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魂の研究者と幻惑の死神1~希望と欲望の求道者~

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シナリオガイド

彼女達は渇望する。滅び往かない、幸せを。
シナリオ名:魂の研究者と幻惑の死神1~希望と欲望の求道者~ / 担当マスター: 沢樹一海

 自分と鏡写しであった女性が消えた空を、リン・リージュンは茫然と見上げていました。暫くそうしていた後、視線を戻した彼女は改めて目に飛び込んできたラス・リージュン(らす・りーじゅん)ピノ・リージュン(ぴの・りーじゅん)の姿に「……!」と現実を思い出します。
「! ピノ……」
 その表情を前に、たじろいだり上空に気を取られたりしていたラスは慌てて意識をピノに向けます。ですが、何をする間も無いままにリンはピノに駆け寄りました。彼女を支えているアクア・ベリル(あくあ・べりる)には目もくれず、娘とは髪色の違う少女に抱きつきます。
「……ピノ! 会いたかった……!」
「……え? え?」
 訳が分からず、ピノは思わず周囲に助けを求めるような目を向けます。
 ドルイドに転職出来たという喜びと安心感で一杯だった中で、それを叩き落とすように突然襲撃されて、その中で、襲撃者達の本命が自分らしき事を察して。皆を『巻き込んだ』のは自分なのだという事を自覚して。
 混乱の極致とも言える中で、突然、サトリ(覚)・リージュンがラスに「母さん」と紹介した女性に抱きつかれて。
「あ……あの、あたし……」
 女性が誰なのかはそれで判ったし、会いたかったという言葉の意味も何となく理解できたけれど。
 彼女の行為をどう受け止めていいのか分からず、ピノの頭は糸が絡まったみたいにうまく働きませんでした。
「リン、その子は……」
「とにかく、一度中に入らないか?」
 覚が前に出たところで、ザミエル・カスパール(さみえる・かすぱーる)が皆に言いました。周囲の状況を見てから、ザミエルは続けます。
「何か、穏やかじゃねぇことが起きたみたいだし、2人も調子悪そうだしな」

