空京大学

　何の変哲もない、空が青く晴れた日のことでした。

　シャンバラの某所に、変わった装飾のなされた八つの石柱が作るストーンサークルを象徴とする、街並みの美しい観光地がありました。
　そこでは、昔から「柱を動かしてはならない」という約束事があり、動かすと災いが起こるとされて、ずっと守られてきたのですが、その日、大変な出来事が起ころうとしていました。

「あの柱を倒してきたら、正式に俺たちの仲間だって認めてやるよ」
　嵐や地震等の天災ではびくともしない、存在した時代さえわからない不思議な柱に、町の子供たちは度胸試しをしよう、と言い出したのです。
　仲間の中で、一番小さかった少年は、はりきって言いました。
「あんな柱一本ぐらい、何てことはないよ」
　そして、一本の柱をぐっと力任せに押すと、大人の二倍ほどあるはずの柱はぐらりと傾き、意外なほどあっさりと倒れてしまいました。
「なんだ、簡単じゃないか」
　少年が自慢げに口にした、その途端。
「な……なんだあれ！」
　先ほどまで何もなかったはずのサークルの中心に、突然、空間を割るように黒いひび割れが出現したのです。
　人が一人通れそうなほどの大きなひび割れの向こうは、真っ黒で何も見えません。
「どうしよう……」
　呟いたそのとき、自分のしてしまったことに青くなっている少年の傍を、一匹の虫のようなモンスターが通り過ぎ、亀裂の中へ飛び込んでいきました。
　その途端、ぞっとするような低い唸り声のような音が聞こえはじめます。
　子供たちは恐ろしくなって立ち竦んでいました。

　それから数分後、偶然空を見上げた観光客の一人が、空を指差して叫びました。

「そ、空が……！」

　その先では、先ほどまで雲ひとつ無かった青空が、灰色に染まっていたのです。


　■■■


　その頃教導団本部では、金　鋭峰（じん・るいふぉん）が緊急の報告を受けていました。
　シャンバラにある観光地の上空に、モンスターが突然集合を始めたと言うのです。

「いったい原因は何だ？」
「わかりません。現在も次々集まってきています。凄い量です！」
　報告する部下の顔は緊迫していました。
　モニターに表示されたマップには、モンスターを示す赤い点があまりに多く密集しすぎていて、どこが町なのかすらもわからない有様です。
「しかも、終結したモンスターは次々町に降下を始めているようです」
「原因を究明している時間はないという事か」
　続く報告に、金は厳しい表情をすると、すぐに各方面へ、対モンスターへの指示を出しました。

　部下たちが慌しく出て行った後、金は資料を見て眉を潜めました。
　問題のモンスターは、本来は人間を襲ったり、これほどの集団で行動することはないはずのモンスターなのです。
　ですが、上空に集まったモンスターたちは、何故か町をめがけて一斉に襲い掛かっており、しかも、数キロにわたる上空まで覆い尽くすほどの数でありながら、他の町へは目もくれません。
　まるでその町そのものが敵だと言わんばかりです。

「いったい、何が起こっているというんだ……？」


　

はじめまして。マスターを勤めさせていただきます、逆凪まことと申します。よろしくお願いいたします。

　教導団本部からの出動要請となっていますが、時間がないため、他校へも緊急の応援要請が出されています。
　たまたまその場にいた、ということでも問題ありません。

　今回の目的は、モンスターの脅威から町の人たちを守ることです。
　ただし、モンスターたちは空を灰色に染めてしまうほどの大群です。
　そのため、ただ戦うだけでは、観光地はめちゃくちゃになってしまいます。

　どうすればいいかのヒントは、ガイド等の中に隠れています。
　町の人を守り、その上で、できるだけ町の景観も守れるよう、頑張ってください。




＜＜シャンバラ観光パンフレットより抜粋＞＞

　きれいな円形に広がった、古い景観を残す、小さいですが美しい町です。
　東西南北に、商店が両脇に並ぶ大通りが十字状に伸びており、その中央にストーンサークルがあります。
　民家は、広い屋根が隣同士と触れ合うほど密集しており、空が見えないほどです。
　そのため、大通りから一歩外れると、一種のアーケード街のようになっています。
　上空から見ると、十字の文様が彫られたメダルのように見えるかもしれません。

　

＜＜入門版・モンスター図録より抜粋＞＞

　フライシェイド

　全身灰色で、全長20センチほどの小型の飛行性モンスターです。
　とんぼのような形をしており、知能はなく、視力や聴力はありません。特別な方法で敵を認識しています。
　普段は高高度で生活しているので、見かけることは滅多にないため、生態についてはあまり良く知られていません。

：攻撃
　口らしき鋭い先端で、針のように刺して攻撃してきます。
　一撃一撃は軽いですが、針に微弱な毒性があるため、刺され続けると危険です。
　鍛えていない一般人には生命の危険すらあります。
：弱点
　一匹一匹は、一般人でもほぼ一撃で倒せるほど弱いです。弱点に関しては知られていません。

・モンスターを迎撃する

・町の人々を安全な場所まで送り届ける

・原因を究明する