葦原明倫館

「――えっと。ここ、どこだろう」

　リーナ・ブリーゲル（りーな・ぶりーげる）は目の前に広がる見知らぬ街の光景に戸惑いの声を漏らしました。
　ヒラニプラ地方にある彼女の暮らす街。
　『艦（ふね）の街』と呼ばれるその街の地下にある遺跡を探索中、リーナは気付くと見知らぬ街中に立っていました。

「遺跡の奥に下りる階段を見つけて、とりあえず確認だけしておこうと思って――」
　リーナは自分の行動を思い返します。
　それはたった今のことのはずなのですが、周囲を見渡すほどに自分の記憶に自信がなくなっていきます。

「だったら遺跡の中、のはずですよね……でも、空があって」
　リーナは自分の来た道を振り返りますが、そこに辿ってきたはずの階段はありません。
　階段を下りた時、何かの光を目にしたような記憶はありますが……

「夢？　でも、そんな感じはしませんし――」
　リーナは自分の頬を思いきりつねってみます。
「……いたいれふ」
　少なくとも、ただの夢という訳ではないようです。

「おねえちゃん、きかいをつくるひと？」
　小さな女の子がリーナに声をかけます。
「え？　……ええと、うん。まだ見習いですけどね」
　リーナは戸惑いながらも答えました。

「えるのお父さんもそうなの。あれをつくったんだよ」
　女の子はエレノールという名を名乗りました。
　街の中心なのでしょう、小高い丘にある光を指差します。

「――大きな結晶ですね」
「『ゆめをみるはこ』って言うんだって。よくわからないけど、すごいの」
　リーナはその名前を最近どこかで聞いたような気がしましたが、よく思い出せませんでした。

　エレノールが、急に胸を押さえて苦しみだしました。
「だ、大丈夫ですか！？」
「……ほんとは、おそと、だめなの。でも、お父さん、かえってくる、から」
　医学知識には詳しくないリーナにはよく分かりませんでしたが、エレノールは何かの病を患っているようです。

　――風景が、歪みました。

「……なんですか、これ」
　足元から、あるいは頭上から、黒い影が湧き出てきます。
　それは巨大な獣の姿となって、何匹も、何匹も。
「――え」
　リーナは抵抗することもできず、その影に飲み込まれてしまいました。

　　　　　／

「――何度でも、繰り返す」
　巨大な結晶を背にして、ヒトでない何かは呟きました。
「死者の記憶。絶望の記憶。繰り返し、繰り返し、貶める」
　その『何か』は、結晶の力を利用して魂から生まれるエネルギーを蒐集しているのです。

「足りない。まだ、足りぬ」
　悪夢を繰り返す箱庭に、怨嗟の声が響きました。

『夢を見る匣』および『機工士少女奮闘記』の続編となりますが、独立したシナリオなので初参加でも問題ありません。

目的としてはリーナの救出、及び箱庭を破壊し死者の魂を解放することになります。
※上記にて影に飲み込まれてはいますが、リーナは一応無事です。接触を希望する場合、気を失った状態の彼女を発見することができます。

箱庭内部から外部への連絡は可能であったため、教導団先遣隊などを通して下記の内容を知ることができます。

箱庭は『夢を見る匣』のプロトタイプと“何か”の力によって維持されています。
そのため“何か”、つまりボスを撃破し、結晶を破壊すれば脱出することが可能です。

箱庭においては、古王国時代の様々な悲劇を繰り返し再現し続けています。
例えば当時に生きていたＰＣなどで、死に別れた相手が存在するならその相手に接触することができます。
※あくまで「再現」のため生存させることは不可能ですが、対話などを希望する場合、アクションにキャラクターの設定と会話や行動の内容をお願いします。

黒い獣の影は箱庭内で人物が死亡すると発生します。
強力かつ際限なく湧き出てくるので、倒しきることは不可能です。
ただし、通常の戦闘によってダメージを与えることは出来るので、撃退すればボス討伐への時間稼ぎになるでしょう。

“何か”の正体は遥か昔、別大陸の滅びから逃げ延びたオリジナルの『魂の逸脱者（ソウルアベレイター）』の一人だと目されています。
どうやら、人間の死から生まれる絶望の感情を蒐集し、自らを維持するための糧としているようです。
説得は難しいでしょうが、対話の余地はあるでしょう。
※対話を優先するＰＣがいる場合、「問答無用で倒す」などの希望は叶えられない場合があります。

・ＰＣの過去の人間関係が見たい

・大量の敵との燃える戦闘！

・ＰＣと黒幕のやりとりが見たい

・戦闘で解決！