              ⇔

「ミンツくん……、ママ……」
 毒に侵され、焔に焼かれ――目に見えなかった攻撃の正体はフラワシによるものでした。その事実は既に、アクアと天神山 清明(てんじんやま・せいめい)によって皆に伝えられています。原因が判り、フラワシを操っていた当人が拘束されたことによって新たな危険も無くなり、放牧場では負傷者・負傷動物への対応が始まっていました。重症を負ったリュー・リュウ・ラウンの管理人エイダーも宿泊施設に運ばれ、今は自室で治療を受けています。
 慌しさの中で、フィアレフト・キャッツ・デルライド(ふぃあれふと・きゃっつでるらいど)は壊れてしまったミンツと気を失ったファーシー・ラドレクト(ふぁーしー・らどれくと)の前で膝をついていました。ファーシーに殆ど傷はありませんが、ミンツは修理が必要な状態です。
 出てしまった被害を悲しく思いながら、彼女は2人に手を伸ばします。ですが、そこでルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)からの連絡を受けました。
「え……? そこって……」
パークスにある、巨大機晶姫の製造所ですわ。……今は、わたくし達以外には誰もいません』
「…………」
“彼”はイコン部品や投棄された鉄材を盗む際にそれらを瞬間移動させていました。その移動先がファーシーの原点とも言える場所であったことに、フィアレフトは驚かずにはいられませんでした。それは、製造所が使われていたという事実以上に、この時代に来るまで自分が知らなかった母の故郷を“彼”が知っていたという事に対する驚きでした。“彼”が誰かの前に現れて犯人だと宣言したわけではありませんが、犯人が盗難先で『ブリッジ』と名乗っていたと聞いて彼女はそれを確信していました。
 返す言葉を忘れる彼女に、ルミーナは巨大機晶姫が残っていた場所に動かない人型機械と扁平型の乗り物らしきものが置かれていたと報告してきます。
『どうしても気になるので……もう少し調べてみますわ。犯人の確証となる物が何か見つかるかもしれませんし』
「そうですか……」
 襲撃してきた人型機械達が撤退していったのは10分にも満たない前の事です。その機械達の中に1人『誰か』が紛れていたらしいとは聞いていて、それが“彼”ならばアトラスの傷痕付近にあるというパークスに戻るにはそれなりの時間が掛かる筈――フィアレフトはそう判断しました。
 魔力――エネルギー量豊富な“彼”は、魔法術式を書き込めば機械を瞬間移動させる事も出来ました。その術式は、機晶姫である自分自身にも使うことが可能です。それを考えるといつ“彼”と鉢合わせてもおかしくはないのですが、フィアレフトの考える限り、“彼”は今日だけで瞬間移動を2回行使しています。コクピットをパークスに運ぶ為、そして、自分自身を海京からツァンダに運ぶ為に。
 術式は、術者本人と機械を繋げる為のものです。術が発動する時には術者自身の魔力が消費されます。2度の瞬間移動に加え、人型機械の一部が魔法を使っていた事を考えると、“彼”は3回目の瞬間移動が使える状態には無いでしょう。消耗が激しいであろうことは想像に難くありません。
「……気をつけてくださいね」
 それでも、ルミーナ達が“彼”と顔を合わせた時の事を考えてフィアレフトはそう言いました。
 彼女達の心配をすると同時――“彼”の心配をしている事にも気付いて軽い自己嫌悪に陥って溜息を吐きます。
「……ちゃんと、皆に話して、謝らなきゃ」
 その結果、責められるのは仕方が無い。未来で起こる事を知って、家族や友人が『処分』されない為に“彼”側に回る誰かがいても――その誰かと刃を向け合う事になったとしても――それも、仕方が無い事だ、と彼女は思います。
「ごめんね、ピノさん。私、防げなかった……」

              ⇔

