葦原明倫館

　男子禁制の尼寺、「Can閣寺」（きゃんかくじ）に身柄を拘束されていた侍、渡辺謙二（わたなべ・けんじ）。
　彼は無事、契約者たちの手によって寺から解放されることとなりました。
　しかし、それと引き換えに、ラルク・アントゥルース（らるく・あんとぅるーす）が捕らえられてしまったのです。
　ラルクを捕まえたのは、寺の住職、間座安（かんざあん）。
　驚くべきことに間座安は、女ではなく男――しかも、自分の兄であると、謙二は言いました。
　なぜ間座安は謙二を寺に拘束したのか、そしてなぜ謙二は間座安と会うのをためらっていたのか。
　それらのことは未だ分からないままでしたが、謙二は自分を助けた契約者のひとり、
　樹月　刀真（きづき・とうま）と約束を交わしたこともあって、間座安と話をしに行くことにしたようです。
「拙者は、逃げていたのかもしれぬな。向き合うべき、運命と」
　そう語る彼の背中は、ともすると命すら懸けようとしているようにも見えました。
　彼と間座安の間に何があったのか。
　それを知ることが出来るのは、おそらくここまで関わった者たちだけでしょう。
「待っていろ……俺が、必ず取り戻す」
　Can閣寺に向かう謙二の隣では、刀真がそう小さく呟きます。
　彼の頭の中に浮かんでいたのは、Can閣寺から出てこないパートナーの姿です。
　まるで取り憑かれでもしたかのように寺にのめり込む、そんなパートナーを刀真は救おうとしていました。
　きっと、彼のように大事な人を連れ戻そうとしている者は他にもいることでしょう。

　さらに、Can閣寺へ向かうもうひとりの人物がいました。
　英霊、紫　式部（むらさき・しきぶ）です。その顔はもう、悩んでいた頃の彼女ではありません。
　契約者たちとの触れ合いの中で、もうCan閣寺に頼らなくても良いと思ったのでしょう。
　彼女は寺に、お礼を言いに行こうとしているようです。
　しかし今このお寺には、危険が渦巻いていることを彼女は知らなかったのです。
　このままでは、彼女の身にも凶事が降り掛かってしまうかもしれません。
　彼女を進ませるべきか、留まらせるべきか。
　どうか、式部にとっての最善の道を探してあげてください。

　来る者がいれば、去る者もいます。
　Can閣寺の副住職として活動していた苦愛（くあい）が、
　数日前に寺を出て行ったという噂が尼僧たちの間で広まっていました。
　なんでも、「また住職と揉めたのではないか」とのこと。
　空京で彼女の目撃情報があったそうですが、彼女の真意も気になるところです。
　それに、おそらく彼女からしか聞くことのできないCan閣寺の内情などもあるはずです。

　未だ謎の多い、Can閣寺。
　ある時から急に豪華になった寺の内装や、寺の中で行われている修行の意味もさることながら、
　やはり最も気になるのは住職、間座安の目的です。
　これまでの言動から、良からぬことを考えてるとみてまず間違いはないでしょう。
　その間座安は、寺の地下に閉じ込められているラルクの元を訪れると、彼にこう言いました。
「あなたに今ここで愛を教えるのも、良いことかもしれません」
　けれど、と間座安は続けます。
「空京大学の生徒がお寺から戻ってこない。そう噂が流れれば、きっと仲間思いの人たちが大勢、ここを訪れるでしょう」
「てめぇ、何を考えて……」
　四肢を縛られたままのラルクが、低く唸ります。すると間座安は、それを見下ろしながらこう答えるのでした。
「私は、愛のことしか考えていませんよ」
　はたして、間座安の目的を暴きだすことができるのでしょうか？


※当シナリオのＬＣ追加は、１ＭＣひとりまでとさせて頂きます。ご了承ください。

マスターの萩栄一です。
本シナリオは全３回を予定しているシリーズものの最終回です。

前回までのシナリオはこちらです。
「比丘尼ガールと恋するお寺」
「比丘尼ガールとスイートな狂気」
これまで参加されていなくても問題はありませんので、お気軽にご参加ください。
また所属学校なども関係なく、どこに所属している方でも遠慮なくご参加ください。

謙二を守る、間座安に会いに行く、式部に接触する、副住職の苦愛を探す、その他の行動、
ガイドに沿ったアクションであればどのようなものでも構いませんが、
MCとLCがまったくバラバラの行動をとるなどしてダブルアクションにならないよう、ご注意ください。
また、ガイドにもある通り１ＭＣにつきＬＣの追加はひとりまでとさせていただきます。
ふたり以上のＬＣを参加させた場合、ふたり目以降は没とさせていただきますのでご了承ください。
（ただし、経験値獲得のためなどに追加されるのは問題ございません。
　その場合、どのＬＣを登場させるかアクションで書いてください）

ここからはシナリオ内の設定についての捕捉です。よくお読みの上アクションをかけてください。

【渡辺謙二（わたなべ・けんじ）について】
現代に侍の魂を蘇らせんとする古風な考えの持ち主です。
50代くらいの男性で、和服にちょんまげ、武器は日本刀といういかにもな出で立ちです。
男女に関しては、男は強くあるべき、女はしとやかであるべきという固定観念を持っているようです。
その堅苦しい性格ゆえか、この歳で女友達がひとりもいません。

【Can閣寺について】
Can閣寺を事実上管理していた苦愛が去り、現在は間座安の管理下になっています。
そのせいかは不明ですが、前回まで男子禁制だったこの寺の中へ、
男性でも普通に立ち入ることが可能となっているようです。

このシリーズはコメディー要素もシリアス要素もありの、色々な楽しみ方ができるシナリオにしていく予定です。
今回は原点に立ち返って、「シリーズものの醍醐味である、アクション次第で次回以降の展開がガラっと変わる」
ということを今まで以上にフィーチャーしていきたいと思います。
皆様のアクション、楽しみにしております。

・謙二と共にＣａｎ閣寺に行く

・式部に会いに行く

・Ｃａｎ閣寺に入山している

・苦愛の行方を探す