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【逢魔ヶ丘】戦嵐、彼方よりつながるもの:前編

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【逢魔ヶ丘】戦嵐、彼方よりつながるもの:前編

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シナリオガイド

超高空の孤島に巨大移動要塞出現。
シナリオ名:【逢魔ヶ丘】戦嵐、彼方よりつながるもの:前編 / 担当マスター: YAM

 パラミタ大陸の全住人の魔族化を目論む反社会集団『コクビャク』が、その計画達成のために手に入れようとしている超高空の浮遊島パクセルム島にある、封じられた謎の施設、『丘』。この『丘』を巡って現在、島の住人である守護天使たちで組織する自警団と空京警察機動隊の「連合軍」は、コクビャクとのにらみ合いを続けていました。
 コクビャクの切り札は、非魔族に魔族の原本能を植え付け魔族化するという秘薬『黒白の灰』。それをパラミタ大陸全土にばらまくために必要な施設こそが『丘』なのですが、

「『丘』を開放しなければ、まず大陸に先駆けてこの島に灰を散布することになるだろう」

 そのようにコクビャクは脅しをかけてきました。

 しかしパクセルム島側もむずむざと屈しはしません。
 彼らは、この『丘』を開き、中にある施設を動かすためには『灰の娘』と呼ばれる特殊な生体を持つ人物が必要とされることを知っていました。それに相当するのはかつてこの島の住人だった守護天使の少女エズネル――現・魔鎧「ペコラ・ネーラ」であるが、彼女は製作者の魔鎧職人ヒエロ・ギネリアンとともに行方不明であり、彼女の代役として目を付けているのがエズネルの魂の欠片を自分の魂の中に持つ地球人の少女・綾遠 卯雪(あやとお・うゆき)であることも。
 その卯雪は現在、肉体の乗っ取りを警戒して石化状態のまま、『丘』の近くにある小屋に収容されており、連合軍の保護下にあります。

「この島に不当に手出しをするなら、綾遠 卯雪は彼女に対する不当な侵害から守るため、この島の秘伝の特殊魔法技術によって半永久的睡眠状態にする封印を施す用意がある」

 卯雪はコクビャクのブレーン的存在である奈落人タァの手により拉致された時、魂を『丘』のセッション準備用生体システムに接続されたため、『丘』から遠くへ移動できない状態にあります。が、古王国時代に王国守護のため結界開発に携わった精鋭の末裔である島の守護天使たちの、結界・封印技術はさしものコクビャク、タァをも手こずらせるでしょう。
 こうして双方の要求がぶつかり合い、島の戦線は緊迫を孕んで膠着していました。



 そのさなか、突然、島の上空にコクビャクの巨大移動要塞が出現しました。
 今までの小競り合いの中で飛来したのとはケタ違いの大きさと堅固さを持つ、まさに要塞。
 丘の頂上に立つ、以前の抗争で半分に折れた大木の上空に留まった要塞の入口から、数人の有翼の武装兵が飛び出してきて、要塞を背に守るように空中に留まりました。
「あれは……!」
 それを見た島の自警団員たちの顔色が変わりました。それは、今までのコクビャクとの闘争の中で、『黒白の灰』を浴びて魔族化し、半ば洗脳されるようにコクビャクのもとに下った、かつてのパクセルム島自警団員たちだったのです。
 彼らは今は完全に、コクビャクの手先として洗脳されているようです。

「我らの要求をのめば、彼らの洗脳を解き、この島に返してやろう。
 だが断れば、彼らを先に立ててこの島を攻撃する

 新たな難題が突きつけられました。



 *******


 緊迫の度合いを増すパクセルム島に近付く、一艇の小型飛空艇がありました。
 コクビャクのものでも、空京警察のものでもありません。

「……なんだ……この感覚……くっ、もう少し…だというのに……!」

 操縦していたのは、翼の折れた守護天使の男。
 かつてこの島の自警団を率いていたザイキ・メオウルテスという人物です。
 操縦桿を握りながら彼は、突然体を襲う感覚に顔を歪め、脂汗をかいています。それが、黒白の灰に侵された者の脳を操るためにコクビャクの要塞が発している呪の念波が、同じく灰に侵されている彼の体に堪えているためだということに、ザイキは気付く由もありませんでした。
 飛空艇の後部席にはもう一人、魔鎧を纏った悪魔が乗っていますが、彼はザイキの変調に気付いていません。
 ――彼もまた、ひとり自分の中の「何か」と戦っている最中だったのです。


(うぅ……っ……あぁぁぁっ!!)