 そしてフィアレフトは、宿泊施設のラウンジに集まった皆に事情を説明しました。ファーシーが意識を取り戻していた為、自分の身の上については未来人であるという事とアクアに色々と教わっていたという事以外は伏せてあります。
「そうだったの……それで、未来のあの子が来てる、という話なのね……」
「……あたし……あたしが、そんなことを……?」
 ファーシーの横で話を聞いていたピノは、未来の自分がした行為がすぐには信じられませんでした。動物は大好きだし、ドラゴンが無意味に殺されるなんて許せない。それでも、そう思っても――彼女にはその『法律』が随分と極端なものに思えました。実感が無いだけで、実際に死んだドラゴン達を見たら考えも違ってくるのかもしれませんが――
「…………」
 皆の注目が集まっているのを感じつつ、ピノは考えます。どの『時間軸』にしろ『法律』が原因でパラミタに同じ異変が起こっているのなら、答えは1つのような気がしました。
「あたしが、その法律とかいうのを要請しなければいいんだよね?」
「そうなら話は簡単なんですが……他の時間軸では、ピノさんが要請を行わなくても他の人が同じ『法律』を要請してそれが通っています。私が確認している限りは……ですが。ピノさんは恐らく、全ての時間軸の中で、一番最初にその法律を作り上げた人物――なんだと思います。だから“彼”はピノさんを殺めないと未来は変わらない……と考えたんです」
「だけど、確認してみないと分からないよね? あたしは今、フィーちゃんから話を聞いて、そんな法律は作らないって思ってる。今、未来に行ったら状況が変わってるかもしれないよ。確かめてみようよ!」
 未来が変わっていれば、それで問題の半分以上は解決です。ピノはアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)に向き直ると、努めて明るく言いました。
「アーデルハイトさん、エリザベートちゃんならあたし達を未来に送れるんだよね? 出来れば、頼みたいんだけど……やってくれるかな?」
「……エリザベートか。そうじゃな……」
 アーデルハイトはむぅ、と考える表情になりました。
「事が事じゃからな。未来の事とはいえ、パラミタに住む者全てに関わってくる問題でもある。エリザベートも断れないじゃろうが……私も事情を知ったからには見て見ぬふりはできぬな。未来に行くのに、少しばかり協力させてもらおうかの」
「やったあ! じゃあ早速行こうよ!」
 希望が見えてきた気がして、ピノは立ち上がります。ですが、そこであれ、と首を傾げました。
「でも、今のフィーちゃんの話だと、おにいちゃんはそのパラミタの未来とは関係ないよね? どうして、おにいちゃんも“捕まらなかった”の?」
「……それは、私にも……」
 襲撃者の1人である斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)は、ピノを殺す際に妨害してきそうな他の面々を鎖を使って拘束しました。定員オーバーで、その場にいた全員が捕まる――ということはありませんでしたが、ラスもピノと同様に、初めから拘束対象外であったのは明白でした。つまり、“彼”の殺害対象にはラスも含まれていたという事になります。
「“彼”には特に……おじさんを殺す理由は無いと思いますけど……」
 あえてこじつけて考えれば、ピノ・リージュンという少女を生み出した存在だからその逆恨みで、というところでしょうか。ですが、“彼”がピノを狙う理由は『恨み』ではありません。恨みも持っている、というだけの話です。
 思いつきの仮説に何となく納得がいかず、フィアレフトはその答えを知っていそうな人物に目を向けました。拘束され、手足の動きを完全に封じられた、天神山 葛葉(てんじんやま・くずは)の方へと。

