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赤ずきんちゃんと、おおかみ。

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シナリオガイド

子供の頃、楽しかったあの童話。その裏にある真実をいっしょに見にいきましょう
シナリオ名:赤ずきんちゃんと、おおかみ。 / 担当マスター: ありか

 一冊の本が落ちていました。
 あまりにも広大、故にその全容すら定かではないイルミンスール魔法学校の大図書室の、すみっこでひっそりと埃をかぶっています。
 縦横無尽に居並ぶ本棚から、はじきだされたのでしょう。
 仲間はずれにされた本をカワイソウに思ったのか。
 通りがかったあなたは巣から落ちた雛を優しく抱えるように、彼女を拾い上げました。
 そして、本棚に戻そうとして、ふと彼女に目を惹かれます。

『赤ずきん』と銘打たれた表紙。

 あまりにもポピュラーな題名。赤ずきん。古くより親しまれていたことを否が応にも想像させる四文字。
 なのに、どうしたことでしょう。
 ほのぼのとした題字の脇で、えらく物騒な赤のインクが狂い踊っています。

 ――危険ランクA。

 題名に似合わぬ深紅の印に好奇心をそそられて、すこしだけ中を覗きたくなるのは、人の情。人の業。

 ぺらり。


――――――

 辺境の森に、ぽつんと、一軒の民家がありました。
 鬱蒼とした木々に囲われたそこには、暖炉とテーブルと、ベッドがふたつきり。素直な娘と、心優しい母がふたりきり。ほそぼそと毎日を過ごしていました。
 ある日、母は娘に言いつけます。

「この、りんごのはちみつ漬けを、お願いしてもいいかい?」

 丁寧に藤で編みこまれたちいさなバスケット。
 娘のまっしろな指に握らせた、約束の品。
 白い頭巾を目深にかぶりかんばせを隠した娘は、籠から匂いたつ甘美な芳香をめいいっぱい吸い込んで、嬉しそうに頬を赤らめて、しかし残念そうにうつむきました。
「まだ、お腹空いてない」と、頭巾の端からこぼれたみつあみを指先でいじります。
 母は、やわらかく繰り返します。
「いんや、違うよ。これはおばあちゃんに、だよ」
 おばあちゃんというひとことに、すうっと娘の顎が持ち上がって。
 口元に鮮やかに引かれた紅が、静かに笑みをかたどりました。

「じゃあ、今日は、パーティなの?」

 半月のように吊り上がった娘の唇の端に、母の眉がきゅっと寄ります。
 どうにも、娘にはおばあちゃんのところにいくと、ごちそうをもらえると勘違いしているフシがあるようなのです。
 欲望に忠実な娘を叱るべきか。叱らぬべきか。
 母は悩みました。しかし、いまさら行かないと駄々をこねられては困ると、思い直しました。

「うーん。どうだろうね。おばあちゃんが今日も、そのりんごの代わりに、お肉をくれたら、そうなるかもしれないね」
 曖昧に濁る、母。
「大丈夫だよ。そうなるよ」
 確信に満ちた、娘。

 娘の口にする言葉はいつも真実です。

「迷わないかい?」
「寄り道はするよ」

 娘の口にする言葉はいつも誠実です。

「狼は出るかい?」
「うん、出る」

 娘の口にする言葉はいつも確実です。

 いつでも、間違ったとことはいいません。
 それがなぜなのかは誰も知りません。
「じゃあ、いつも通り、貴女の護衛を、みなさんに頼もうかね」
「護衛はいらないけど、いっしょにお食事で楽しめるようなヒトが欲しいな」
 そうかい、と母は頷いてまなじりを垂れました。

 それから、

――――――


 そこで、物語は終わっています。
 捲れども捲れども、残りは空白の頁しかありません。
 牙が生えて食いついてくることもなければ、泣き叫ぶこともなく、まっしろな頁を、ただ、そこに晒しています。
 どこにも、危険はありません。あるといえば、裏表紙にちょっとした落書きがあるぐらい。
 ラクガキモドキ。
 のたうちまわったミミズのような赤いインクの染みは、それでも確かに意味のある文字の羅列です。

 物語の中に入る夢のような魔法が、イルミンスール魔法学校にはあります。その呪文様式です。

 本来、それは物語を終えると本の外に帰還できる安全な呪文。
 しかし、その術式を習熟する上で、誰もが耳にする一種の禁忌があります。

『空白の童話』には、ちかづくな。

 ソレは、誰も帰してくれないのだ、と。
 幸いにまたは不幸にも、あなたには、一度だけ、この物語に飛び込む手段があります。
 背表紙に記されていた、その落書きを口にして、読み上げるだけ。
 危険だとわかりきっている道中です。
 オオカミが出ます。
 ひとりきりでは、怪我をしてしまうかもしれません。

 それでも、あなたは、赤ずきんといっしょに、いきますか?

担当マスターより

▼担当マスター

ありか

▼マスターコメント

 初めまして、この度蒼空のフロンティアのゲームマスターになりましたありかと申します。
 これからよろしくお願いいたします。

 今回の依頼は、赤ずきんの母親から赤ずきんちゃんを見守ってほしい、という形をとっています。

 しかし、真の目的は、赤ずきんちゃんをオオカミから守ることではありません。

 あくまでも、みなさまの目的は、『空白の童話』の真実を、その目で見てくることにあります。
 なぜ、誰も帰ってこれなかったのか。
 その理由を解明して、物語の結末までを生き抜く。
 そして、みんなで無事に本の外に生還するまでが、遠足です。

 さらにいえば童話の中でオオカミは獣という形をとっておりますが、本作ではそうであるとは限りません。
 さらにさらに赤ずきんの言葉はいつでも真実です。その根拠もしっかりとあります。

 赤ずきんちゃんの真実を推理して、アクションに書いていただけてもいいかもしれません。

 また、今回の物語はある種のグリム童話の匂いを漂わせる予定なので、貴方が望む結末を大いに裏切る可能性があります。ご注意ください。
 以上の点を踏まえて、みなさま、どうか物語の最後までお付き合いくだされば幸いです。

▼サンプルアクション

・おばあさんの家に先回り

・赤ずきんの隣をいく

・狼を退治しに森へ

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2010年11月29日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年11月30日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年12月04日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年12月24日


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