 ついにザイキは正気を保てなくなり、操縦不可能になった飛行機は、戦線から離れた島の外れの森林の中に不時着しました。
 ――ほぼ全島民を総動員しているコクビャクとの戦線から遠かったため、気付いた人間は少なかったようです。

 やがて森林から、凄まじい勢いで魔鎧を纏った男が飛び出してきました。
 ――彼もまた、正気を保つ戦いに負け、その身を血に飢えた狂気に委ねて飛び出したのです。
 幾多の血を吸った長剣を手に。



 やがて、緊張の中にある戦線に、思わぬ動揺が走りました。
「一人で切り込んできた戦士が……!」
 彼には戦況も、敵同士の主張の正邪を判断する力もありません。地上に展開する天使たちの兵群に切り込んでいったかと思うと、悪魔の魔力を乗せた剣の振りによる魔導波を放って空中のコクビャクの兵士たちにも攻撃します。何が標的なのか、滅茶苦茶です。しかし、一騎当千の凄まじい魔力でもありました。防御を考えない、ただ破壊への衝動に憑かれた捨て身の攻撃だったからです。
 それが、一体何者なのか。
 コクビャクにも連合軍側にも分からないまま、たった一人の狂戦士(バーサーカー)によって膠着の戦線に落とされた波乱のひとしずくは、緊張の反動も相まってあっという間に両軍の拮抗を崩して混乱を引き起こしました。コクビャクは、先兵を要塞から下ろし、天使と警察部隊も応戦を始めました。戦線のあちこちで小規模な衝突が無秩序に起こり出しました。
 また、実はコクビャクは尖兵の一団を一足早く、卯雪を収容した小屋近くに送ってもいました。


「!!」
 小屋の中で卯雪に付き添っていたキオネ・ラクナゲン(きおね・らくなげん)、そして刀姫カーリアは、戸外から感じた魔力の波動にハッとして立ち上がりました。
「ヒエロ……!!」
 カーリアは髪を結わえていたリボンを解くとそれを大剣に変え、小屋の外に飛び出しました。
「カーリア!!」
「ヒエロがすぐ傍まで来てる……必ず、ここに連れてくる」
「だが、ヒエロは多分……!」
「分かってる。たとえ……あたしのことが分からなくて一戦交えることになったとしても、絶対ヒエロは殺さないし、あたしも死ぬつもりはない。
 ヒエロを連れ帰るのが……あたしの目的だもの……!!」
 カーリアは、小屋を守るべく配置された警察の機動隊たちをかき分けて戦線へと向かっていきました。



 *******


 コクビャクの移動要塞は堅固な二重構造になっています。
 城塞のような外回りの中に、特殊な石材で出来た卵のような閉ざされた「特殊防護室」があるのです。そこにはタァと最高クラスの幹部数人の居室、そして取扱に注意を要する『黒白の灰』保管庫があるのです。
 その部屋には、コクビャク構成員といえども勝手に出入りは出来ません。セキュリティも再厳重になっています。
 その部屋から出てきたタァは、一人の幹部の体に憑依して、要塞のコントロールルームに入っています。そこに置かれた大きな機械――かつてザナドゥのバルレヴェギエ家で保管されていた時空転移装置を、何やらいろいろと弄繰り回していました。この機械によって、要塞はザナドゥから直接パラミタ上空のこの島の真上まで到達できるのです。
 やがて、タァは幹部の体を離れました。
「タァ様? ……一体、この機械の何が気になるんです?」
『……なんでもない。ただ……
 ……やはり、とうさまは……さいごに、これを……いや、』
 そこへ、コクビャクの兵が一人、入ってきました。
「タァ様、そこにいらっしゃいますか!?」
『どうした』
「例の娘の小屋への潜入の道筋がつきました。そろそろ『灰』のご準備を……!」
『……いや、』
 姿なきタァの声は、妙に覇気がありませんでした。
『あれは……さいごのきりふだだ。まだだすことはないだろう』
「タァ様……?」
『わたしは、へやにもどる。あとでそのそうちのきどうデータメモリーとかぎを、わたしのへやにもってこい』
 その言葉を残し、どうやらタァは去っていったようでした。
 タァの気配が消えると、幹部の表情がやや狡猾そうな暗い表情に変わります。タァがいる時にはしない顔です。

「……いかんな。どうもこの頃奴さん、死んだ父親の足跡追う方に気が散ってやがる。
 我らが悲願成就の大詰めの局面だって解ってるんだろうか?
 やっぱり……知能は高くても所詮はみなしごのガキ、ってことか……」

 低い声で呟くと、獣のような目で、例の特殊防護室の方を見ながら最後に吐き捨てるように呟きました。

「あの小娘の直接管理している『改良型の灰』さえ我々の自由にすることができれば、奴なぞの言いなりにならず、自由に島を攻撃できるものを……!」



 *******


「――以上が、彼が最後にテレパシーで送ってきた内容です」

 空京警察でそう話しているのは、魔道書・パレットです。最近彼とパートナー契約した杠 鷹勢(ゆずりは・たかせ)の姿も傍らにあります。
 パレットには、自身と対になるともいえる存在である禁書・『万象の諱』がありました。が、その書は数奇な運命の紆余曲折を経て、カーリアやキオネの製造主である魔鎧職人ヒエロ・ギネリアンの手によって、魔鎧『グラフィティ:B.B』として生まれ変わったことが最近になって判明しました。パレットはこのグラフィティ:B.Bの行方を捜していました。
 そんな中、グラフィティ:B.Bが夢の中でパレットにテレパシーを送ってくるようになったというのです。