              ◇◇◇◇◇◇

 ――同時刻、ナラカ某所
 人型機械は、最低限の判断のみ可能な基礎型人工知能によって動いていました。壊れなかった人型機械達にステルスモードになってパークスに戻るように指示を出し、放牧場から離れた2人は『もう1人のリン』――ややこしいので以下LIN――の住む家に戻ります。
「なんで……なんであそこに『私』がいるのよ。サトリまで……なんで『私』に家族を取られなきゃいけないの? この世界の家族は、私のものよ。みんなみんな、私のものなのに……。取り返さなきゃ……取り返して、みんなみんな、殺さなきゃ……」
「……そんな事言って……迷ってるんでしょ?」
 悔しそうに言う彼女に、長椅子の上に寝そべってぐったりとした青年が挑発的に声を掛けます。LINは「!」と顔を上げて、青年を睨みつけました。
「迷ってる? 私が?」
「そうだよ。過去のリンさんがサトリさんとユー……じゃなくてラス君と元の関係に戻ろうとしてる。それを知って、迷ってるように見えるけどね。だって、ちょっと『早く』殺すだけだった筈が、長生きできそうな彼等の命を明確に絶つことになるんだから。それに……生きたまま、彼等と過去の自分が幸せになるのならそれでもいいって、そんな風に思っちゃったんじゃないかな」
「…………」
 LINは血が出る程に唇を強く噛みました。彼の言う事は、概ね図星でした。覚がリンを紹介するのを見て、その時のリンの表情を見て、彼女は解ってしまったのです。自分の事なのだから、間違いようもありません。リンは記憶を取り戻し、家族との生活を取り戻そうとしています。あの、金髪のピノも含めて。
 もう、リンが愛する者達の喪失を経験する事はないのです。ラスも覚も、死ぬことなく家族と暮らしていけるのです。
 自分さえ、身を引けば。
 でも――
「違う……違う違う違う!」
 LINは激しく首を振ります。
「あの子は紛い物じゃない! あそこには本当のピノが居ないわ……。そんなの意味が無い。そんなの幸せじゃない。私は認めない……それに、ここで身を引いたら私はずっとずっと独りだわ……ラスにも覚にも死んでもらって、私は皆でナラカに住むのよ、家族4人で……みんなみんなナラカに送って……」
 ぶつぶつと目を見開き呟くLINを、青年はにやにやとした笑みで眺めています。
「ねえ、ここはどこなの? あなたは本当に、私を過去に連れてきたの? だって、おかしいじゃない。『過去』の私は地球に居る筈よ。地球で、ラスとサトリを殺して……独りになるのよ。それから、娘でも何でもない子を娘だと思い込んで、何年も一緒に生活して……ピノが死んでいて、ラスが本当の息子だと知った時には、もう全部遅かった。もう全員、死んじゃってた。それで、私はソウルアベレイターになってナラカに行ったのに、そこにももうピノの姿は無くって……転生してて……」
「状況が変わったんだろうね。ここは確かに、LINさんの世界と地続きになっている『過去』だよ。でも、俺達の記憶と変わってくることだってあるだろうさ。ちょっとした干渉で、人の『未来』なんか簡単に変わる。第一、そうじゃないと……困る。だから、俺はここにピノさんを殺しに来たんだ」
「……やっぱり、さっさと殺しに行けば良かったわ。あなたの都合なんて、無視すれば良かった。何ヶ月も待ったりしないで……」
「よく言うよ。彼女達に頼めば、自分で手を下さなくて済むって喜んでたくせに」
「それはあなたも同じじゃない! あなただって本当は、あの紛い物の事……!」
 激昂してLINが立ち上がったところで、家の玄関がきぃ、と開きます。そこには、奉公から帰ってきた彼女の娘――黒髪のピノの姿がありました。
「どうしたの? ママ」
「……何でもないのよ、ピノ。今日もお疲れさま」
 先程までの乱れた表情はどこへやら、LINは優しい笑顔で娘を迎えます。それを見ていた青年は、長椅子に寝直しながら言いました。
「……とにかく、俺はエネルギーが溜まったら一度先生の故郷に戻るよ。あの『乗り物』も完成させないといけないしね。エリザベートが首を縦に振らない以上、俺が自前で用意するしか方法は無いんだ」
「…………。でも、どうやって実験するつもり?」
「さあね。まあ実際に動かすしかないだろうけど……理論的には成功している筈なんだ、大丈夫。……ああ、LINさんも来る?」
 LINは黒ピノが入っていった部屋の扉に目を遣ったまま、少しばかり考えます。青年が造っている乗り物は、自分の目的には特に重要なものでもありません。
「……私は行かないわ。これからは1人で動く。今度こそラスと……サトリを殺すんだから。いざとなったら、この薬を使って……」
 そうして、LINは黒服の懐から薄紫色の小瓶を取り出しました。彼女の生活していた『未来』で有名な事業家(薬剤師)であるムッキー・プリンプト(以下むきプリ君)が販売している薬の1つです。殺傷系の薬ではありませんが、これを使えば飲ませた相手の心を操る事が出来ます。
「ナラカ行きを認めてもらうわ。紛い物も、今度こそ処理する。あなたが言う通り、あの子があの場に……いえ、この世にいなかったら、私があの時2人を殺す事も、偽の娘と無為な時間を消費する事も無かったんだもの……」
 LINは、2024年より未来、2049年よりも過去を生きる存在でした。そこに現れた青年に『ピノを殺したいから協力してくれ』と誘われ、更に、この時代に来れば家族全員が揃うと言われて本来の住処を捨てたのです。
「あの子は、この世に居てはいけない存在なのよ」

              ◇◇◇◇◇◇

「……知らない、だと?」
「はい。何も知りません」
 表情を変えずに、葛葉はそう繰り返しました。その態度からは、本当に知らないのか白を切っているだけなのかが判然としません。ラスは指の関節を鳴らしながら、彼を威圧的に見下ろしました。ハツネは、まだ気を失ったままで尋問をすることは出来ません。
「吐くまで痛めつけるしかねーようだな……」
「ぴ、ピノ!? どうしたの!?」
 その時、悲鳴のようなリンの声が聞こえました。見ると、ソファに座っていたピノが座面に頬をつけて荒い息を吐いています。
「ピノ……!?」
 慌てて傍に行くと、彼女の額に手を当てていた覚が真剣な顔で言いました。
「凄い熱だ……」

