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森の聖霊と姉弟の絆【前編】

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シナリオガイド

もう好きなようにはさせない!
シナリオ名:森の聖霊と姉弟の絆【前編】 / 担当マスター: 黒留 翔

 ――パラミタ内海。
 海を渡る北風のせいでしょうか。港に立って辺りを見回していても、夏の暑さはさほど感じられません。
「あんたらが例の金持ちをさらったのがこの街……で、どこに拉致したって?」
 カイ・バーテルセン(かい・ばーてるせん)は少し棘のある口調でそう問いかけました。尋ねられた方の男が身にまとっている灰色のポンチョには、『灰色の棘』と呼ばれる紋章が描かれています。
「……街から少し離れた場所にある廃屋だ。もともと伝染病の患者を隔離するために作られた施設らしく、当時も今も誰もそこに寄り付かないもんで、監禁するにはうってつけだったのさ」
「そこにソーンとかいう男がいるのね。ヴィズを奪った奴が!」
「そいつは……どうだろうな」
 曖昧な言葉を返されて、リト・マーニ(りと・まーに)は灰色ポンチョの男をキッと睨み付けます。しかし男はかぶりを振ってこう続けたのでした。
「用済みの俺たちを追い出した後、お頭がそこに留まったかどうかは分らねぇ。すでに隣の島にずらかってる可能性もある」
「隣の島……ソーンの故郷だっていう島か?」
 男の物言いに少しイライラしているリトを言外に制しながら、カイは尋ねました。
「……ああ。俺たちチンピラがお頭に命を救われた場所でもある――通称、灰色の島だ。廃屋は俺たちに場所が知られているから、他にあの人が身を潜めるとしたらそこ以外にないはずだ」
「だったら初めから、その島に向かった方が良かったんじゃない! 今からでも船で向かうわ!」
「……嬢ちゃんはどうか分らねぇが、確実にそっちのぼさぼさ頭は死んじまうぞ。灰色の島に足を踏み入れたが最後、得体の知れない病にかかって逝っちまう。そんでもって、俺たちが知る限り、あの疫病を治せるのはお頭だけだ」
 リトがとっさに振り向くと、男から「ぼさぼさ頭」と呼ばれたカイは何か思案に暮れているようでした。
「ソーンは拉致した人たちを廃屋に監禁してたんだよな? ……それなら奴の持ち物が残ってるかも知れないし、その中に疫病に効く薬がある可能性も……。そういえば、あんたらがその富豪たちをさらったのは偶然じゃなくて、ソーンの指示だったんだよな?」
「あ、ああ……俺たちはさらえと言われた奴らをさらった。だがお頭が何故そいつらを指定したのかは分らねぇ。研究資金の調達用なのかと思ってたが……」
「金目当てではなさそう、となると、ソーンの意図が気になるな。アイツが明確な理由もなしに人さらいを命じるとは思えないし……先にさらわれた人たちについて情報を集めた方が良いか……?」
 しかし情報収集のためとはいえ、気が急いている様子のリトを街に留めておくのは難しそうです。今は遠回りをしている余裕は無さそうだと判断したカイは、説得するようにリトの瞳を見つめながら言いました。
「廃屋に行こう。さらわれた人たちが無事なのかどうか確かめないといけないし、仮にソーンがその場に居なかったとしても足跡を辿る必要がある。……リト、大丈夫だから怖い顔してんなよ」
「……うん」
 彼女にも言いたいことはあるに違いありません。それでも頷きを返してくれたことに安堵しながら、カイは港を抜けて廃屋への道を歩み始めたのでした。

担当マスターより

▼担当マスター

黒留 翔

▼マスターコメント

 黒留 翔です。

 今回のシナリオは前・後編を予定しております。
 最終決戦(?)間近なため思い切ってフラワーリングを飛び出してみました。前編は探索と情報収集がメインになりそうですが、出来るだけ緊迫感を持って臨みたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。



■前回のあらすじ■

 『灰色の棘』に属する5人の男たちが、彼らの頭であるソーン・レナンディの凶行を止めるよう依頼してきました。拉致した富豪とその周辺の人物に対してソーンが行っている狂気じみた人体実験を止めさせたいのだと彼らは言い、カイ・バーテルセンはその依頼を受けることとしました。
 一方で記憶を取り戻したリト・マーニは、大切な弟の魂が宿る『緑の機晶石』をソーンが所持していることを知り、カイに同行を願い出たのでした。



■登場人物&用語等■

・リト・マーニ……前回、自身が『煌めきの災禍』と呼ばれる機晶精霊であることや、弟の存在について思い出すことが出来ました。加えて、騙されて人体実験を施されたという記憶も戻りましたが、実験内容自体は拒絶の気持ちが強いためか忘れてしまっています。現在は弟の魂が宿る【緑の機晶石】を奪還することに燃えているようです。

・カイ・バーテルセン……自らの不用意な言葉のせいでリトが集落を出るきっかけを作ってしまったことを悔やみつつ、今回妙に彼女が突っ走り気味であることを案じています。島まで来るのに案内役が必要だったのと、集落に懸念材料を残しておくわけにはいかなかったため、今回の旅には『灰色の棘』の男たちも同行させました。

・『灰色の棘』……機晶精霊『煌めきの災禍』として封印されていたリトを奪おうとした集団です。首謀者のソーン・レナンディを止めてくれ、という配下のチンピラ5人衆はこの島の有力者をさらったようですが……?

・緑の機晶石……リトの弟・ヴィズの魂が宿っている機晶石です。『煌めきの災禍』事件以来ソーンに強奪されたままですが、リトはその奪還を固く誓っています。



■行動可能な範囲と注意点■

 街から廃屋までは海岸線沿いに歩いて丸一日分ほどの距離を想定しております。
 

 街の面積はそれほど広くありませんが、暮らしに必要と思われる施設や設備はそこそこ整っています。
 街中では町長の家、さらわれた富豪の家、港とその近くの市場、裏通り、飲食店、図書館等々で行動していただくことが可能です。情報収集を行っていただいた場合原則として何の情報も得られない=ハズレの場所は無しとしますが、同一PCが複数の場所で同様の行動を取った場合得られる情報はそれぞれ薄くなります。これは「時間をかけて相手から情報を聞き出す」ことが出来なくなるためです。

 
 また、前回までの舞台であった『フラワーリング』内におけるアクションも可能ですが、その場合MC・LCは共に集落内に居るものとして扱わせていただきます。どちらかが港街で他方が集落、というアクションはNGとなりますのでご了承ください。
 ※今回は集落に居るが後編ではカイたちと合流する(またはその逆)、ということは可能です。あくまで今回、次回それぞれのシナリオの中でMCとLCの行動の場を揃えていただくことが重要となります。

▼サンプルアクション

・廃屋を探索

・富豪の身辺調査

・ソーンの資料を分析

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2014年07月31日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年08月01日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年08月05日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年08月15日


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