源でもあり、彼の移動は被害拡大をもたらすだけですので、できるだけその場に留めていただきたく存じます。
また、当人も徐々に結晶化していきます。
■手引書キリハ・リセンについて。
魔導書の黒髪茶眼の少女です。
事態の収束に尽力しています。が、これは一人では行えず、人手を必要としています。
通常であれば具現化された古代文字の操作をお願いする形になります。直接手に触れてパズルの様に動かします。ただ高温ですので火傷等には注意してください。
また状況によっては破名の負荷の軽減をお願いするかもしれません。この場合著しい負荷を負うことになりますので、最低でも激しい頭痛に耐える覚悟が必要かと思われます。また、人格及び記憶等の完全な保全保証ができませんのであしからず。勿論、辞退も可能です。
※当シナリオで発生した人格記憶障害は今回限りの影響です。他のシナリオ等には全く影響いたしません。
■破名・クロフォードについて。
悪魔の白髪紫眼の青年です。
第三者の命令を聞いて欠けた系図を起動し、ベンチに横たわって暴走の負荷になんとか耐えている様です。
■公園について。
空京にある噴水を中心にした比較的大きな円形公園です。
先日の死者達の騒動が噂を呼んでいるせいか幾分人の足が遠のいています。
木々が外周に植えられている為外部からはわかりづらいですが、噴水周辺から光が周囲に乱反射して内部の一部が煌々としています。
▼サンプルアクション
・暴走する守護天使の足止め。
・手引書キリハ・リセンに協力。
▼予約受付締切日
(予約枠が残っている為延長されています)
2013年10月29日10:30まで
▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)
2013年10月30日10:30まで
▼アクション締切日(既に締切を迎えました)
2013年11月03日10:30まで
▼リアクション公開予定日(現在公開中です)
2013年11月14日