「ずっと一生懸命だったし、疲れたのね……。襲われたのもショックだったでしょうし、毒の影響に、さっきの話も……」
 あてがわれている部屋に寝かせたピノの手を、ベッドサイドに座ったリンがぎゅっと握っています。その後ろに立ち、ファーシーが心配そうな表情を浮かべています。リンが誰であるかというのは先程聞きましたが、ピノとリンの複雑な関係まで察し切れていないファーシーは、彼女の出現もピノの精神に負担になっているとは思っていないようです。一方、アクアはリンの様子に何か歪なものを感じながら、気になっていた事をファーシーに訊きました。
「貴女は、ショックでは無かったのですか? 自分がいつ死ぬかというのを、はっきりと告げられたのですよ?」
 少なくとも、アクアは自分が『逃げた』という事実を聞いて驚くだけではいられませんでした。処分されていないのだという安心感と同時、処分『されに行った』ファーシーやピノと比べて何だか後ろめたい気分に駆られたのです。同じ状況に陥ったら同じ行動をするだろうと自らを顧みて、尚更に。
「そうね……。仮に“そう”なったとしても随分先の事だから……まだ、怖いと思えないのかもしれないわ。それに、わたしも未来を何とかしたいと思ってるから。異変についてもそうだけど……あの子がピノちゃんを殺すなんてそんなひどいこと、止めないわけにはいかないもの。未来が平和になれば、わたしも処分されなくて済むんでしょう?」
「……ピノと一緒に未来に行くつもりですか? ですが、貴女にはイディアが……」
「イディアはポーリアさん達に預けてるから大丈夫よ。少し、寂しい思いをさせちゃうかもしれないけど……」
 自身の寂しさを全く隠せていない笑顔で、ファーシーは言います。アクアはその台詞の中に、小さな引っ掛かりを覚えました。聞き逃してはいけない何かが潜んでいたような気がします。ラスも同じ事を感じたのか「ポーリア……?」と眉を顰めて呟きます。その顔色がいつもよりどことなく白く見えて、アクアは何とはなしに言いました。
「貴方も休んだ方が良いのではありませんか? まともに毒を受けたのでしょう」
「あー、そうだな……」
 ラスはピノとリン、そして部屋の出口を見比べて迷いを見せます。それからふと、何かを思いついたような顔になりました。どこか迷惑そうに、嫌そうにアクアに訊きます。
「お前……まさか俺の事が好きなのか?」
「っ!?」
 予想外も予想外な問いに、天井を突き抜けるが如くに驚きます。アクアは、一気に冷静さを失いました。
「なっ! 何言ってるんですかそんな訳無いでしょう! 何を勘違いしたらそんな、何を勝手に自惚れて……!」
「うぬぼっ……!? だってお前、それ以外に考えられねーだろーが! 俺達がけっk……いや、ほらフィーに聞いただろ!? 子孫がどうとか……」
「……!!! き、聞きましたけど有り得ません!! だ、大体、私にはす……」
 はっ、とアクアは顔を真っ赤にして硬直しました。勢いで言いかけた言葉の続きに――その先にある本心に気付いたのです。
「……へえ……」
「な、何ですか!! 私は別に……!」
 頬の温度がどんどん上がっていくのを感じつつ余裕ゼロで抗弁します。そこで、ベッドから小さな呻き声が聞こえて2人は会話を中断しました。起こしてしまったかとピノに意識を向けると、少女は眠ったままに苦しげな顔をしています。
「……ごめん……なさい……」
 その目尻から、涙が一筋、零れ落ちました。