「彼は俺と異世界で再会した後、製造主のヒエロ氏を捜してパラミタを旅していたが、それがコクビャクと繋がるものだと知って……
 コクビャクがその構成員を魔族から採用していると知って、身分を偽って自分を売り込み、コクビャクに潜入したんだ。
 今はあの浮遊島の上空に飛来した移動要塞の中で、構成員の一人として働いている。
 夢で彼は俺に、要塞内に潜入するための通路を教えてくれた。
 だが、奈落人タァや幹部のいる最深部のセキュリティは厳重で迂闊に入れないらしい。
 それを探っている時に、彼はこの、最後にコントロールルームで見聞きした光景を俺に伝えてきて……それっきり、連絡が取れなくなった

 パレットは、要塞内でグラフィティ:B.Bの身に何かが起こったのではないかと心配していました。
「潜入経路が分かるのなら、警察の機動部隊を用意しよう。だが……」
 捜査本部長の言葉に、パレットは固い表情で頷きます。 
「えぇ、彼の身柄を確保するまで……突入は、しばらく待ってください……」
 パレットの隣で、鷹勢も懸念げな表情で頷きました。

担当マスターより

▼担当マスター

YAM

▼マスターコメント

 こんにちは、YAMです。
 【逢魔ヶ丘】シリーズ最終章前編です。よろしくお願いいたします。
 コクビャクとの全面対決です。初めてのご参加も歓迎いたします。お気軽にどうぞ。


【戦線の状況】
 『丘』を中心にあちこちで小規模なぶつかり合いが起こっています。
 その混乱の中に、乱入した“狂戦士(バーサーカー)もいますが、位置は定かではありません。
 コクビャクの兵は、平均的な、剣や槍等で武装した魔族の兵です。中には魔鎧を装着した者もいるでしょう。


【卯雪のいる小屋】
 中には石化状態の卯雪、キオネと数人の(不測の事態に備えての)医療関係者以外がいます。
 もちろん周囲は警察や守護天使の兵士が守っていますが、コクビャクの尖兵が数人、小屋へと向かっているのも事実です(PL情報)。
 小屋の位置は『丘』から百メートル弱ほど、守護天使たちの陣営寄り、といったところです。


【飛び入りの狂戦士】
 これはもちろん魔鎧ペコラ・ネーラを装着したヒエロ・ギネリアンなのですが(PL情報)、現在ペコラを装着した影響から完全なバーサク状態に陥り、正気が失われていて物事の正常な判断がつかない状態だと思ってください。ただひたすら戦乱と血を求め、戦場で誰彼構わず斬りかかっています。
 ただ、何かに引かれるように、卯雪のいる小屋へと少しずつ近づきつつもあるようです。
 今のところ守護天使たちもコクビャクも、この人物が誰なのか判別できていないようです。
 分かっているのは刀姫カーリアとキオネだけです。カーリアは彼を捜して戦場に飛び出していきました。
 魔鎧ペコラは、コクビャクが『丘』開場のために求める『灰の娘』エズネルの現在の姿です。彼女の素性がコクビャクに知れれば、彼らの魔の手は彼女及び彼女を装備したヒエロに向かうことになり、同時にペコラの欠片を宿しているに過ぎない卯雪の“コクビャクにとっての利用価値”はなくなるという可能性が非常に高い、ということを念頭に置いてください。


【不時着した飛空艇】
 現在のところ、意識が戦線に集中しているため、誰も注意を払っている様子はありません。
 ザイキの生死、消息は不明です。


【コクビャクの空中移動要塞】
 本文通り、巨大な城塞のような構造です。
 内部にある、タァと一部の幹部だけが入れる特殊防護室は、今のところ外部から侵入する術はありません。内部からの許可がないと入室許可を得るためのやり取りすらできない上に、詳細を知らないと出入り口の場所も分からないということになっています。部屋そのものは、コントロールルームと隣接しています。
 もちろん内部にもコクビャク兵がいます。また外からの侵入者をシャットアウトするための防護壁も、何ケ所か仕掛けられています。
 特殊防護室もコントロールルームも要塞の深部にありますが、パレットがグラフィティ:B.Bから教わったのは「取り敢えず内部に入る」ためだけの潜入経路なので、そこからどれだけ奥に迫れるかはやり方次第です。


【黒白の灰について】
 そもそもは「非魔族を魔族に変える」代わりに「魔族の原本能が除かれ、魔族でなくなる≠魔族としての生命力が低下し命の危機に陥る」ということで、魔族にとって有害な薬のはずですが、コクビャク側は「タァによる改良に成功し、魔族に対する影響だけを取り除くことができた」と自信たっぷりの様子です。


【NPCの動き】
 本文通り、カーリアは武装して戦場に出ていきました。目的はヒエロの身柄確保です。
 キオネは卯雪に付き添って小屋にいます。
 パレットと鷹勢は要塞に潜入するようです。要塞の警備は堅固なので、潜入アクションを取る場合、彼らが教える(そして彼ら自身が入っていく)通路入口からでないと潜入は不可能です。

▼サンプルアクション

・コクビャク兵と戦う

・狂戦士の身柄を確保

・移動要塞に潜入

・その他もろもろ

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2014年04月07日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年04月08日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年04月12日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年04月23日


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