              ⇔

「ムッキー、またチッチーさんが来たよ!」
「!!! お、お父様が!? この前来たばかりだろう!」
 そんな中、イルミンスール魔法学校では、部屋に飛び込んできたプリム・リリムの報告にむきプリ君が驚愕していました。父であるチッチー・プリンプトが前にパラミタを訪れたのは、2月14日のバレンタインでした。人々に愛を与えるのだと繁華街という繁華街でホレグスリを配りまくって帰っていってから、まだ一週間も経っていません。
「今日は、何かの記念日だったか!? 一体、何をしに……!」
 そう言っている間にも、チッチーはずかずかとむきプリ君の部屋に入ってきます。そして、堂々とした笑顔で――何故か笑顔で、こんなことを言いました。
「息子が巨大トカゲに浚われてしまってな! 無事助けるまでここに居させてもらうぞ!」
「息子?」
 むきプリ君は今、ここでこうしてせっせとホレグスリを作っています。彼は一人っ子ではありませんが、息子と呼べるのは、彼1人の筈でした。
「シャンバラ人の女性と儂の間に出来た息子だ! 鍛えようと木登りさせていたら咥えて連れていかれてしまった!」
「「…………………………………………」」
 むきプリ君とプリムは、目を点にしてチッチーを見ていました。むきプリ君の母親は地球人です。『シャンバラ人』との間に出来た子ということは――
「な、何だとおおおおおお!?」
 まさかの初聞情報に、むきプリ君は思い切り絶叫しました。

担当マスターより

▼担当マスター

沢樹一海

▼マスターコメント

『魂の研究者〜』シリーズの第1回目(序章を含めると2回目)となります。シリーズとして始めたのに、人数を減らしてしまってすみません。
ジャンルアイコンはミステリーですが、中身はミステリー&冒険(?)です。あえてはっきりと答えを明示していない事も幾つかあるので(“彼”の正体を含め)、ミステリーにしてみました。それぞれの答えは過去のシリーズ中、前回のリアクション、もしくはこのガイドの中に書かれています。

他、フィアレフトの説明した未来の情報については、前回のシナリオの39Pと42Pに大体書いてあります。
LINと青年(“彼”)の会話中に出てくる情報は初出となります。

★★★
この第1回目では、主に以下の行動が可能です。

・リュー・リュウ・ラウンで襲撃事件後の時間を過ごす。
(ピノの看病、今後についての意見交換、PCの立ち位置の決定等。色々)

・未来へ行く。
(2048末〜2049年辺りを予定しています。アクションの内容によって時期は多少前後しますが、国の『処分』が開始された後となります。
 ※完全PL情報→ピノは『未来が変わっているかも』と期待を持っていますが、結論としては『変わっていません』。未来へ行き、何を調査するかという指定は致しませんので、自由にアクションを掛けてください。何なら、観光でも構いません。PCの未来を見に行く、というアクションも可能ですが、事情が事情な為、基本的にNPCが同行する形になります)

・パークス、地下製造所調査他。
(リュー・リュウ・ラウンに居るPCも、フィアレフトの報告によってパークスで『どんな物が』『誰によって』作られているかを知っています。地下製造所がどんな所であるかという事も、ファーシーから説明を受けています。その為、パークスに移動する事も可能です。移動方法は、アーデルハイトに協力を頼むか、自力で行くか、という事になると思います)

・チッチーの息子救出。
(むきプリ君の異母弟を救出するパートです。時系列としては、ドルイド試験終了後となります。チッチーが救助依頼を出していますので、依頼を見てという動機付けでの参加が可能です)

※青年(“彼”)は後にパークスに行き、LINは後にどっかのタイミングでリージュン家4人に接触します。接触時期・場所はアクション内容によって変化します。時期が分からずにアクションが書き難い、という場合は、接触後の行動、台詞のみを書いていただければと思います。

☆前回からの参加者様向け☆
前回終了時の場所からのスタートですが、別コースへの移動も可能です。
リュー・リュウ・ラウンからパークスへは上記の通りに、
パークスからリュー・リュウ・ラウンへも、ピノが回復して未来へ行くまでに時間が掛かりますので、その間を使っての移動は可能です。襲撃事件についての詳細は、ルミーナから聞くことが出来ます。

・前回の後半、試験最終日に襲撃に居合わせた名前描写の無いPCについて。
「捕まっていた」か「避難の手伝いをしていた」かになると思いますが、「捕まっていた」場合は怪我の度合い、毒への侵され具合、捕まっていた理由(実は動けたが様子を伺っていた等)などは皆様にお任せします。状態について「こうだったよ」というのがあれば、リアクションにて反映いたします。

☆今回からの参加者様向け☆
(むきプリ君パート以外)
『実は試験会場に居た』という事でも参加可能ですし、
話を聞いたリュー・リュウ・ラウンスタッフが事態を危惧してフィアレフトの話を外部(どこかの依頼サイトとか)に漏らしていますのでそれを見て、でも構いません。
未来について、かなり詳しい情報を知った上で参加が出来ます。
(後者の場合は、襲撃事件の詳細とLINが上空に現れたという情報は得られません)

※全てのパートに於いて※
ダブルアクション、及びそれに類するアクションを許可します。文字数の許す範囲で自由にアクションをかけてください(ただし、何種類でも書けてしまう箇条書きはNGです。具体的に行動アクションをお願いします)

その他、ガイドを読んで気がついた事、以前のリアクションを読んで気がついた事など、ストーリーから大きく逸脱しない事なら何でもOKです。

★★★
また、このシナリオでは公式NPCを参加させる事が可能です。公式NPCについてはこちらを参照ください。

公式NPC1人につき、LC1枠をご使用ください。
ガイドに出ている公式NPC、ルミーナ・レバレッジ、エリザベート・ワルプルギス、アーデルハイト・ワルプルギス、加えて御神楽環菜へのアクションには必要ありません。というか、この4人は行動がかなり限定されますので(環菜はサポート側、安楽椅子探偵のような立ち位置になります)、担当パート以外の行動や自由行動へのお誘いはほぼ不可能だと思います。

・NPC枠となるLCの欄には「○○を誘います」とお書きください。
 基本的には、この一文のみで問題ありません。
(個別で公式NPCを登場させる場合は、どうしても描写量が多くなる為の措置となります。ご了承ください)
 NPCのアクション=行動 を書いてしまうと、確定ロールになってしまいますのでご注意ください。

・公式NPCとの関係称号は必須ではありませんが、なるべくセットしてご参加ください。関係称号が無い場合は、アクション失敗の可能性もあります。

また、公式NPCであっても、『すぐに来ることの出来ない場所にいる』NPCは呼び出せません。

<公式NPCの扱い>
PCとほぼ同じ扱いとなります。
いつもの「公式NPCの依頼を受ける」とか「公式NPCの手助けをする」とかではなく、
「公式NPC“と”一緒に冒険する」という感覚が一番近いのではないかと思います。

NPCなので、時には私の都合で動いてもらう事もあるかもしれませんが、PC達と大きく立場は変わりません。
アクションをかける際には、「○○と一緒に△△をしてみます」とか「○○を※※に誘って、□□をします」とか、公式NPC自身が何をする、という書き方ではなく公式NPC「に」何をする、という書き方でお願いします。
上との繰り返しになりますが、こちら、「すぐに来ることの出来ない場所にいる」だったり「来る事が不自然そう」だったりする場合は呼び出し失敗になることもありえますのでその部分だけご留意願います(まあ殆ど失敗しないと思いますが)。
★★★

※本シナリオのリアクション公開は下記表示とは異なり「アクション締め切り日に決定された公開予定日から2週間後」を予定しております。あらかじめご了承ください。※

以上、よろしくお願いいたします。

▼サンプルアクション

・PCの行動方針を決定する。

・パークスで調査をする。

・チッチーの息子を助ける。

・敵NPCに接触する。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2014年06月14日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2014年06月15日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2014年06月19日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2014年07月25日


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